パシフィック・リム,ホームシアター,映画,感想

パシフィック・リム(原題:Pacific Rim)

2013年公開のギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)監督によるSF映画。搭乗型の人型巨大兵器と怪獣(劇中も ”KAIJU” と呼ばれる)が闘うという、なかなか大人の ”男の子心” をくすぐる映画になっている。当時は日本の特撮、怪獣モノやアニメロボットを露骨にオマージュ…いや、パクってアメリカナイズした映画だと思い、見る気が無かった。監督本人は違うと言っているが、散々日本の怪獣好きをアピールしたり、崇拝する永井豪氏にまでハグしてしまうくらいだ。パクってないと言っても無理がある。

素直に「日本の特撮やアニメが好きなので、私なりにパクった映画を作りたかったんだ」と言えば、まだカワイイのに。

Blu-ray仕様:本編131分、1.85:1(アメリカン・ビスタ) 
英語:5.1ch DTS-HD Master Audio、日本語:5.1ch ドルビーデジタル
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私が購入したBlu-rayは2D+3D版。2Dも3Dも画面サイズは同じ1.85:1のアメリカン・ビスタサイズなので上下に若干だが黒い帯が表示される。3D映像は楽しいのだが、このソフトに関して言えば映像が暗すぎて少し見えづらい。

「パシフィック・リム」あらすじ

深海から突然、出現した巨大で凶暴なエイリアン“KAIJU”。それは何年にもわたって何百万もの人命を奪い、人類の資源を消耗していく戦いの始まりだった。巨大なKAIJUと戦うため、人類は特殊な兵器を開発。“イェーガー”と名づけられたその人型巨大兵器は2人のパイロットが同時に操縦する。彼らは操縦前に、神経ブリッジを通して互いの脳を同調させる“ドリフト”というプロセスを経て戦闘態勢に入るのだ。最初は優勢だったイェーガーだが、KAIJUは出現のたびにパワーを増していき、その容赦ない襲撃の前に、人類は対抗できなくなっていく。
いよいよ滅亡の危機に瀕し、人類を必死に守っている者たちに残された選択肢はただ1つ。疲れきって一度はパイロットをやめた男(チャーリー・ハナム)と、実戦経験のない新人(菊地凛子)という、ふつうなら考えられない2人がコンビを組み、旧式のイェーガーで戦うことになった。彼らは、迫りくる滅亡を食い止める人類最後の希望としてKAIJUに立ち向かう。

ワーナー公式サイト Blu-ray「パシフィック・リム」より引用。© 2017 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved.

子供の頃から親しんだ「怪獣と搭乗型の人型巨大ロボットが闘う」という鉄板ネタが好きな人にはたまらない映画だ。エンターテインメント性が高くモティーフが良いだけに映画の作りとして残念に見えるところが多々目立つが、それを含めても好きな人にとっては、どうでもいいくらい好きな映画だろう。

「パシフィック・リム」は3Dに向いている映画なのだが、余りお薦めはしない

決してプロジェクターや3Dメガネのせいで暗いのではなく、映像そのものが夜や雨など暗いシーンが多いうえに、カットが多くて視点がコロコロ変わる。2Dでも迫力のある戦闘シーンなどが3Dになると更に迫力は増すが、暗いシーンが多いうえ、更にカット切り替わるので、バトルシーンなんて何がどうなってるのか分かりにくくなってしまっているのが少し残念な気がする。

また、戦闘中のコクピット内のカットは衝撃表現で映像をガタガタ揺らし、地上からの視点でも地響きを表現するので戦闘シーンは画面が結構揺れる。そのおかげで巨大物同士のバトルの雰囲気は伝わるのだが視点が自分の意図に反して揺れ動いてしまい視差による3Dには向いていない。その割にはしっかり3D化されているので私は大丈夫だったが、人によっては3D酔いを起こしてしまうかも知れない。

しかしこの巨大KAIJUと人型巨大兵器イェーガーをプロジェクター投影の120インチ程で、更に3Dで見るのはかなり楽しく、素材も3D向きと言えるので余計に勿体ない気がした。監督本人は巨大感がなくなるので3Dにしたくなかったとインタビューで答えているが、私は別の意味で3Dには向いていないと思った。

ギレルモ・デル・トロ監督の特撮愛を感じる映画

本当にこの監督は日本の特撮、アニメロボットが好きなんだなと感じさせる映画だった。公開当時はパクリ映画と勝手に決めつけて見ることを敬遠していたが、監督の話などを見たり聞いたりしているうちに監督の怪獣・特撮・アニメに対する愛情と映画PRのプレゼンテーションにすっかりやられてしまい、Blu-rayが発売されたので購入して鑑賞してしまった。ただ冒頭でも述べたが、監督は…

I felt there was a chance to do something fresh, something new that at the same time was conscious of the heritage, but not a pastiche or an homage or a greatest hits of everything. One of the first things I did is make it a point to not check any old movies or any other references. Like start from scratch.

「Screen Rant」記事より引用 © 2017 Screen Rant. All rights reserved.

意訳すると「日本の文化的財産と言える特撮や怪獣・アニメロボットなどは意識したが、私は何か新しいことにチャレンジしたかったら、日本で凄くヒットしたものは意識せず、過去の資料や昔の映画なども見ないようにした。」と言っているようだが、イヤイヤ…いくらスタッフ含めて “過去の資料を見ないようにした” とか言っても、やはり過去に好きで見ていた日本の怪獣達がそのままイメージとなって形に出てきてしまっている。

来日時の様子をテレビで見たが、オモチャ屋でさんざん怪獣のソフビを買いあさって、1つ1つ名前まで叫びながら説明し、興奮していたのを見ると、やはり過去の怪獣を覚えているし制作時も無意識に似通ってしまうだろう。それは仕方のないことなのだから、詳細は置いておいたとしても好きで既に見てしまっているであろう過去の資料を「見ていない」って言うのは不正をした政治家の言い訳なみに受け取る側が腑に落ちない。素直に「見て似せた」でも別にいいのに。

自身で影響を受けたとまで言っている「鉄人28号」を見ているから巨大兵器イェーガーの「ジプシー・デンジャー」もあの様になってしまったのではないか。どちらかを凄く好きな人からすれば「全く違う」と言うだろうが、神戸の新長田に立つ「鉄人28号」像をある日突然、同じポーズで「ジプシー・デンジャー」に代えると、ゲーム機を全て「ファミコン」と呼ぶような方々は入れ替わったことに何人気が付くだろうか。

パクったと言われないための言い回しは少々腑に落ちないが、結果これだけの映像クオリティと世界観を作り上げ、日本の特撮・怪獣・アニメにこれだけ詳しく好きな監督は他にいないだろう。この映画を通してリスペクトと愛情はもの凄く感じる。

監督の日本好きは良いが…

日本の特撮映画に対する敬意を払った配役なのだろうが、だからといってわざわざ日本人役者を使わなくても良かった。特に主役の一人「森マコ」(菊地凛子)の幼少期を演じた芦田愛菜が酷い。ほぼ泣くだけの出番なのだが、それでも私にはどう贔屓目に見ても “頑張って泣いている” 感がありすぎて醒めてしまった。あの年で泣く演技が出来るというのはスゴイ事なのだが…。あの頃は散々バラエティ番組やトーク番組で「泣き」演技を周りの皆が盛りたてて芦田愛菜にやらせるから、芦田愛菜が「泣きの演技をするとこうなる」というのがすり込まれてしまった。そういうことにもなるから日本の役者はバラエティ番組等には出て欲しくない。

出演は映画PRでやむを得ないとするなら番組制作側も面白がって芸人のような扱いでネタ振りをし、役者の技を安売りさせるようなことをやめてもらいたい。PRのはずが結果、出演映画の品位を下げられる事になりかねない。

次作に期待と不安

米国公開日を2018年2月23日に予定している続編映画、「パシフィック・リム:アップライジング(原題:Pacific Rim : Uprising)」。現在は最新映像も公開されているがWEB企画(gojaeger.com)に則ったものなので本編映像ではないものの、新型イェーガーも映像として搭乗する。

© 2017 UNIVERSAL STUDIOS. © 2017 LEGENDARY. ALL RIGHTS RESERVED

映像を観る限りではオープニングの新型イェーガーを舐めるようなカメラワークが ”車のCM”や ”スマートフォンのCM” を彷彿させる映像作りになっている。「パシフィック・リム」のイェーガーは無骨でスチームパンク的な格好良さがあったが、「パシフィック・リム:アップライジング」ではツルツルピカピカになっているから余計にCMのそれに見える。次作ではギレルモ・デル・トロは監督ではなく共同プロデューサーの立場になり、監督は海外テレビドラマ版「デアデビル」の制作指揮を執るスティーヴン・S・デナイト(Steven S. DeKnight)が務める。ギレルモ・デル・トロほどには日本の特撮に引っ張られることなく、オリジナル性が更に高まることが期待できるが、それは同時に「パシフィック・リム」の世界観を薄れさせてしまう事にもなる気がする。
 



パシフィック・リム(字幕版)
残念ながら現在(2017年9月)Amazonプライムビデオでの「パシフィック・リム」は有料レンタルになっている。現在はU-NEXT、hulu、dTVも含め無料視聴できるのはNetflixだけ。勿論いずれにしても3D視聴はできないので3D視聴するなら素直にBlu-rayを購入するしか手はない。私は「パシフィック・リム」に関して言えば3D版を無理してみる必要はないと思うが、例え3Dで見たいと思う映画でもこういった動画配信サービスは現在のところ3D視聴できる映画は配信されていない。需要の問題だろうか、4Kに対応していってることを考えると送信データ量の問題ではないように思うだけに残念だ。

コメント

    • うめ吉
    • 2022年 3月 24日 9:01pm

    毎週の更新お疲れ様です。アーカイヴ、早速マイリストに入れておきました。

    去年11月のAmazonブラックフライデーでパシフィックリムのUHDBDが2,000円台だったので、ついついポチッとやってしまいました。HT3550iのお金を貯めなきゃいけないのに、ほんとAmazonにのせられちゃった感じです。

    まず画像ですが、前評判どおりやっぱりBDより明るくてキレイで、わかりやすいです。早くHT3550iで観たいです。それはそうと、ソニーさんは4月からなんと30%も値上げするらしいので、HT3550iも値上げしちゃうんじゃ無いかとドキドキしています。

    そして肝心の音ですよ。欧米では7.1なのに、なぜか日本はロスレス5.1という残念仕様。実際に海外から7.1を取り寄せた人からは、差があると聞いていて、ますますもって今回のUHDのアトモスには期待が膨らんだわけです。

    結果、いやあ、違うわ。かなり違います。楽しいです。『エベレスト』のアトモスでビックリした音のバラバラ感、あれに近いモノを感じました。あちこちからバラバラに音が出るんですもん。5.1のアップミックスはやはりアトモスとは差があった、ということを学びました。もちろん作品にもよるのでしょうが。

    そのため、『バトルシップ』とか『トップガン』とか『スパイダーバース』とか未見の『フリーガイ』(これも2,000円台になりました)、じわじわとUHDno物欲が高まってしまいました。

    でも、どこかで線を引かないときりがないんですよね~。あと、音って聞き込むと感性(?)が高まるのか、違いがわかってくるんですよね。いや、音に限ったことでは無いかな。母とか甥っ子とか真上から音がする凄さって認識してないんですよ。ある意味、うらやましいです。

    話変わって、最近買ったBDは『ファール・プレイ』今はなかなかない楽しい映画で昔からお気に入りの作品。 あと同時代の『ヤンクス』。これは国内でDVDすら出ていないので、今回初めてアメリカのAmazonでアカウント作って、国内でも観られるのか調べて個人輸入するというおまけ付きです。日本語字幕も当然付いていないので、ネットでスクリプトを入手して、今自動翻訳を駆使して(笑)読解している最中です。ホームシアターもそうですが、ほんと便利な時代になった物です。

      • ウチキネマー@管理人
      • 2022年 3月 26日 12:49pm

      「アーカイヴ」、メッチャひまになって、やることなくなって万が一機会があれば(笑)。ブログで紹介している通り一部の風景カットでそれっぽいところはありますが決して「ブレードランナー」を想像してはいけませんよ?オチを一回観たらもういいかなって映画です。でも個人的にはこういう映画も好きなんですよね。

      機器の値上げについては半導体価格が跳ね上がっている以上、確かに厳しいですね…。我々庶民は情勢を見守るしか無いですもんね。Twitterアカウントを持っていればBenQのTwitterをフォローしておくか、もしくはBenQのサイトをマメにチェックしておいたほうがいいかもですね。

      「パシフィック・リム」UHDはドルビーアトモスですね。いいですね、羨ましいです。感想もありがとうございます!音って確かに耳慣れですよね。初めて聴く音って新鮮でどんな音でも感動しますが、だんだんと繊細な部分まで聴けるようになって「ん?」ってなるときがあります。でも、それを気にしだすと音楽や映画が純粋に楽しめなくなる時があるのですよね。だから、視聴用の機器を追加したり交換したり、いじる時だけ集中して何度も何度も繰り返し聴いて感性を高めて集中し、周波数帯域にもこだわりますが、普段の鑑賞時は全く気にしないようにしています。

      3D版しかもってないので買い足そうかなぁ…微妙だなぁ。UHDがやっとセールで安くなってきましたね。3Dはすっかり衰退して寂しい限りです。4K UHDの高精細映像を観るとエンタメ的な3Dは勿論ありませんが、ハイダイナミックレンジ(HDR)効果と高解像度で、被写体の存在感はBlu-rayよりもグンと上がります。それが4K UHDの恩恵だと思うのですが、これもまた悲しいかな見(観)慣れちゃうのですよね。しかも、映像ソースが悪ければ4K UHDでもいまひとつな映像だったり、逆にBlu-rayでも映像ソースが良ければ…たとえば8Kマスターからダウンコンバートはそれなりに高精細に見えちゃうというね。やはり音もそうですが、映像もマスターが全てすよね。

      個人輸入に関して、私も米Amazonのアカウントは作っていますが、海外から映像ソフトを入手する時は「DVD FANTASIUM(https://www.fantasium.com/)」というサイトを利用しています。もちろん日本語対応で邦題での検索もできますし、対応言語や対応字幕もしっかり表記してくれているので便利ですよ。

      >日本語字幕も当然付いていないので、ネットでスクリプトを入手して、今自動翻訳を駆使して(笑)読解している最中です。

      「スクリプトを入手して」って凄ぇ…うめ吉さんってプログラム関係にお詳しいですね!尊敬します(マジリスペクト)。

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