Blu-ray仕様:本編119分、1.85:1(アメリカン・ビスタ)
英語:5.1ch DTS-HD Master Audio、日本語:未収録(日本語字幕はあり)
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それまででも日本ではキャロム・ビリヤード台やポケット・ビリヤード台はあったが、この映画によりキャロム台はポケット台にあっという間に置き換わっていった。そこらじゅうの店にポケット台が置かれるようになり、キャロム台は隅っこの方に1、2台程度まで追いやられた。ポール・ニューマンは本作の演技で、アカデミー主演男優賞を受賞している。
Contents
「ハスラー2」あらすじ
男は無敵のハスラーだった……
若者がその心に再び火をつけた!
かつてのトップハスラー、エディ(ポール・ニューマン)も、もう50代になり、酒のセールスマンのような仕事をして、相も変わらず気ままな独身生活を続けていた。そんなある日、エディは若いハスラーの、ビンセント(トム・クルーズ)と出会い、彼の中に若い頃の自分の姿を見た。前作であのミネソタ・ファッツと死闘を演じてからすでに25年が経っていた。数ヶ月後に控えたアトランティックシティでのナインボールの大きな大会―エディはこのビンセントにプロのあらゆるテクニックを叩き込むことを決心する―。
「ハスラー2」Blu-ray販売公式サイトより引用 ©Disney (C)2012 Buena Vista Home Entertainment, Inc.
ヴィンセント役のトム・クルーズが若い!ニヤついた顔がムカつく!エディの言う事聞かない!調子ノリの悪ガキのように言う事聞かない!対して手を焼くエディが凄いジェントルマンに見えてくる。伝説のハスラーなのにヴィンセントの父親のように見えてくる。この「ハスラー2」という映画はビリヤードのゲームに勝つ事が主体というよりもそれを通しての師弟関係や、ハスラーとしての稼ぎ方、過去の栄光にすがる自分との葛藤や人間性を垣間見ることが出来る。ビリヤードで勝つことにこだわった映画はどちらかと言うと、前作1961年の「ハスラー」の方。エディが伝説の最強プレーヤーであるミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン / Jackie Gleason)に勝負を挑むために資金稼ぎに奮闘するものの、もちろん映画なので紆余曲折ドラマがある。ポール・ニューマンが若いので当然…(失礼)、モノクロ映画だ。そう言えば、本作「ハスラー2」の頃のトム・クルーズを見ても戸田奈津子は頭の中に現れない。
そもそも「ハスラー」とは
ここで言う「ハスラー」とはスズキが販売する軽自動車名ではない。そもそもビリヤードに限らず金を賭けてゲームをする時に相手を ”ダマして金を巻き上げることも厭わない” 勝負師の事をいう。日本ではビリヤードをしている人やビリヤードが上手い人をハスラーと呼んでいる人がいたが、それはこの映画の影響。私もこの映画以前にキャロム・ビリヤード台(大台)で俗に「三つ球」と呼ばれる「スリークッション」というゲームをよくやっていた。そんな私に対してある日を境に急に友人が「ハスラー!ハスラー!」と呼ぶようになったのが気になっていたが「何いうてんねん?そもそも何語?」と思って聞いたらこの映画だった。通っていたビリヤード場にも当然あっという間にこの映画の情報が広がり、「ハスラー」という言葉の意味を知った。でも私がやっていたビリヤードはポケット・ビリヤードじゃないし、そもそも人をダマして金を取ってないし、全然意味が違うという事も同時に知ることになった。
映画「ハスラー2」で日本のビリヤード・ブーム到来
この映画が公開されると日本ではそこらかしこにビリヤード場ができた。元からやっていた者としてはビリヤードが盛り上がるので嬉しいブームでもあったが、ポケット・ビリヤードということで三つ球(スリークッション。キャロム・ビリヤードの一種)とはまるで作法が違う。球の大きさも違うし、ポケットの有無は勿論のことビリヤード台の大きさも違う。始めポケット・ビリヤードを見た時はキャロムの大台より一回り小さく、球も小さいのでオモチャっぽく見えるが、やってみると意外と難しかったことを思い出す。ゲーム性が高く慣れるとゲームにスピード感があり、ポケットに続けざまに落としていく快感はあったが、三つ球(スリークッション)に比べれば繊細さに欠けるゲームと感じた。
ビリヤードの基本のキ
ポケット・ビリヤードは ”手球”([てだま]と読む。プレーヤーが撞く白い球)で ”キュー ”(撞き棒)で撞き、”的球”([まとだま]と読む。全体もしくは帯状に色の着いた球)を当ててポケットに落とすことが目的で、更に次の的球を撞きやすいよう(他の球で隠れないよう)、手球をコントロールして次々と決められたゲームルールに則り的球を落としていくゲーム。的球がポケットに入らなかったりファールをするとプレーヤーが交代になる。ゲームの種類も多く、三つ球に比べ球数が圧倒的に多いので、次に落とさなければならない的球が他の球で隠れやすいのでそこが難しい。本作「ハスラー2」では”9(ナイン)ボール”というゲームをやっている。ちなみに1961年の映画「ハスラー」では”14-1(フォーティーワン)ラック ”、通称 ”ストレート・プール ”と呼ばれるゲームをやっている。
ポケット・ビリヤードに対して、三つ球はビリヤード台にポケットは無く、手球を含めて全部で3つの球を使用する。的球2つに手球を当てれば得点となるが、2つ目の的球に当てる間に3回以上テーブルの四辺にあるクッションを使わなければならない。手球を如何に上手くコントロールして撞くかがメインになり、もの凄く緻密な計算が必要で繊細な調整と感覚で手球をコントロールする必要がある。そこまで繊細にコントロールしないと手球が上手く走らず、2つ目の的球に当てる間に3回もクッションを入れられない。3つ球の未経験者がフラっと立ち寄って出来るものでは無い。未経験者同士だと1回上手く当たれば勝ちぐらいのルールでないとゲームが一生終わりそうにない。普通の人はまず当たらないし手球がそこまで走ってくれない。私個人としては上手くいったときの快感はポケット・ビリヤードの比では無い。
更にポケット・ビリヤードより球が小さく、台は逆にキャロムの大台より大きい「スヌーカー」と言うものもあったがブームに乗った数カ所のビリヤード場に1台ずつあっただけで殆ど見かけなかった。
ブームに乗っかっただけの知識がないオーナーや店主のビリヤード場が街中に
ポケット・ビリヤードが流行し、よくビリヤードを知らないオーナーや店主が便乗して客を取り込みたいが為にゲームセンターなどに併設したビリヤード台はお世辞にもプレーできる環境には無かった。キューは曲がってて少しの手入れもされておらず、さほど毛羽立たないラシャ(台のグリーンの生地)でさえ毛羽立ち、酷い店は毛玉まであったり、カバーも掛けずブラシも掛けずに何日も放置するので次第にホコリがラシャに蓄積。スポットシールやスレート(ラシャ下地の石板)の継ぎ目が浮き上がり、禁止されている「咥えタバコ」で火種を落として空いた穴。禁止されているところが多いマッセ(手球を上から撞いてカーブさせるテクニック)かジャンプ(手球を上から撞いてジャンプさせるテクニック)を素人がやったためミスってラシャを三角型に破いた跡。それを金が掛かるからとラシャの張り替えをせず適当にボンドで止めるオーナーや店主。キューをクルクル回転させて着けるが為に中心に穴が空いたチョークが店のそこら中に転がっている。最悪なのはキューの長さを全く計算に入れずにビリヤード・テーブルをただ置いただけの店…キューバット(お尻)が壁を叩きまったく振れない。それでも懲りずに壁際専用の極端に短いキューを置く強者の店まで現れる始末。もうメチャクチャだった。あと、キューを背後に構えビリヤード台に完全に腰掛けて両足プラプラの状態でバックショットする人が続出。それ、片足は地に接触していないといけないのでファウル。
ハスラー2に登場のキュー「バラブシュカ」
劇中に出てくるビリヤードの ”キュー”(撞き棒)でエディがコレを使えと自分のキューをヴィンセントに譲ったのが「バラブシュカ」というキュー。ジョージ・バラブシュカ(George Balabushka)という職人が作ったもので、ビリヤード・ファンには垂涎のキュー。ヴァイオリンで言うアントニオ・ストラディバリ(Antonio Stradivari)が作った「ストラディヴァリウス」的な存在。値段は「ストラディヴァリウス」と比べれば安いが、それでも今は本物なら超高級外車並みの値段だ。贋作もたくさん出回っている。キュー1本に対してライセンス製造のものでも8万円以上するのだからキューの価格としては破格である。多少細工が施されているにしても球を撞く「棒」に対して本人が作ったものでなくライセンス製造で8万円以上である。ふざけている。そこそこのAVアンプが買えるではないか。
で、散々映画に登場したバラブシュカの話をしておきながら、実際に映画で使われたのは当然本物ではない。夢を壊すようで申し訳ないが、もし本物ならトム・クルーズがキューをヌンチャクのように回してチャラけるシーンなんて白目むいて卒倒してしまう。あれはJOSS(ジョス)というブランドのキュー。映画のおかげで日本でも有名なブランドになった。
エディのメガネ
映画「ハスラー2」でエディはそれまでは裸眼で、今までは掛けていなかったメガネを作ってもらうシーンがある。映画を見た当初はエディの年齢から考えて完全にオシャレな色つきの老眼鏡だと思っていたが、あのメガネは決して老眼鏡ではない。作った後にメガネを掛けて新聞を読んでいるシーンがあったので当時、老眼鏡をあまり知らなかった私は何気に老眼鏡だと思い込んでいたが、ただエディはかつてより視力が落ちていたのでメガネを作っただけであった。劇中に「球が35個 見える」とセリフで言うという事は恐らく「乱視」なのだろう。老眼鏡では手元のモノがよく見えるようになっているので、遠くの的球は完全にぼやけてまともに見えないに決まっている。キュー先にある手球でさえぼやけて見えることを今の私なら知っている。
今回は唯一無料視聴できたU-NEXTで改めての鑑賞となったが、この映画に関してはビットレートが低いのか、映像クオリティははそれほど高くなかった。ちょうどアイキャッチに使っている場面のポール・ニューマンの後方上部にある白い壁に注目してもらえれば分かるかと。ブロックノイズは分かりにくいかも知れないがその為に滑らかなグラデーションにならない「トーンジャンプ」が発生しているのが見て取れる。多少古い壁のイメージではあるが、決して壁のシミでこれほどの模様になっているわけでは無い。映画を見ているときは役者に注目して気にならなかったが、こうして静止画になると平面的である程度均一な面では目立つ。ビットレートが低いと例えば雲1つ無い青い空などを映した映像でも僅かにグラデーションがあるので同様にトーンジャンプが起こる。
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