映像関連機器で「HD画質で綺麗な〜」などと書かれたパッケージや、広告を目にしたこともあるかも知れないが、この“うたい文句”に飛びつくと危険。HD画質と言っても解像度がBlu-ray等とおなじ1920×1080ピクセルあるというだけで、「高解像度=高画質」とはならないことに注意してもらいたい。
高解像度には違いないが、画質の良い悪いは「ビットレート」や「コーデック(圧縮・復元)」というものによる。何だか専門用語でややこしそうだが、詳しくはGoogleや参考文献で調べていただくとして、ここでは映像を主体(本来は音声も関連する)として簡単に説明してみた。読むのも面倒だという人は読み飛ばし「そういうものだ」と理解しておけば今後、HD画質というだけで「=高画質」のように見せる広告に躍らされることは無い。私は知らない頃、すっかり「高画質」と思っていた。
コーデックとは
“コーデック”は容量の大きい映像元データをディスクメディアに記録するときや、映像配信する際に一度映像を圧縮して再生時に復元するアルゴリズム。この処理をするソフトウェアが良くないと復元された画像は元画像ほど綺麗ではない。
例えるなら広げたままの新聞紙はそのままでは新聞受けに入らないし、配達もしにくいので小さく折りたたんで(圧縮して)運び新聞受けに入れる。新聞を受け取った相手は広げて元の大きな状態に戻して読もうとする。全くシワ(劣化)のない元の綺麗な新聞には戻らない上、気にすればシワも見える。でも何が書かれているかはシワを気にせず読める。そんなイメージ(本当にあくまでもイメージ)。圧縮率が高いとそれだけ高画質のモノを転送できるというメリットがある。ちなみに音声も同じようなもの。
●コーデックのイメージ
そのようなデータの圧縮と復元を処理するのが“コーデック”とよばれるもの。「H.265」や「MPEG-4」、「DivX」等さまざまな方式がある。“非圧縮”はもちろんのこと、“可逆圧縮”では完全に元の映像に戻るが圧縮しても容量が多くなるのでビデオ・オン・デマンド(以下VOD)には現実的では無い。
Amazon Fire TVは「H.265/HEVC」コーデックを採用している。この高圧縮技術のコーデックを採用することで4K解像度にも対応でき、全く問題無く綺麗な映像を提供してくれる。YouTubeでの超高画質配信などにしろ、あのクオリティをネット回線で配信できているのは凄い。
ビットレートとは
ビットレートは「bps(ビット・パー・セカンド=ビット/秒)」という単位で表され、簡単に言うと動画が1秒間に何ビット(ここでは画像データの情報量)で作られた映像を映しているかを表す。ビット数が高ければ高精細な映像を映し出すことが可能になるが元画像より高精細になることはない。
また、VODなどの総ビットレートは映像だけでなく音声も含めてのことなので、一概に総ビットレートが高いからといって高精細とも言えない。極端に言うと映画などの場合は音声にもの凄く高いビットレートを割り振ると映像が犠牲になる。しかし、音声は動画に比べるとかなり容量が少ないので非圧縮のリニアPCMが使われることも多い。映像に割り振るビットレートが高いと音がショボかったりする。
映像の情報量を表すビット数を先ほどのように新聞で例えるなら…、扱う記事の内容が同じでも文字数が少なく記事の内容が省略され詳細が不明な部分もある新聞と、文字数が多く記事の内容が細かく書かれているので詳細に分かる新聞。文字数が少ないと新聞を読み終わるのも早く、多いと読み終わるまでに時間がかかる。そんなイメージ(何度も言うが、あくまでもイメージ)。映像の詳細が分かるほどの高精細なビット数はその分データが大きくなってしまう。
●ビット数による情報量のイメージ
AmazonビデオやNetflixのHD画質でのビットレートは必要回線速度が7Mbpsと言われているので実際再生時のビットレートは4〜5Mbps程度か。4K画質になると25Mbpsの回線速度が必要。ちなみに、地上はデジタル放送で最大17Mbps、Blu-rayで最大54Mbpsといわれている(音声データを含む。また、平均ビットレートはもっと低い)。
解像度が同じでもBlu-rayとVODではそれほどビットレートが違う。ただ先にも述べたように普通に映画を鑑賞する分には問題無い画質。iPhone等モバイルで鑑賞するのもほぼ同じだと思うが、ネットワークの回線速度が遅いと画質が低下するのはこのビットレートによるもの。
アイキャッチ画像に記している赤丸囲みの数値は映画「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」Blu-ray再生時のビットレート。この数値は平均よりは高い。概ね23〜27Mbpsで推移している。(例:再生機がOPPO UDP-203の場合ならメディア再生時にINFOボタンを押せば表示される)
フレームレートとは
上記「コーデック」と「ビットレート」意外に動画ではもう一つ大事な要素、「フレームレート」というものがある。高画質や低画質とは直接は関係なく“動き”に関すること。1秒間に何枚の画像を表示させるかを示す。動画はパラパラ漫画の様なもので、1秒間に24コマ〜60コマの画像を表示する。「コマ」と書いたがこれがフレームのことで、「fps(フレーム・パー・セカンド=フレーム/秒)」という単位で表す。
VODで超高精細の綺麗な映像を観たくてもなかなか難しい
コーデックで圧縮もせず、高いビット数(高精細)の画像を1秒間に60フレーム(コマ)となると、1秒間だけでも大きなデータ容量になってしまう。それをVODなどで各家庭が同時に視聴しようとするとネットはパンクしてしまうということは想像がつく。より高精細に、より滑らかな動きでというのが人の心情だろうが、滑らかな動きにするために画質を犠牲にするか、高画質で動きを犠牲にするか、高圧縮で復元画質を犠牲にするか。この3つのせめぎ合い。
VODなら送信するのに問題無いデータ容量まで…、ディスクメディアならディスクに保存できるデータ容量まで…、人が観て綺麗と思える画質までビット数を落とし、人が観てスムーズに思えるフレーム数で、できる限りキレイに復元できる圧縮率の高いコーデックを採用する。配給側はそんな感じだろうか。
結局は総合的にみて妥協する
よく売り込みの文句で「HD画質」や「高解像度」とか、最近では「4K画質」などと“解像度だけ”をアピールしている製品もあるが、だからといって「高画質ではない」ことを理解していただけたと思う。「ビットレートが高いから高画質」は概ね間違いではない。
しかし、元画像がどれほど高画質であり、どのコーデックでどれくらい圧縮され、音声に多く割り振っているのか映像に割り振っているのかにもよる。VODなどの映画配信は特に、映像にも音声にも高いビット数を割り当てるのは機器や容量、ネットワーク速度の問題からも今は限界がある。また、視聴する側の環境が対応していないと無意味に映像データが大きくなるだけ。
AmazonビデオやNetflixも「HD画質」と言っているHD(1920×1080)は、解像度もBlu-rayと同じ解像度でビットレートはBlu-rayと比較すれば大幅に低いものの、鑑賞するにたえない汚い画像でもなく、元が低解像度の映像をムリヤリ引き伸ばしたようなボケボケの画像でもないので高画質といえるのではないだろか。改めてこれが全国同時にネット配信されているとは凄い時代だ。私のホームシアター機器環境(2K)では充分。Amazon Fire TVを導入してから以前に比べてホームシアターのプロジェクター稼働率が格段に上がった。ランプ切れが心配なほど。
今の時代はネットワークの回線速度も速く、コーデックも優秀なので圧縮率も高くでき、映像は綺麗で音も良い音で観られるようになった。今後さらに圧縮率が高いコーデックが開発され、回線速度も今以上に速くなると、4K UDH画質なんて余裕で送信できるようになるのかもしれない。
自宅にネット環境があれば、Amazon Fire TVがお薦め!これがあれば映画ライフが劇的に変わる!
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