普段あまり気にならないがAmazonビデオやNetflixなどビデオ・オン・デマンド(VOD)の映像を近くでよく見るとザラザラとした「ノイズ」や「トーンジャンプ」が見えるときがある。画像圧縮による劣化でノイズになっているようにも見えるが果たしてそうなのか。トーンジャンプとは、階調(トーン)飛び(ジャンプ)のこと。映像の世界では「バンディング」とも呼ばれる。明るいところから暗い所までの滑らかな階調表現ができず、部分的に明度や色の境界線ができて縞模様のように映ることをいう。また、トーンジャンプは映すモニター(テレビやプロジェクター)などの階調表示能力にもよるので、いくら元になる映像が滑らかな階調でも映し出すモニターによってはトーンジャンプは起こる。
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Blu-rayでもノイズが発生していた
AmazonビデオやNetflixは、HD画質(解像度)でも地上波やBlu-ray等よりもビットレート(下の過去関連記事参照)が低いため、平坦な空などを映し出す際にグラデーションのトーンジャンプを目立たなくするために敢えてノイズを乗せているのかと思ったが、ノイズが少ない時やほとんど確認できないときもあるので結果何だかよく分からない。だったら、これらのノイズはビットレートの高いBlu-rayなら見えないのかと思い、Blu-rayを再生したら……同じ所でノイズが発生していた。そこで思ったのだが、AmazonビデオなどのデジタルソースがBlu-rayの映像データならノイズの発生はBlu-rayからのものなので当然Amazonビデオなどでも同様に発生することになる。ある意味AmazonビデオやNetflixは送信容量の問題で圧縮による劣化はしているもののBlu-ray画質に近い。U-NEXTはノイズ感など若干映りが他社と違うのでコーデックやビットレートが違うのだろう。
撮影カメラによってはノイズが避けられない
少しカメラの話になってしまうが、映画撮影時に暗い中でシーンを撮るとき光の感度を良くするためISO感度を高くする場合がある。デジタルカメラの場合は光を捉えるCMOSやCCD等、センサーの負荷が掛かりノイズが出る。フィルムの場合でもISO感度が高いフィルムを使うと光を捉える粒子が大きくなるのでノイズが出る。いずれにしてもISO感度を上げると比例してノイズが乗る傾向にある。
ISO感度とは国際標準化機構(International Organization for Standardization)で決められた写真フィルムの規格のことでフィルムがどの程度まで弱い光で記録できるかを表す。現在のデジタルカメラはISOで統一されているがかつてフィルムだった頃はASA(アメリカ標準規格)やDIN(ドイツ工業規格)と呼ばれているものもあった。ISOは「アイ・エス・オー」や「アイ・ソ」、「イソ」と結構読み方は人それぞれ。特に決まっていない。
最近の一般デジタルカメラではこのISO感度を上げることによるノイズはかなり抑えられている。また一眼レフカメラなどはシャッタースピードを遅くすることによりフィルム(もしくはCMOSセンサー)に光を長く当て、ISO感度の低いフィルムでも暗い場所を鮮明に写すことはできる。しかし動画撮影の場合は一眼レフカメラのように長くシャッターを開けるわけにはいかないのでISO感度を上げるしかない。
シャープなザラザラと、ボケボケで滑らか
カリカリにシャープな映像が好みの人はテレビやプロジェクターの映像設定でシャープネスを掛けると映像が引き締まるがその分ノイズが目立つようになる。逆に映像ノイズを目立たなく滑らかにしようとすると結果映像をボカすことになり映像のシャープさも失う。ノイズリダクション(NR)効果も完璧ではないため掛けすぎると細かいディテールや複雑なエッジが潰れる場合がある。
ノイズを乗せてトーンジャンプを目立たなくする
撮影カメラのISO感度によるノイズなのか、映像編集時点で意図的にノイズを乗せているのか、容量の問題で圧縮して劣化によるノイズなのか分からないが、私はノイズが全て「悪ではない」と思っている。ザラザラとしたノイズがあることによってトーンジャンプが目立たなくなるのは事実で、印刷物の写真などの加工の際でも、トーンジャンプを起こしそうな画像は敢えてノイズをわずかに乗せることがある。映像のシャープさも残るのでノイズがあるからと映像がボケるわけでもない。(ブロックノイズは別、ブロックノイズまで話が及ぶとさらに複雑になるので割愛)
ノイズを乗せるとグラデーションのトーンジャンプが目立たなくなる例が下図。分かり易いように極端にしているがトーンジャンプが起こりやすいグラデーションを作為的に作り、その画像にそのままノイズを乗せただけ。ノイズを乗せることで少し色が濃く見えるが色調など他はさわっていない。(スマホ等小さな画面では少し分かりづらいかもしれない)
ビットレートが低いと滑らかなグラデーションに色数を割り当てられず、このようなトーンジャンプ(及び、ブロックノイズ)を起こしやすい。しかし仮にビットレートが高く滑らかなグラデーションであっても映し出すテレビやプロジェクターなどの映像機器によっては表示能力の限界でトーンジャンプは起こる。その場合は避けようがない。
同じ元画像でもこのようにあえてノイズを乗せることでトーンジャンプを目立たなくする役目も果たす。ノイズにより目立たなくなっているだけで実質トーンジャンプがなくなっているわけではないので、シーンによってはNetflixやAmazonプライムビデオなどのVODはもちろんのことBlu-rayでもトーンジャンプが見えることがある。その場合は映像ソースと映像機器のどちらに原因があるか分からないが、映し出す映像機器の問題なら機器を広色域(再現できる色の範囲が広い)なハイエンドな製品に買い替えると解消する場合がある。ただし、広色域だからといって「色再現性」があるかどうかは別の話。
また、これらのノイズは静止画像なら目立つが映画では常に動いているのでほぼ気にすることなく視聴することが出来る。
ノイズは実写らしさを演出する効果もある
シーンによってフルCGなら撮影時のノイズなんて皆無なはずだが、他のシーンとのバランスやカメラで撮影した実写との合成を考えると敢えてノイズを乗せていると思われる。そうしなければノイズが一切ないツルツルテカテカのCGと、少しフィルム粒子のノイズが乗っている実写が1つの映画の中に混在すると違和感や合成感が顕著に出てしまう。アニメの場合でも昔なら手描きセルの撮影時にフィルム粒子としてザラザラとしたノイズが乗ることも考えられるが今はフルデジタルなのでそれは考えにくい。比較的フラットな塗りのアニメはクリア過ぎるのでギラつきを抑えるため敢えてノイズを乗せている場合もありそうだ。
敢えてフィルムの様な粒子を再現したいためノイズを乗せることもあるだろう。VFXやフルCGの映像はSF映画などでは今や欠かせない技術となっている。それでも映画となるとフィルムでの撮影イメージがあり、クリア過ぎても映画として“味”がなく不思議と実写感が薄まる。普段の生活で目にするものにノイズなんて乗っていないにもかかわらずそう感じる。人は誰しも見慣れたものを実写(本物)と認識している。映画に関しての実写はノイズがあればこそなのかも知れない。
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