少し前に長年愛用していたiPhone 5sから、iPhone 8 Plusに機種変更した。正直、普段使いにiPhone 5sの画面サイズは目に辛い。見えなくはないが見づらい。頑張れば見ることが出来るが、スマートフォンを頑張って使うのもどうかと…使う人間(私)が全然スマートじゃないという事態が起こっている。なのでiPhone 8 Plusにして画面サイズアップ。iOSの動きも軽快でサクサク動く。その上バッテリーの持ちも良くなった。
が、しかし…iPhone 8 Plusにはステレオミニジャックが非搭載なので、外出時に使っていたSHUREのイヤホンSE215がこれまで通りには使えない。SHUREのイヤホンラインアップの中でハイエンドではないので比較的安く、やや低音寄りのバランスだが全体的に見通しも良くコストパフォーマンスの良いイヤホンなので気に入ってたのに…。室内で音楽を聴くのに頭内定位は好きではないが外出時はこういうものだと、かつてのカセットテープ時代のウォークマンで慣れてしまっている。自分でもよく分からないが環境が変われば習慣的に聴覚モードが切り替わるのだろうか。
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面倒くさくて頼りないiPhone付属の変換アダプタ
iPhone 8 Plusには「Lightning – 3.5mm イヤホン・ヘッドフォンジャックアダプタ」が付属している。通常のφ3.5mmステレオミニプラグのイヤホンを使うには付属の変換アダプタをiPhoneのLightning端子に接続し、イヤホンのプラグを差し込むことになる…なんて面倒な。しかもLightning端子が塞がれてしまうためその間は外出時用のモバイルバッテリーではiPhoneを充電することができず、付属の変換アダプタはいつ切れてもおかしくないと思う程ケーブルが細く頼りない。イヤホンのリモコンによるボリュームコントロールや再生・一時停止、曲の送り戻し、通話やSiriの呼び出し(再生ボタン長押し。私はあまり使わないけど)も出来るのは流石に純正品だけのことはあるのだが、普段外出時はiPhoneをポケットの中に入れているので出し入れしている間にいつの間にか断線しそうで怖い。
実際にしばらく使っていたが、iPhoneを入れたポケットに手を突っ込む度に少し緊張感が走る。念のために言っておくが「Lightning – 3.5mm イヤホン・ヘッドフォンジャックアダプタ」はただの変換アダプタではなく、れっきとしたUSB(Lightning)-DACなのだ。しかし、現在販売されているDAC搭載ポータブルアンプ(以下、ポタアン)のサイズから想像してもこのアダプタが他より音質的に優れているとは到底思えない。
「耳からうどん」は…スタイル的に私の好みではない
これは基本的に今、巷で流行のBluetoothイヤホンを使えという事か。AirPodsか。「耳からうどん」か。イヤだな。そもそもイヤホンを替えるのがイヤなのに16,800円(税別)も払って「耳からうどん」はスタイル的にもイヤだ。外国人には「うどん」という食文化がないから何も思わないのだ。だからあのデザインにOKが出るし、海外で装着してても「Hey! You… “UDON” is popping from your ears!」と心配されることもないのだ。モーションセンサーも要らないし、Siriなんてほとんど使わないから、私にとって耳(音)馴染みの良いBluetoothイヤホンがあれば欲しいが、紛失も怖いし、ラインアップが有線イヤホンより限られている。Bluetoothイヤホンが今よりもっと充実するまでは選択肢の多い有線のイヤホンを使いたい。
audio-technica AT-PHA55BTでiPhoneノーマルより良い音がする
自分で書きながら今回の記事に関する本筋を見失いそうなので話を本題に戻すと…今のイヤホンを活かすためにBluetoothレシーバー搭載のポタアンを探していた。音質性能が優れた少々ゴツ目のポタアンもあるが、そもそもiPhoneに入れている音楽なんてハイレゾ音源を入れていないし、なんとなく音楽を流しながら街を歩くことが多いので、街中の騒がしい中で聴くのにそこまで高音質を求めてじっくり聴くわけでもない。Spotify(無料プラン)やAmazon(プライム)ミュージックでも良いくらい。実際に外出時はそれらをBGMとして利用している。
ショップといっても専門店ではなく家電量販店だったので店内は色々な音や音楽が鳴り響き、店内アナウンスもあったので街歩きを想定するのに好都合でその辺も全く問題なし。むしろ直接イヤホンを繋げていたときよりも随分良い音に感じる。同種のものが他にもズラリと並んでおり他社のよりも価格は高かったが、音の耳心地が1番良かったのが「audio-technica AT-PHA55BT」だった。聴き比べで試聴した際に妻にも試させたが「こっち」と即答だった。量販店で試聴して価格を見てAmazonで注文。
思っていたよりも贅沢なポタアンだった
本体サイズの割には随分と大きな外箱だが取り敢えず開封してみると、高級ではないが“ちょっとだけいいボールペン”のように型取りされたグレーのスポンジに保護された状態で入っている。
工場出荷時に検品のためか予め充電されているようだったので早速iPhoneとペアリングしてみる。試聴した量販店で自分のiPhoneに接続したので、Bluetoothのペアリング方法はもう分かっている。早速イヤホンを繋ぎ再生するとなにやら随分と音が小さい。音量ボタンが32段階あり出荷時は小さくなっているようだ。iPhone本体のボリュームも影響するのでiPhoneで大ざっぱにボリュームを上げておき、AT-PHA55BTで微調整するといった感じで使う。量販店で試聴したAT-PHA55BTは他の人が試聴する際に随分と音量を上げていたのだと気づく。という事は本機の音量は電源を切っても記憶しているということだ。
改めて室内で聴くと量販店の騒がしい中で聴いていた時より、静かな室内では当然のことながら格段に密度上がり、耳で感じる周波数レンジやダイナミックレンジも広く良い音で聞こえる、正直「しまった…街歩き用にしてはやり過ぎた」と思ってしまった。どおりで価格が1万円を超えるはずだ。
音を聴きながら説明書を取り出すために改めて箱を手にする。箱の裏を見ると“ESS”のロゴが目に飛び込んできたのでもう一度思った「やっぱり…やり過ぎた」と。普段から取り敢えず出して商品をチェックし、その後しげしげとパッケージやら説明書を読むクセがあるので、結構後から「コレって、そうやったんや…」と気づくことが度々ある。
鮮明な音像と充分な出力で
ワイヤレス音源はもっと良くなる
DAC、アンプ部には原音に忠実な再現性能で定評のあるHi-FiグレードのESS社製 ES9118を実装。ワイヤレス伝送された入力信号側からのクロックを制御し、ジッターを抑制することで透明度の高い澄んだ音質を実現します。また、ボディにはアルミニウムハウジングを採用し不要な共振を抑えます。
と、謳い文句が書かれていた。ESS社製のES9118は元々スマホなどのモバイル機器向けのハイエンドクラスSoc(システム・オン・チップ)として開発されたチップらしい。ハイレゾ再生が可能なDAC・アンプ用チップで、AIFF、WAV、FLAC、ALACなどのハイレゾやロスレスのオーディオ・フォーマット等をサポートしている。それをこのBluetoothで飛ばすことしか出来ないAT-PHA55BTに採用しているとはなんとも贅沢な使い方…。BluetoothコーデックはLDAC、apt-X、AAC、SBCに対応している。apt-X HDには未対応。iPhoneなんてBluetoothで飛ばせるフォーマットは頑張ってもAACだ(ハイレゾではないだけで街歩き用音楽には十分なのだが)。しかもiOSではBluetoothでの出力に関わらずAACなどの音楽データは一度本体で復元され電話呼び出し音などのためミキシングされて再圧縮されているらしい。さらにBluetooth送信時のサンプリングレートは44.1kHzで固定されてしまっている。私の様な素人耳にはほぼ違いが分からないが厳密に言えばiPhone自体が音質を劣化させているということになる。これはiPhoneをプレーヤーとして使う限りどうしようも無いことだ。そんなiPhoneにとってAT-PHA55BTは完全にオーバースペックなのだ。
しかし、機器の余裕というものの現れなのかその音はとても豊かに聞こえ今までのiPhoneからの音とは思えない。もちろんiPhoneに入れている音源としてmp3等で高圧縮したものはそれなりの音でしかないが、個人的には「Lightning – 3.5mm イヤホン・ヘッドフォンジャックアダプタ」よりは随分にマシに聴ける(ごまかせると言った方がいいのか?)。
元が“ふつー”の音なら音質が向上したように感じる
ハイレゾ再生が可能なポータブルプレーヤーから、普段わざわざ音質の落ちるBluetoothで飛ばすのは多数派ではないと思うのだが、元から高音質のプレーヤーを使っている人は本機にBluetoothで飛ばして聴くと逆にコーデックの関係上、音質が落ちるので使わない方がいいかもしれない。音楽専用ではないiPhone(今や電話がオマケに見えてくるモバイル端末)など、元から高音質ではないモバイル端末をプレーヤー代わりとして使っているような人にとっては、少々大袈裟な言い方だがこの音質の変化は驚く。まるで音の情報量が増えたかのような錯覚をしてしまいそうなほど豊かな音に変化し、柔らかく、かといって音が籠もっているような感じでもない。使っているSHUREのイヤホンとも相性がいいのかもしれない。イヤホンをもっと高音質のモノに変えるとそれはそれで、そのイヤホンのパフォーマンスを十二分に発揮できない可能性もある。では「どの程度までのイヤホンなら」というラインが分からないが、私の場合はiPhoneにSHURE SE215という組み合わせが、iPhone付属のアダプタよりもたまたま良い方向に出たといった感じだ。
ダイナミック型、BA型のモード切替と50mWの高出力
出力抵抗値モード切り替えスイッチは「A」モードと「B」モードがあり、ドライバー特性に合わせて出力抵抗を選択できるようになっている。メーカーによると「A」はダイナミック・ドライバー向け、「B」はバランスドアーマチュア(BA)・ドライバー向けとなっているが、「B」モードにすると出力抵抗がなくなり音が大きくなる分、SE215では少しキンキンする。メーカーの思惑通りになるのも何か悔しいが、やはりSE215もダイナミック型(インピーダンス17Ω)なので確かに「A」モードの方が合っているように感じた。アンプは出力50mW+50mW(16Ω)でこのサイズでは高出力。当然のごとくこのAT-PHA55BTでSENNHEISERのヘッドホンHD 650は上手く鳴らせない。
Bluetoothポタアンに不慣れなせいで電池を無駄に消耗
仕事のためにAT-PHA55BTの再生を止めて、仕事を終えてから再び再生ボタンを押したらウンともスンとも言わなくなってしまった…。インジケーターランプも何も光らない。完全にバッテリー切れだった。「止めてたはずなんやけどな…」と思ったが、どうやらBluetooth通信は本体の電源をOFFにしない限りずっと続いているようで、そのためにバッテリーを消耗しているようだ。不慣れなせいで無駄な電池消耗をしてしまった。あくまでも「一時停止」なのだな。確かに本体ボタンのマークも再生と一時停止を表す「▶II」になっている。iPhoneだけで使っていた時も一時停止したままでほったらかしにしているのでついそのクセがあり、それをそのままAT-PHA55BTでも同じ事をしてしまった。ある一定時間が経てば自動で切れると良いのにと思ったが、それでは電話の着信が分からなかったりするのか。再生をしばらく止める場合はマメに電源をOFFにするクセを付けなければ…(この記事を書くまでに2回ほどやらかしてしまった)。一度ペアリングしてしまえば後はAT-PHA55BTをONにするだけで自動でiPhoneに接続されるので煩わしさはないのだが。
リモコン付きケーブルのリモコンは使えない
iPhoneでは音質を重要視していなかった(そもそも期待していなかった)のでSHURE SE215にはノーマルケーブルより若干音質は落ちるが利便性を優先してリモート&マイク内蔵のケーブルにリケーブルしていた。今回、元のノーマルケーブルに戻したのだがその理由は、リモートケーブルのリモコンでは本機を操作することはできないので無駄に音質を下げるだけのケーブルになるという理由から。iPhoneに電話が掛かってきた場合はAT-PHA55BT本体にマイクが内蔵されているので再生・一時停止ボタンを押すことで通話をすることができるようになっているが…まだ慣れてないというか、まだ本機を使い始めて日が浅いので使っているときに電話が掛かってくるタイミングに遭遇していない。ちゃんと電話を受けられるだろうか…アタフタしそう。
一応、私は普段しないがスマホでAmazonプライムビデオやNETFLIXなど映画を観ても、リップシンクがズレているような気がしないでもないが、まったく気になるようなことはなかったので十分使えると思う。何よりiPhoneと繋がっていたケーブルから解放されただけでホッとする。外出時に音楽を聞きながらiPhoneで何か操作する度に繋がったイヤホンケーブルが揺れてその振動が耳に伝わり、自分では知らない間にストレスを感じていたのだな。街歩き音楽が今までより少しだけ楽しくなった。
現在SHURE SE215はデフォルトでリモコン付きケーブルでノーマルのケーブルは付属していないのか。私が購入したときは逆だった。音がノーマルに比べ若干こもる(薄いベールが掛かったような)感じがするので、聴き比べればノーマルのケーブルの方が個人的には音がスッキリしてて好ましいのだが、イヤホンの基本利用が外出用なので音質よりも利便性を取って購入当初はリモコン付きにリケーブルした。リモコンの形状も以前と違うので今は改善されているのだろうか。
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