以前に紹介した真空管プリアンプFX-AUDIO- TUBE-03J+を使い始めて3週間近くになるが、やはり気分によるものではなく良い音だと感じる。私の様にAVアンプで映画用のフロントスピーカーをオーディオ用として併用したいと思っている人にとってFX-AUDIO- TUBE-03J+は価格が安いので「失敗だ」と思っても本腰入れてプリアンプを購入して失敗するよりは金銭的なダメージが少ない。
導入してからは2チャンネル(ステレオ)音声になってしまうが一度これを通して映画を観てみようと思っていた。FX-AUDIO- TUBE-03J+はOPPOのプリアウト(FRONT L/R)につないでいるので、2チャンネル以上の音声でもプレーヤーのOPPO UDP-203により2チャンネルにダウンミックス(設定が必要。下の過去記事参照)されてプリアウトから出力される。
プレーヤーからダウンミックスされてプリアウトされた音声は真空管プリアンプのFX-AUDIO- TUBE-03J+を経由してマランツのAVアンプSR8012へ送り込まれる。SR8012で真空管アンプからアナログ接続したソース入力に切り替えると映画の音声はフロントスピーカー2チャンネルから音が出るようにしている。図解すると下のようになっている。
現在の「家キネマ」の主な接続機器状態を表している図なので他の機器も含まれている。ゴチャゴチャしているが、要するにOPPO UDP-203のPRE OUTからmarantz SR8012に接続している間にFX-AUDIO- TUBE-03J+をRCAケーブルで咬ましている。OPPOは常にプリアウトから音声信号を出力しているので基本的にOPPOで操作することは通常通り映像・音声ソースを再生するだけ。後は真空管アンプのFX-AUDIO- TUBE-03J+の電源を入れてAVアンプであるマランツSR8012の電源を入れ、入力ソースをFX-AUDIO- TUBE-03J+からの入力に変更するれば音に関しては真空管プリアンプを通した音が出る。その際SR8012のボリュームはMAXにし、ボリューム調整は全て真空管プリアンプで行っている(電源投入の順番に注意。電源は上流から。詳しくは下の過去記事参照)。
さて、FX-AUDIO- TUBE-03J+で映画を観ると…
結論からいうと、映画に相応しい音かどうかは一先ず置いておくが、格段に音のクオリティが上がる…正直ビックリする(した)。ステレオなのが惜しいくらい。いくらFX-AUDIO-が安いからといってマルチチャンネル出力にして全てのチャンネルに真空管プリアンプを充てるという無謀な事はやらないが、気持ち的にはやってみたいと思えるほど。実際にやるとなっても全チャンネルの音圧や特性などを合わせるのは私には不可能だ。見事なまでにバラバラでまとまりのないサラウンドが構築されてしまう。ここは素直に2チャンネル(ステレオ)音声で楽しんだ方がいい。
映画視聴に真空管プリアンプを通して試したのは、音楽メインであるミュージカル映画から「ラ・ラ・ランド」(Blu-ray:ドルビー・アトモス収録)と、やっぱり音が良いなら試してみたい好きな映画「スター・ウォーズ(エピソード4)」(特別篇/Blu-ray:6.1ch DTS-HD マスター・オーディオ収録)。
まずは音が良くなるならば間違いないであろう「ラ・ラ・ランド」から視聴してみた。
FX-AUDIO- TUBE-03J+で「ラ・ラ・ランド」
ドルビー・アトモス音声収録の本作。オープニング、高速道路で渋滞する車のクラクションから各車内から溢れるカーステレオの音。各車から溢れる1つ1つの音楽がボリューミーでサラウンドで聴いていた時とは違うことを感じ取れる。フロントスピーカーのみの2chになるので通常サラウンドで後方から聞こえる音もミックスされてフロントチャンネルのJBL S3100から全ての音が鳴る。少々音がごちゃつくが長回しのカメラが捉えた中心となる車の前では、その車から発せられる音楽が主体となりしっかりと鳴り響く。その音が通常のサラウンドで聴いていたときの音とは違い濃厚。
そこからのオープニングミュージック“Another Day of Sun”とダンスへと続く。カラフルな映像と共に流れる音の厚みが真空管プリアンプを通さず普通にサラウンドで聴いていた時とまるで違う事に驚く。「前観たときはこんな音、聞いてないな」という音も。2チャンネルになることによって、音に包まれる感じや広がり感はなくなるが、サラウンドスピーカーやトップスピーカー、センタースピーカーと、サブウーファーに分離されていた音がフロントのJBL S3100に集約されて1つになるので音のまとまりが良く、聞こえてくるのも前方からなので全ての音が聴き取りやすくなっている。音楽の塊が前方から飛んでくるかのよう。これは凄い。音の物足りなさも感じないのでサラウンドとはまた違ったこの映画の楽しみ方だと思える。セリフは2チャンネルなのでファントムになるが極端に中心からズレて視聴しない限り特に問題無い。これは手持ちの全映画を試したくなるがそんな時間もないので、期待を込めて「スター・ウォーズ」を続けて再生した。
FX-AUDIO- TUBE-03J+で「スター・ウォーズ(エピソード4)」
あの有名なオープニングシークエンス、ロゴと共にあらすじの文字が遠方に流れて行く映像。勿論そこにはあのジョン・ウィリアムズ作曲の「スターウォーズのテーマ」が流れるのだが、そのオーケストラのスケール感が格段に良くなる。Blu-rayは元々音が良いのでそれが発揮されている感じがする。バッチリ組み上げたA/V機器マニアやオーディオマニアは普段このレベル以上で聞いているのだろう。ヤバイな…何か知らない世界のトビラを1つ開けてしまったような気がする。
オープニングサウンドに感動しながら続きを観ていると、レイア姫が搭乗するコルベット「タナヴィーIV」が帝国軍の戦艦「スター・デストロイヤー」に追われるシーンへと変わる。そこで愕然とした。お互いに防衛と攻撃でレーザーを放ちながら、また、被弾しながら音楽を背景に戦闘をするがその時の音たるや「えぇ〜…」である。背景に流れる音楽、レーザービームの発射音、被弾した爆発音、宇宙船のエンジン音。全てがゴチャゴチャになって混然一体となり、結果どれもまともに聴けない。今回は音に集中したからだろうか。かつてサラウンドを組む以前、ステレオで観ていた時は特に気にしていなかったが、一度「スター・ウォーズ」のサラウンドで各方向からキチンと聞こえる音を知ると、ステレオでは前方でガチャガチャドーン!とした音の塊になり各音のディテールが潰れて聞こえる。これはOPPO UDP-203による単純なダウンミックスでこうなってしまうのだろうか。シーンにもよるが、ステレオの方が好ましい映画もあれば、やはりサラウンドで聴くべき映画もあるのだと実感できる。残念ながら私にとっては「スター・ウォーズ」の映画本編を鑑賞する場合はやはり、サラウンドで聴く方が好ましく感じた。音楽だけ聴くなら真空管プリアンプで聴くほうがスケール感も出てワンランク上がったような音を楽しめる。
FX-AUDIO- TUBE-03J+で映画はアリかナシかと言われれば…
アリも有り、大ありだと思う。本気の高級真空管アンプならAVアンプにつないで映画兼用で使うのは躊躇(ためら)うかも知れないが、この値段の真空管アンプなら躊躇わずに使える。FX-AUDIO- TUBE-03J+なら好みに合わせて都度簡単に(ツマミで)トーンコントロールができるのも良い。結果としてステレオ再生になってしまうが、ミュージカル映画は抜群の威力を発揮し、ドラマ映画は音質が純粋に良くなる。音楽と爆発シーン等のSEが同時に流れているアクション映画は映画によって微妙になる。全て個人的感想なので好みによっては音質が向上して良いと言う人もいるだろうし、逆に良くないと思う人もいるだろう。好みは別としても送料込みでも6,500円程でこれほど音が化けるのはやはり面白い。う〜ん…FX-AUDIO-、恐るべし。
カラーはブラックとシルバーの2種類あるので、部屋のインテリアや他の機器に合わせて選べる。
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