この映画は1961年公開された「ウエスト・サイド物語」のリメイク映画なのだろうか、それともただの再映画化なのだろうか。ディズニープラスで早々に配信上映されていたので観たんだが…。
2021年に公開された本作。スティーヴン・スピルバーグ監督は何故、今これを映画にしたかったのだろう。その意図がよくわからなかった。ストーリーはもちろん変わらず、なんだか「リメイク」というものでもない気がする。監督自身の自己欲求を満たすためなのかと…。いや、わかってるんだよ?以前の「ウエスト・サイド物語」ではプエルトリコ系の人種を差別的に肌の色を黒くメイクして出演させているからね。分かりやすいところではそういう事ではないのかな?この劇中の時代は今よりも「白人史上主義」が酷く強い。アメリカの白人史上主義なのはトランプ大統領時代によくテレビで報道されていたのが記憶に新しい。
で、今作の「ウエスト・サイド・ストーリー」。実際に街(ニュージャージー州パターソン)を数ブロック閉鎖してあの時代のセットを作り上げたという。さすが、そんなことが可能になるのも巨匠スピルバーグ監督ならでは。あの大掛かりな街並みのセットを実際に作ったという話を聞けば圧巻だけど、映像になるとそれが伝わらない時代になってしまったのが悲しい。今の時代「CGで再現した」といっても多分分からない。
でも本作の評価は高いんだよなぁ。Rotten TomatoesのTomatoメーターで91%、オーディエンススコアで94%という結果。IMDbでも7.3/10という高スコアという大絶賛な結果にちょっと驚いた。この映画においてはスティーヴン・スピルバーグという“バフ”がかかってる気がするのは私だけなのだろうか。
色々と各方面に気を遣っただけ
そこまでこだわって作り上げた本作。前回と何が違うのか。「登場する人種を尊重して撮り直しました」くらい。しかも、当時(1961年)のアニタ役を演じた御歳90歳(2022年4月現在)のリタ・モレノがほぼ主役なのではないかと思ってしまうほど、いいとこ取りの活躍ぶり。彼女は序盤から最後の最後までそれこそ暗転直前までその姿がスクリーンに映っている。そんな、スピルバーグ監督による、いろいろな方面に気遣いたっぷりの「ウエスト・サイド・ストーリー」だった。
以前のポリコレ話と同様、何か腫れ物に触るような気遣いと、本来はこちらが正しいであろう構想で仕上げた映画。確かに1950年代後半当時のアメリカにおけるプエルトリコ系人種、ポーランド系人種の抗争を描いた本作は必然的に差別歴史を物語っているけど映画のメインはそこではないのだ。
抗争している2グループのリーダー。シャークス(シャーク団)率いるリーダー、ベルナルドの妹マリアと、ジェッツ(ジェット団)リーダー、トニーとの許されることのない恋愛物語。もっと単純に言えばチンピラグループ間の恋愛物語を描いたミュージカル映画なのだ。そこにグループ分けとしてアメリカの時代背景的にもわかりやすく移民による人種で分けて人種差別という要素を盛り込んだという形であり、決して差別を主体とした映画ではないんだよな。
日常的なのか非日常的なのか
このミュージカル映画は「ロミオとジュリエット」を基にした映画なので、むしろ少しオーバー気味に美女と美男を使った方がより“らしさ”が出るんだよね。個人的には顔面偏差値をグンと上げて歌はアテレコでもいいと思っているくらい。そこに日常的なリアルは必要ないと思うんだよ。そもそも劇中では非日常的に歌って踊るんだから。
なんか妙なリアルさを盛り込んでいるのも気になる。冒頭のグループ抗争で耳を釘で刺されて大量に血が出ているシーンとか…(1961年版も耳辺りから少し血が出ているけど普通に怪我をしてるだけ)。トニーとマリアがベッドでその後だと分かるようなシーンとか…。そんなリアルいらんだろ。
そして、「ウエスト・サイド・ストーリー」においてロミオとジュリエットに当たる主役の2人。トニー役にアンセル・エルゴート、マリア役にレイチェル・ゼグラーを起用しているのだが…なんだろう…ぶっちゃけひと言でいえばこの映画では華がなくパッとしない。完全に個人的主観だが正直言ってこの2人、ブサイクではないけど顔面造形的に美女と美男とまでは思わない。
音は昔より良いはずなのに迫力が感じられない
音は断然良くなっている。もちろん、それはキチンとドルビーアトモス音声として最新の機材を使用し、サウンドプログラムして収録しているからであって、当たり前といえば当たり前なのだが…ただ、何故か歌と踊りと音が融合したそのサウンドの迫力においては1961年版を超えてないんだよな。音楽と動きとのシンクロ率も当時の方が高い。
本作は音は音、動きは動きでそれぞれ凄くいいのだが、シンクロ率が低いと言えばいいのか、ただ歌って踊っているだけに見える。良いところと言えば「America」を歌うシーン。1961年版は夜に屋上で歌って踊るんだけど、あれは映画というよりもより舞台感を感じた。スピルバーグ版の方は日中の“街なか”でカラフルな衣装で歌って踊るシーンに変更されていたけど、見応えあって良かった。
「ウエスト・サイド・ストーリー」を知らない人は観てもいいかも
今の若い人に、わざわざ古い方を観た方がいいとまでは言わない。それくらいスピルバーグ版は良くも悪くも前作とキャスティングが変わっただけで映画的に大きな変化がない。だから余計に何故作り直したのか疑問だけが残るんだけど、「ウエスト・サイド・ストーリー」を観たことがなく、“ミュージカル映画の金字塔”と言われるほどの映画に興味のある人は、映像がクリアなスピルバーグ版を観たらいいかなって感じ。
と、いうわけで私はこれを切っ掛けに、1961年版の「ウエスト・サイド・ストーリー」をDVDからBlu-rayに買い直すことに。ポチっとな。
こちらがスティーヴン・スピルバーグ監督による映画「ウエスト・サイド・ストーリー」。悪くはないけど個人的には今回ディスクメディアを買う気なし。音と映像が段違いで良くなっているにしてもこの物語の注目すべきは点そこではないし、ドキュメンタリー映画が観たいわけでもない。
こちらが1961年版の「ウエスト・サイド・ストーリー」。私はこちらをDVDから買い直し。歌と踊り、映像と音(音楽)のシンクロ率が高いこちらの方が断然カッコ良くて好き。アメリカの歴史背景を語るドキュメンタリーではない。ミュージカルというエンターテインメントで魅せる映画なのだ。
新しくなった4K Stick。初期投資を安く、手軽に配信動画を観るならやはりAmazonのFire TV Stickがおすすめ! 自宅にWi-Fiネットワーク環境がない場合や、Stickで安定した動画配信を楽しみたいなら別途イーサーネットアダプタも併せて購入するほうが◎。
(注:※Fire TV CUBEにはイーサネットアダプタが付属)
Apple TV 4Kはスクロールも早く、イントールする様々なアプリもサクサク動きストレスなく楽しめる。ギガビットイーサネット搭載で有線での通信速度は断然速い。新しくなったSiri Remoteで操作性も格段に向上。Face ID搭載のiPhoneがあればテレビのキャリブレーションもできる。配信映画の視聴には、やはりNo.1のデバイス。ちょっと他のデバイスより価格が高いだけのことはある。
Fire TV CUBEはFire TVシリーズでNetflixのドルビーアトモスにも対応した4Kデバイス。アレクサへの呼びかけで音声操作もでき、ヘキサコア搭載で処理能力も向上。イーサネットアダプタも標準で付属する。新設はもちろん、既存のFire TV からのアップグレードに!
この記事へのコメントはありません。