プロジェクターで映画を大画面で楽しむのに必要な暗室。家キネマの第一歩としてプロジェクターを買ったのはいいが、専用シアタールームなんて夢のまた夢なのが多くの家庭事情。自室の6畳間程度でも良いができる限り大きく映したいのが人情であり、家の中で一番大きなスペースが確保できるリビングを何とかしてシアタールーム兼リビングルームとしたいと思う方は多いのではないだろうか。しかしプロジェクターを購入するだけでも金額的にハードルが高いモノでもある上、鑑賞するための暗室作りに更なるハードルが立ちはだかる。リビングを暗室にするために、せっかくリビングに合わせたお気に入りのカーテンを1級遮光の黒いカーテンに代えてしまうなんて家庭によっては家族に大反対されて無理な話だ。もしくはプロジェクターで映画を見る度に毎回カーテンを付け替えるのではプロジェクターで映画を見ることが面倒になり最後は宝の持ち腐れになってしまう。
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お金を掛けた専用シアタールームなんて皆がそうそう出来るものではない
自宅で最初からお金を掛けず手軽に大画面で映画館の雰囲気を楽しみ、お金を貯金しつつ徐々にバージョンアップしてく楽しみを残して置くのは「家キネマ」の楽しみ方でもある。雑誌などでは当たり前の様に「皆やってますよ〜」的に豪華なアンプや高級スピーカーなどと共に専用シアタールームが紹介されている。冗談では無い。お金に余裕があり、注文住宅でマイホームを建てる際に専用シアタールームを持てたり、豪華なシステムを自室に作れる方は一部の人間であり、多くの方は専用シアタールームが出来る程お金に余裕は無いはずだ。・・・うん。お金が無いのは私だけじゃ無い。はず。…多分。
自分なりに合格ラインを決めた暗室
リビングに第1のハードルであるプロジェクターの購入と設置を何とかしても、第2のハードル「暗室」は更に難しい。暗室ができないとリビングの明かりを消しても日中は外光があるのでプロジェクターから映し出された映像が外光でかき消され、うす〜〜くて一体何を見ているのか分からない状態になので夜になってから鑑賞するという使い方になり、休日の日中はプロジェクターでの鑑賞は無理ってことになる。プロジェクターによっては輝度が高く、多少の光があるくらいでも十分鑑賞に耐えうるモノもあるが、プロジェクターの本来持っている100%の色再現性やパフォーマンスは引き出せないと思った方がいい。個人的な主観はあると思うが100%は無理でもせめて自分で決めた合格ラインには持っていきたい。
相対的な黒色
試しにスマホのフラッシュ用ライトで白い壁や紙でもいいので近くで光を当てて見ると、光が当たって反射している所がより「白く」みえるのが理解できると思う。逆に光が当たっていない白い部分は光が当たっている部分よりは暗く、同時に比較するとグレーに見える。部屋の明かりを消して同じ事をすると、更に光の当たっていない所はグレーが濃くなり黒に近づいて見えてくることで「相対的に黒く」見えることが理解できると思う。さらに光にそれぞれ赤、緑、青(RGB)のフィルターを通したり、直接それぞれの色の光源で照射を行う事で光に色が着きそれを連続的に投影する事でカラー映像ができる。これがプロジェクター投影における基本の仕組みだ。なので本当に「黒」を表現したかったら必然的に暗室が必要になる。
暗い部分の認識(錯覚)を分かり易くするため図を作ってみた。2つの四角は同じ濃度(50%)のグレーになっている。周りの明るさが違うだけで2つの四角の濃度が違って見える。例の図は黒を表現できるモニター(テレビと同じ)を通して見るのでプロジェクターのイメージとは違うが、あくまでも相対的な濃度差イメージと見てもらえば良いかと。
何度見ても同じ濃度とは思えない。気持ち悪いな。しかし2つの四角だけを見られるように紙で周りを完全に覆うと同じなのが分かる。不思議だ。
プロジェクターの光の強さ
プロジェクターで”○○ルーメン”または、”○○lm ”と表しているのは光の強さ(明るさ)を数値で表している。先ほど ”相対的に暗い部分を認識する”と述べたのは、光が強いほど完全暗室でなくても「黒と認識」できるので”ルーメン”の数値が高いほど周りの明るさに影響を受けにくい(と、人間の目が錯覚する)とされている。ちなみに我が家のプロジェクターEPSON EH-TW6600はメーカー公表値が2,500ルーメンで明るい方。リビング環境などで鑑賞するには充分な明るさを持っている。ただし、やたらと明るいだけのプロジェクターでは意味が無い。そこにはコントラスト(明暗差)の問題もあり、明るくても本来黒い部分までが明るくなると映像にメリハリのないぼやけた映像になってしまうのだが今回は暗室に関する話なので割愛する。
そもそも何故プロジェクターは暗室が必要なのか
全くプロジェクターというモノを理解できていない方に分かり易く説明すると、プロジェクターは投影機なので光を発してスクリーンや壁に映像を映し出す機器。スクリーンに投影した「反射光」を人が映像として認識する。対してテレビは「直接光」だ。当然「黒」を表現しようとすると光を ”消した” 状態が「黒」となるのだが、そこがテレビとは大きく違う。通常テレビは画面を消した状態は「黒」。対して”白い” スクリーンや壁に映し出すプロジェクターは光を消すとスクリーンや壁の元の色「白」になる。スクリーンの白以上に眩しいくらい強い光で投影すると「相対的」にスクリーンや壁の地の色が暗く見えるのでそれを ”黒い”部分として認識できるようになる。
下の写真は先日紹介した「イエスマン “YES”は人生のパスワード(原題:Yes Man)」のアイキャッチ画像にも使用している一場面をそれぞれ暗幕で室内を暗室化した写真と、室内電気を点けた写真、一部暗幕をずらして外光を入れた写真、日中完全に暗幕を取り払った写真だ。この記事のために同時に検証写真も撮っておいた。
暗幕を取り付けた暗室状態
通常はこの状態で映画を楽しんでいる。全く鑑賞には問題なし。人物背景の暗部が潰れ気味の様に見えるのは写真の問題。実際は潰れずに見えている。色もバッチリで、コントラストもハッキリしている。
暗幕を取り付けて室内灯(ダウンライト)を点灯した状態
写真では結構見えづらく、色も電球色のオレンジ色に転んでいるが実際に見ると脳内補正されて鑑賞には十分耐えられる程度になっている。ただ、厳密にはオリジナルのカラーとは言いがたく、若干コントラストも甘くなっている。
暗幕を一部ずらして外光を入れた状態
写真でいう奥側(左)に窓があるので写真左側の映像の暗い部分が元の壁の白色に近くなり、よりコントラストを失ってきている。実際に見ると意外に鑑賞できる程度。通常のカーテンならこんな感じかも知れない。しかしプロジェクターを使って映画を楽しむには無理がある。周りの物が視界に入り、没入感ゼロ。
日中に暗幕をつけていない状態
スクリーン代わりにしている壁に「何か」が映っている程度。凝視すれば映画内容は入ってくるが、そもそも凝視しなければならい様では映画を見ているとは言わない。夜の暗いシーンの映像など見たらもう何が何だか。もはやただの壁。しかし手前の人物(ブラッドリー・クーパー)のシャツの襟が壁の白より明るく投影されているのが分かる。逆に背景の暗い部分は壁の色とほぼ同化してしまっているので何が映っているのか分からない。
上記の写真を見て頂ければ一目瞭然、暗室である方が良いに決まっている。何とかして暗室を作りたいと思い、私が実践した暗室作りは…、「プロジェクターで映画鑑賞するための暗室作り ─ Vol.2 ─」につづく。
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