私が勝手に「家(ウチ)キネマ」と言っている“ホームシアター”。「ホームシアター」とひと言でいっても実のところは何だろう、とふと考えた。大きなスクリーンにプロジェクターで映像を投影し、視聴者を取り囲むようにスピーカーが配置され、AVアンプを使ってのサラウンドシステム(現在ならドルビーアトモス)により360度から音が鳴る…もっと言えば防音施工された専用ルームで大型スピーカーからの大音量で深夜でも視聴できる環境。正にホームシアターというものに憧れる人にとっても、私にとっても夢のような空間だ。私の環境も今やリビング・シアターながら、そこそこのシステムだと自分では思っている。しかし、下のイメージ画像や、雑誌に掲載される様なあんなカッコイイものではない。でも、それくらいやらないとホームシアターと呼べないと思っている人も現実には多い。
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ホームシアターの定義
実のところホームシアターの“定義”と言うものはない。私個人の考えとしては「映画を楽しめるシステムを家で構築する」がホームシアターだと思っている。なので、その要件を満たすのは人それぞれなのだ。「大きな画面で映像を映し出せなければホームシアターと呼べないか」と言われれば答えは「ノー」だし、「少なくとも5.1chのサラウンドシステムがないとホームシアターと呼べないか」と言われても「ノー」と答える。では「普通のテレビで映画を楽しめれば、それだけでホームシアターと呼べるのか」と問われると答えは微妙に「ノー」となる。要するに映画鑑賞のために少なくとも1つくらいは何か“こだわり”を持って欲しいのだ。
画面サイズにこだわり、プロジェクターを買って大画面で観るものホームシアター。小さなテレビでも音にこだわり、AVアンプを導入してサラウンドシステムを組むのもホームシアター。また、最近ではごく当たり前になったサウンドバーやシアターバーと呼ばれるテレビに接続する外付けのスピーカーシステムを導入するのも、手軽にホームシアターを構築するには良いアイテムだ。室内での音の反射を利用して擬似的に5.1chサラウンドやドルビーアトモスを再生するサウンドバーも登場している。
普通のテレビを買ってきて、部屋を煌々と明るくして映画を見ている分には普段のテレビ視聴と変わらない。テレビ画面に映し出されているのが映画なだけだ。しかし、部屋の電気を消して(目に悪いので輝度は落として)見ると、なんだか映画館で遠くの席から見ているような気持ちになる。ホームシアターの定義がないのなら映画を観るときは映画を楽しむために常に電気を消す“こだわり”こそが、その人にとってはホームシアターと呼べるのではないだろうか。学生の頃、友人の部屋に集まり、テレビ(20インチくらいだった記憶)を付けて電気を消し、近所のレンタルビデオ店で借りてきた映画「ハスラー」(1961年)を皆でコーラとポテトチップスを口にしながら観た時は、テレビからの普通の音でも正に映画館の気分だった。
また、音に関しても同じ様な事が言える。テレビのスピーカーは基本的に抑揚を付けずにゆっくりとマイクに向かってニュース原稿を読む声が明瞭に聞こえることが最低限。でも映画のセリフは演技を含めて喜怒哀楽の感情表現で抑揚をつけて話すのでテレビのスピーカーでは聞こえにくくなることがある。最近のテレビに付いているスピーカーは映画などでも低音がしっかり鳴り、セリフも聴き取りやすくなった“こだわり”のスピーカーを搭載したテレビも登場している。それを踏まえて購入する人にとっては立派なホームシアターの1つと考えても良いのではないだろうか。それが大型テレビなら尚のこと。
現在、部屋も普段通り明るくし、テレビもごく普通で特に外部スピーカーも使っていないノーマル状態では確かにホームシアターと呼ぶには物足りない。そこから1つ何か“映画を鑑賞するためのこだわり”を持てれば、それは「家で映画を楽しむため」に作られたホームシアターだろう。なにも無理して大きなスピーカーを用意する必要もないし、無理してプロジェクターを用意する必要もない。自分のライフスタイルの中で映画を最大限楽しむのはどうすれば良いかをまず第一に考えるのがホームシアターへの一歩目だ。
大画面で迫力の映像を観たい気持ちは分かる。大迫力の音声で映画を観たい気持ちも分かる。画面はプロジェクターでなんとかなっても、実際マンションや集合住宅などで大音量を出せない場合が多い。大きなスピーカーを設置して小さな音しか鳴らせないのなら、そもそも必要ないし投資金額がもったいない。その上セッティングにも苦労する。それなら小さなスピーカーでしっかりとセッティングしたクリアなサウンドを楽しむ方がよほど健全だ。
「ホームシアター = サラウンド」とは限らない
よく「ホームシアター = サラウンド」とする人も多いが、はたしてそうだろうか。間違ってもいないが、敢えて大型スピーカーのステレオ(2ch)音声で映画を楽しんでいる人もいる。ではそれはホームシアターとは呼べないかと言うと立派なホームシアターなのだ。映画の音に“こだわる”から敢えてサラウンドにしていないだけのこと。バランスを考えて大型スピーカーを全方位に設置したいが部屋の事情で設置することができない。でもせっかく良い音が鳴る大型スピーカーは使いたいなど、取捨選択として敢えてサラウンドを捨てる人もいる。しかし、無理矢理組まれたサラウンドスピーカーよりも遥かに迫力のある良い音がする。音声のある昔の映画だってそもそもモノラルやステレオだ。だから必ずしも「ホームシアター = サラウンド」とは限らない。スピーカーの台数に限らず音さえ良くなれば映画を観る楽しみは格段に上がるのは確かだ。
家はそもそも映画館ではないのでその気分を楽しむもの、「家で映画館気分」が味わえればいいのだ。家(=ホーム)で映画館(=シアター)の気分。ここに少し自分なりのこだわりがあればもう胸を張ってホームシアターと言って良いのではなかろうか。個人的だが出来れば音に少しくらいはこだわって欲しいと思うが、これにドップリハマると金銭的に危険なのも確か。
余談だが、映画音声は「ジャズ・シンガー」(1926年:モノラル)から始まり、ステレオをすっ飛ばして「ファンタジア」(1940年:3chのマルチ)、「スター・ウォーズ」(1977年:ドルビーステレオ)でマトリックス4ch方式、「バットマン リターンズ」(1987年:5.1chサラウンド)、「トイ・ストーリー3」(2010年:7.1chサラウンド)と進化というかチャンネル数が増えていく。今や映画館ではドルビーアトモスが当たり前の様に導入されてきた。現在の映画音声を家庭で映画館と近い状態で楽しむにはAVアンプや、スピーカーの複数台設置が必要になってどんどん複雑化してきている。
激しく同意です。 僕は夢だったホームシアターをようやく叶えたばかりですので、日々あれをこうして、ああしてって妄想しております笑
まあ、妻をいかに説得?納得?させるかが一番の難関なんですが笑 これからも記事楽しみにしています!
そうですよね。夢を描いたのちにホームシアター設備のお金ができても妻が…。妻がOKを出してくれてもお金が…。この2つの難関はこれから先も壁として立ち続けます。それを越えて更に充実すればするほど次の壁が高くなるというオマケ付きの試練です。