Apple Musicでは 2021年6月8日より、ロスレスオーディオ、空間オーディオの配信をスタートした。ロスレスオーディオに関して、16ビット/44.1kHzのCD品質から、24ビット/48kHzまではAppleのデバイスでそのまま再生できる。がしかし、最高音質となる24ビット/192kHzのハイレゾリューション・ロスレスが提供されているにも関わらず、iPhoneではそのままでが再生できない。iPhoneに内蔵しているDACが48kHzまでしか対応していないのだ。
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Appleが配信するハイレゾ音源がApple純正品だけでは再生できない
散々ネット上でも騒がれ(叩かれ?)ていたので既にご存知の方も多いだろうが、手軽に音楽が楽しめる再生デバイスにもなっているiPhoneでは自社で提供する48kHz以上のハイレゾ音源は自社製品だけでは再生できず、ハード面とソフト面で足並みが揃っていない状態。
iPhoneでハイレゾを聴くには別途「Lightning – USBカメラアダプタ」を使って他社製品の対応DACを用意するか、直接Lightning接続ができるハイレゾ対応の外部DACが必要になる。半年前程に発売された高価なヘッドホン「AirPods Max」であってもiPhone自体がハイレゾ音源を再生できないので無理。高音質で音楽を聴きたいならオーディオ専用の外部DACを繋ぐなりして、それなりの投資をしろということだろうか、手軽には聴かせてくれない仕組みになっている。
しかもだ…据え置き型デバイスであるApple TV 4Kにさえ対応していないという(最大48kHzまで)…Apple Musicアプリ自体そのほとんどがApple 純正製品でしか使えないので、なんともお粗末な話だ。
音声出力が映像と同じ1つのHDMI出力しかないので出力される音楽データはApple TV 4K自体が対応するまではハイレゾ再生できない。室内で聴くことが前提の据え置き型デバイスであるApple TV 4Kで最高音質のハイレゾが聴けないのは致命的。
素人考えではLPCMなのだから192kHz/24bitはそのまま出力できると思うし、メタデータと一緒に出力するならDolby MATコンテナに収納して吐き出せばいいだけなので特に難しくないと思うのだが…その場合だとApple TV 4Kのみの再生となり、iPhoneなど他のデバイスでは再生できないことになるのか…ダメだな。
「空間オーディオ」とは、ドルビーアトモスのこと?
Apple Musicでハイレゾ再生できなくてもAmazon Music HDがあるからいいとして、聴きたかったのはドルビーアトモス再生。Appleが「空間オーディオ」と言っているのは映画音響界ではすっかりお馴染みになったドルビーアトモスのこと“でも”ある。
昨年までAppleは、AirPodsなどApple製品の対応イヤホンやヘッドホンを使うと内蔵された加速度センサーとジャイロセンサーにより、リスナーの顔の向きを検知して音響空間が固定される音専用のVRのようなイメージで聴こえるApple独自の仮想立体音響技術のことを「空間オーディオ」と言っていた。Apple TV Plusで提供していた映画などでもその技術を活用していたので既に体験している人もいるだろう。
ただ、今年に入りApple Musicでも提供を始めると、ドルビーアトモス音響も空間オーディオとして一括りにして言い出したので、少なくともApple Music上では区別がなくなっている。
Apple Musicのドルビーアトモス再生をApple TV 4Kで聴く
先ほどの説明通り、空間オーディオとはドルビーアトモス再生のことでもあり、サンプリングレートも映画同様48kHzなのでApple TV 4Kでも再生できる。我が家は7.1.4chのドルビーアトモス視聴が可能なので、実際にApple TV 4Kを使って聴いてみた。通常ステレオ再生で聴く音楽をドルビーアトモスで聴くのはどんな感じになるのだろう。(※Apple Musicを聴くには別途契約が必要)
既にドルビーアトモス視聴ができる環境ならApple TV 4K側の設定は特に何もする必要がない。Apple TV 4Kデバイス上のホーム画面から「ミュージック」を選んで、「空間オーディオ」に対応する楽曲を選んで再生するだけだ。
今ならミュージック内のメニューにある「見つける」を選択すると空間オーディオ特集のごとく、空間オーディオに対応した楽曲やポッドキャストが直ぐに見つけられるように構成されている。その中のジャズ、クラシック、ポップス、ロックからランダムに曲を選んで聴いてみた。
部屋全体が音楽空間になり面白いけど、なんだか落ち着かない
実際にドルビーアトモス再生で聴くと前方左右からだけでなく、部屋全体で音楽を聴いている感じにイメージが変わる。聴こえ方が面白い。確かにトップスピーカーを含めた全てのスピーカーが使われて曲が流れる。
メインボーカルやメインの楽器は前方から音が出てくるものの、アルバムによって差はあるが、ボーカルの立っている位置が若干遠くなる曲もある。今までの視聴位置は会場のステージ近くで聴いていたのに、ドルビーアトモスになるとそれよりも後方にいる感じ。しかし、思っていたほど音楽全体がボヤけることはなかった。
曲やアルバムによって収録の仕方が違うのか決まった聴こえ方ではないが、比較的ジャズやクラシックなどを聴くと会場にいるような響きに感じる。以前に購入したBlu-ray「ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ」はドルビーアトモス収録されているので、比較で視聴したがそれと近くなる。
比較的新しいポップスやロックなどのドルビーアトモス再生では特定のコーラスやフレーズ、リフだけがトップスピーカーを含むサラウンドスピーカーを使って鳴ったりするので、収録している曲のトラックごとにスピーカーを割り振っているのだろうか。響きなどだけサラウンドに回して空気感が伝わるようなドルビーアトモス収録と、曲のトラック単位をオブジェクトとして扱ってドルビーアトモス収録されているのとでは、同じドルビーアトモス収録でも全く違って聞こえる。
前者は、その場のライブ会場にいるような聴こえ方で、後者は、リスナーを中心に、ボーカルやメインの楽器が前方に立ち、コーラスとメイン以外の楽器がリスナーを囲むように周りにいる聴こえ方。個人的に後者の方がドルビーアトモスを活かした鳴らし方で面白い。
個人的には「音楽を聴く」という意味では聴き慣れていないので、気持ち的に落ち着かず、やはり今の段階では腰を据えて音楽を聴こうという気にならない。慣れれば落ち着いて聴けるかなぁ。部屋全体を使って音楽を聴いているイメージなので“ながら聴き”にはいい感じ。
映画視聴用にイコライジングしたドルビーアトモスを音楽用に?いや面倒だ
個人的な視聴環境の問題なのだが、ドルビーアトモス再生の設定を我が家では映画視聴に合わせてセッティングしているのでイコライザーがフラットになっていない。16kHz付近の高域や30Hz付近の低域を下げ気味にイコライザーで調整しているので全域がフラットではない状態。音楽再生においてイコライザーで調整を入れるのは個人の好みなので低域を持ち上げている人やボーカルを聴きやすくするために中域を持ち上げている人もいるだろうから一概には言えないが、個人的には音楽を純粋に聴くにはイコライザーはフラットな方が好み。
通常のステレオ再生ならリモコンのピュア再生ボタン1つでイコライザーがフラットになるが、ドルビーアトモス再生の状態でピュア再生ボタンを押すとイコライザーがフラットになると同時にステレオ再生になってしまう。ドルビーアトモス再生のままイコライザーをフラット設定にするのは少々面倒。なのでライブ音源など、会場に響く他の周辺の音も含めて楽しむにはいいが、音楽を純粋に聴くには我が家の場合は少々難アリになる。もちろん聴けないこともないが、部屋全体で鳴るのでどの曲を聴いても映画視聴時のサウンドトラックを映像なしで聴いているイメージになる。なんか違和感。
また、音楽をドルビーアトモスで聴くということはサラウンド用に設置したスピーカーでも音楽を聴くことになる。フロント2ch分は音楽を聴くことも想定して用意したスピーカーだが、サラウンドスピーカーに関しては設置性を優先して音質に関しては二の次。ドルビーアトモス再生ではここからも音を聴くことになるので、音楽があまり心地の良い音で鳴らない。結局はステレオ再生が1番良い音で聴けることになる。
Apple TV 4Kのミュージックアプリが落ちる
紹介ビデオやミュージックビデオなどがミュージックアプリ内からも観られるのだが、再生するとアプリが落ちることがある。通常の音楽再生ではまだ落ちたことはない。今までApple TV 4Kを使っていて他のアプリを含め、落ちたことはなかったので初めは自分でホームボタンを間違えて押したのかと思ったが、リモコンのボタンを確認して押してもアプリが落ちたので間違いない。
これからはドルビーアトモス収録が音楽再生のスタンダードになるか
Appleはドルビーアトモスを音楽再生に採用し、映画音響で多く採用され世界中に浸透してきた既存の音響システムを利用して「空間オーディオ」と銘打って音楽配信に差別化を狙っている。SONYは「360 Reality Audio」という新たな立体音響を打ち出しているが、対応デバイスや対応音楽の少なさで不利な状況になるのは目に見えている。音楽再生に有利と言われていたAuro-3Dもいよいよ危うくなってきた。やはり、こういうフォーマット争いはいかにソフトを充実させるかなのだよね。
ただ…、確かにドルビーアトモスを使った音楽再生で今まで聴いていた曲が違う雰囲気で聴けるのは面白いと思う。だから、音楽再生がモノラルからステレオに変わった時と同じようにドルビーアトモス再生対応が増えると、これからの音楽再生のスタンダードに……は、ならない気がする。据え置き型主体で誰もが手軽にドルビーアトモス視聴環境にできるなら、あり得るかもしれないがトップスピーカーの設置はハードルが高すぎる。
Appleの「空間オーディオ」に対応させるために他メーカーからも続々と加速度センサー、ジャイロセンサーを搭載したイヤホンやヘッドホンを出すとも思えない。ドルビーアトモス再生もイヤホンやヘッドホンではあくまでもバーチャル再生になり、物理的に音の出方は全く違うので、これがどこまで浸透するのだろう。音楽にとことんこだわる人はステレオ収録1発取りも好きだから余計にドルビーアトモスが音楽再生のスタンダードにはなりにくい。個人的には聴くときの気分次第でドルビーアトモス再生“にも”対応している音楽は面白いからこれからも増やして欲しいけどね。
ハイレゾ音楽を聴くなら、Amazon Music Unlimitedが2021年6月22日まで4ヶ月無料試聴できるキャンペーンを実施している。そのままAmazon Music HDも聴くことができるのでハイレゾ音楽を試すなら今がチャンス!(※Fire TVに対応。Apple TV 4Kでは再生できないので注意)
Amazon Music HD
安くなっているからといって中古でも第1世代を買うと多分リモコンに不満を感じて、結局は私のようにリモコンだけを追加購入することになるかもしれない。ならば、最初から第2世代を購入した方が安く済む。
私もApple Music DolbyAtmosをApple TV 4KとAVアンプを導入して聴きたいと思っていますが、音に包まれたいなどとは全く思っておらず、各チャンネルの音声を個別に聴きたいと思っています。マルチトラックレコーダーを用いて…。
当方、邦楽には全く興味が無く、近年の洋楽もつまらない中、K-POPのDolbyAtmosは本当に面白い…レベルの高さが素晴らしく、勉強になる事ばかりです。
これから作曲やアレンジを学びたい人には是非取り入れてもらいたいシステムですね。
なるほど!詳しくご説明いただき、なんとなくですが想像がつきます。アンプの拡張音場とどうちがうのか、それはそれで聴いてみたいですね!
テレビの件、承知いたしました。
こんにちはー!
まだ体感してないので何とも言えないのですが、ヤマハのDSP HD³ 3次元サラウンドに似た感じですかね?ライブBDの2ch音源を5.1.4chで視聴するとめちゃ臨場感があって好きです。ボーカル音は全面から、拍手や歓声は部屋全体からの聴こえるあの感じが。シネマDSPにミュンヘンというモードがあるんですがこのボーカル音の響きがアリーナ会場そのままでお気に入りです。まぁ2ch専門の方からみれば、そんなの邪道!って言われるかもしれませんが・・・。Amazonミュージックはアンプが対応していますので、無料期間を利用して私も聴いてみます。
あっ、テレビX920からX9400に替えて来週納品です。同じ65サイズなのでテンションは今ひとつですが、今度はHDR全て対応なのでUHDBDは何が来てもお好みで観れるの為ストレスフリーになりました(笑
こんばんは!
もみじさんが仰っているDSP HD3はヤマハのアンプにあるエフェクターの一種ですよね。私は個人的にそれらのエフェクト類は好みによりアリだと思っています。実際にコンサートやライブのPA現場でもディレイやエコーの調整は普通に使っていることですし、それを普通に皆が熱狂して聴いています。それなのに何故か家庭用になると、途端にピュアオーディオにこだわる人やオーディオ評論家が「ピュア」を前面に押し出すので「エフェクターは邪道」だという風潮が出てきましたよね。不思議です。
今回、私がブログに書いたApple Musicのドルビーアトモス楽曲はそれとはまた聴こえ方が全く違うものです。響きだけや拍手だけがサラウンドになっているものもありますが、楽曲やアルバムによっては完全に楽器やコーラスなどパートごとに出力されるスピーカーが分離しているものもあります。これが、一聴してステレオでは聴くことができない不思議な感じで面白かったです。個人的にはちょっと落ち着かなかったですが、これはこれで音楽の新しい鳴らし方としてアリだと思います。
新しいテレビ、羨ましいです。感想はまた改めてお聞かせください!