前回に引き続き、BenQ HT3550とBenQ W1070+の同社機種比較。今回は誰もが一番気になるであろう映像に関する比較をしていく。W1070+はFull HDプロジェクターとして十分キレのいい映像美を映し出してくれる。同じFull HDでも私が所有するEPSON WH-TW6600の液晶パネルと違いDLPなので色滲みもなく全体的にシャープな印象があり、好印象に見える。ただし、それはHT3550を見るまでの話で同時比較するとやはり印象が違って見える。
前回までの比較は下記関連記事で。
HT3550とW1070+の映像比較
比較映像として、今回は4K UHD版「ジャスティス・リーグ」と「カーズ/クロスロード」をチョイスした。「カーズ/クロスロード」は3D版もあり、カラフルなクルマたちが一度にたくさん登場し、トレーニングで暗闇を走ったりするシーンもあるのでプロジェクターによって色の違いや暗部の階調がどのように表現されているかも確認することができる。カラフルで明るいシーンから、逆光、暗いシーン、闇の中でのヘッドライトの光、この映画一本で結構プロジェクターでチェックしておきたいシーンが登場することに今更気づいた作品。
ピクチャーモードは共にプリセットされているChinemaモードに設定。以前、EPSON EH-TW6600の比較と同様に同時出力して画面を半分(レンズを半分ずつ隠す)にしてiPhoneカメラの一発撮り。なので画面中央付近(境目)が暗くなっているのはご容赦頂きたい。
実際に見るとHT3550の方がW1070+よりも一見してコントラストが向上しているのが分かるので、この時点で既に映像の立体感が違って見える。フェアではないかもしれないが、4K UHD[HDR]での映像となるとさらに印象が違ってくる。残念ながらスプリッターがHDRとの同時出力ができない仕様なのだがSDR変換されて映し出されたW1070+の映像を観た後で直後にHT3550のHDR映像を観ると、さすがに解像度から色域も違うので誰が見ても違いは分かるだろう。単体でそれぞれ鑑賞すると色に関するチューニングがW1070+とHT3550は同社製品なので傾向として同じように感じるのだが、いずれにしてもDCI-P3を95%カバーし、Rec.709は100%カバーしているHT3550にはやはり色の表現力として到底及ばない。カラーレンジ及び、ダイナミックレンジがまるで違い、HT3550を観てから直後にW1070+で映画を見始めると「あれ?なんか色が薄くて暗い?」と思ってしまう。
HT3550とW1070+を同時出力をして撮影したものが下に掲載の画像。尚、iPhoneのカメラで適当に撮影しているのでHT3550と同時撮影するとiPhoneのシャッタースピード(コントロール出来ない)によってはW1070+の映像だけカラーホイールの回転スピードと偶然合っているのか、画像で部分的にうっすらとマゼンタ系に転んでいるのがその影響。こういうのは面倒だがやはり一眼レフカメラできちんと撮る必要があるなと実感した。
画面に向かって左半分がBenQ HT3550、右がW1070+のそれぞれ映し出した映像。
写真ではW1070+の映像にカラーノイズが乗ってしまい、結果的に少し分かりづらくなってしまったが同社製品で同じピクチャーモードだと、色味は同じ傾向になっている。しかし表現できるカラーレンジが違うだけにHT3550の方が色がよく伸びるのでその分鮮やかに見え、暗部の階調表現もいい。W1070+は HT3550と比較すればコントラストが若干甘く、白の輝度が下がるとイエロー系に転ぶ傾向にあるのでEPSON EH-TW6600同様に映像全体が黄ばんだ色に見える場合がある。そのため、厳密に見れば赤色が若干オレンジがかって見えたり、ブルーがシアン系に見えたりするなど、イエローをベースとした色乗りに感じる場合がある。
HT3550とW1070+との映像の差
W1070+はFull HD表示ながらフォーカスがよく、シャープな印象なので一見よさそうに見えるのだが、よく見るとやはりエッジが粗く、解像度上仕方ないのだが映像がシャープな分、静止画ならジャギーも見えてしまう。一方のHT3550はさすがにW1070+ほどカリカリのシャープな印象はないが、よくまとまっておりANSIコントラストの高さと発色がいいだけに映像全体がぐっと締まって見える。
特に「こんなに違うのか」と驚いたのがW1070+からHT3550の暗部階調の向上ぶり。W1070+では比較的暗部の階調がDLPプロジェクター特有のディザ処理(ディザリング)されザラザラとしたノイズが乗り、静止画にしてもノイズが常にワラワラと動いている状態なのだがHT3550ではそれを全く感じさせない。HT3550は暗部の階調表現がはうまく表現できており、元々ドットピッチが細かいせいか投影面に顔を近づけて見て、なんとか確認できるくらいだ。
W1070+では0.65インチ(ミラーピッチ:7.56μミリ)のDMDデバイスを使用しているためかミラー同士の隙間が投影面に近寄って見ると結構しっかり見える。より多くの光を反射することができる0.65インチならではの映像の明るさと、フォーカスもよくカリッとしたシャープな印象なだけに、尚更ミラーの隙間が目立つようになってしまっているが、私が視聴している普段の位置からだと投影画面まで約3メートルほどで映像サイズがシネスコ(2.35:1)の120インチ程なので、ミラー同士の隙間は全く見えない。静止画状態で小さい文字などを見ると解像度の低さからジャギーが目立ったりするが、それにしても0.65インチDMDデバイスのシャープな印象は素晴らしい。
HT3550の4K UHD表示ではさすがに近くに寄ればうっすらと確認できる程度で、静止画であっても視聴位置からは私の視力(1.2)ではジャギーは全く見えない。採用されているDMDデバイスが0.47インチと小さくなっているので、ミラーのサイズはもちろんのこと、ミラーピッチも5.4μミリと狭くなっているせいもあるのだろう。その分、同サイズに拡大した場合、W1070+と比較すればシャープな印象が薄いのも事実。しかしそれは顔を投影面に近づけて確認した場合はであって、だからといってHT3550から投影される映像全体が甘いわけではないので、全く気にならないレベルだ。
3D映像について
両機ともDLPなので3Dは良好だ。フリッカー(ちらつき)やクロストークも確認出来ない。W1070+の方は公式ANSIルーメンが2200と高く、3Dでも全体的に明るい映像ならその性能が発揮されるが暗いシーンは若干潰れ気味になる。やはり比較してANSIコントラストの高いHT3550の方が3Dでも全体的に見通しが良く結果的に明るく見える場合がある。また、W1070+もHT3550と同様に3Dモードにすると赤色系に色が転ぶが、3Dメガネを通せば3Dメガネのグラスの色と相殺されて普通に見ることができる。色に関して言えばやはりHT3550の3D表示の方が色域Rec.709をベースにしていることもあり、そのままでも十分で鑑賞に問題はない。こだわるなら使用している3Dメガネと視聴環境に合わせてもう少し自分なりに追い込んでみてもいいのかもしれない。
本体でVストレッチができるW1070+
これはマニアックな機能だが、W1070+は本体設定でアナモフィックレンズが使用出来るVストレッチ機能を持っている([メニュー]→[ディスプレイ]→[縦横比]で「レターボックス」を選択すればOK)。3D視聴でもストレッチは機能するので普段アナモフィックレンズを通してシネスコ映像を楽しんでいる人にとってはうれしい機能だろう。HT3550は残念ながらVストレッチ機能を持っていない。私の場合はプレーヤー側(OPPO UDP-203)でVストレッチをかけているためプロジェクター本体がストレッチ機能を持っていなくても特に問題にはならないが「ほしい」と思っている人はごく少数派ながらいるのではないだろうか。
ただし、プロジェクター側でVストレッチをかけると字幕も一緒にストレッチされてしまい、字幕の位置によっては画面外に追い出される場合がある。その際はプレーヤー側で字幕位置を調整できる機能が必要になる。
© 2018 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved. TM & © DC Comics / ©Disney
W1070+とHT3550の同社比較してみて
DLPプロジェクターの表現が好みで、W1070+のFull HDから4K UHDへのステップアップとしての乗り換え機種としてはHT3550は最適な機種とも言える。BenQ W1070+もこうして比較すると設置性や騒音レベル、キレのいい映像など素晴らしいコストパフォーマンスをもつプロジェクターだと分かる。だがしかし、どう頑張ってもFull HD以上は映せない。HT3550の4K UHD[HDR]で映画を視聴すると、その精細さや色域の広さなどW1070+を遙かに凌駕した目の前の感動がある。
〈BenQホームページ(日本サイト)〉 http://www.benq.co.jp/
以前から拝見させております。細かいところや家庭での実用性の面まで折り込んだレビューはなかなか無いので感謝しております。
私もホームシアターを簡単ですが組んでおりプロジェクターはエプソンEH-TW5200を使用しています。今後買い換えたいと思い
HT3550にほぼ決めてます。しかしこちらの記事でも仰っられたレンズ収差など気になる点がありので迷っています。もし仮にbenqから借りれるのでしたら上位機のHT5550のレビューもお願いしたいです
はむちぃずさん
こんにちは。
ブログをご覧ただいている上に、レビューに関するうれしいお言葉までいただき、こちらこそありがとうございます。
私も、EPSHON EH-TW6600を使っていたのでEPSONの良さもわかりますが、元々DLPの映像が好きな私にとってはこの度のBenQさんからのオファーはうれしい限りでした。
しかし、ただ単純に喜んでブログのレビューを提灯記事のように良いことばかり書いても実用的に考えてこのブログをご覧頂いている方にとってはタダの広告ブログになってしまいますし、けっして安くはない機器の購入を本気で検討しているユーザーにはそんな記事は1つもメリットがありませんよね。
そのプロジェクターの良いところも悪いところも知った上、自分にとって妥協範囲内かどうかでユーザーが選択するべきだと私は思っています。
BenQさんが期待する記事になっていたかどうかは分かりませんが、BenQさんから「正直にお願いします」というお言葉を頂いておりましたので正に「生」の声ということであんなレビュー記事になってしまいました。
さて、前置きが長くなってしまいましたが…、HT5550をBenQさんに対して私の方から貸し出しを打診するのは難しいかもしれません。
記事にも書いております通り、私はBenQアンバサダープログラムにも加入しておりませんので仕組みはよく分かりませんが、他にも全国に「ブログやSNSで広告するから貸してほしい」というアンバサダーの皆さんが多くいらっしゃるはずです。
恐らくHT5550はハイエンド機に近いハイミドルな機種なので既に期待が高く、人気のあるHT5550はアンバサダーの皆さんに優先されると思います。
貸し出しの機種は使い回しらしく、数台しかないようですので貸し出せる台数はかなり少ないはずですのでアンバサダーでもない私の打診で優先的に貸し出されることはないと思います。
その場合は、HT3550の時と同じようにBenQさんのほうから検証して記事にしてくれとオファーがあるように思いますので期待「薄」ですが、HT5550はそれを期待して待つしかありません。
HT3550のレンズ収差は視聴距離によって気になったり気にならなかったりです。
投影面の外周(下部を除く、上部左右)に行くと顕著になるのでほぼ中心辺りや字幕辺りを見ることがメインになる映画鑑賞用途ではほぼ気になることがありませんが、星の様に小さく白い点が外周部で表示されるのをわざわざ注目すると気になるかもしれません、という程度です。
例えるなら現在ご使用になっているEH-TW5200の映像で宇宙空間の星々など白い点を表示させると3LCDによる僅かな色ズレ(アライメントで調整可能なのですが合わせきれないもどかしさがあるヤツです)が発生していると思いますが、それとよく似ています。
今までEH-TW5200で映画を鑑賞していてそれが特に気になっていなかったら多分問題無いレベルです。
と…いうのが私の個人的な意見ですがこればかりは個人の価値観なので、「大丈夫ですよ」とHT3550をオススメすることはできません。
DLPは物理的に色ズレが起きないデバイスな分、レンズによる色収差が非常にもったいないと思ってしまいますが良いレンズを採用するとそれこそこの価格では出せないというのもあると思います。
HT3550はエントリーモデルの中では色再現など優秀な部分が多くある機種だと思いますが、やはりあくまでも映画用DLPプロジェクターの4K UHD エントリーモデルの域です。
レンズによる色収差に関しては同レンズで同レンズ構成をHT5550が採用していたら同じだと思います。
早速返信ありがとうございます!
貴ブログに関してはコントラスト比の記事などとても参考になりました。メーカーのスペックなどが理論値だろうし実際の環境では様々な影響を受ける事は予想してましたが実際に数値を出してる方は知る限り居ないのでとても良かったです。
HT5550はオールガラスレンズを用いており3550とは異なるものなので少し期待したいところですが借りるのは難しそうですね…
ご対応ありがとうございました!