オデッセイ,ホームシアター,映画,感想

オデッセイ(原題:The Martian)

2015年にマット・デイモン(Matt Damon)主演、著者アンディ・ウィアー(Andy Weir)の小説「火星の人(原題:The Martian)」を原作としたリドリー・スコット(Sir Ridley Scott)監督のSF映画。もともと原作者のアンディ・ウィアーが自身のウェブサイトで「火星の人」を連載していたが、それが小説化され映画となった。マット・デイモン扮するマーク・ワトニーが火星に一人取り残されて生き延びるために奮闘する様子を描いた映画。SF映画だが、ドラマ的で派手なアクションもなさそうなので「家キネマ」で見ようと。それからはBlu-rayリリースを待つ間、本作に関する情報を一切シャットアウト。昨年入手し「家キネマ」で鑑賞。言わずもがな3D版。

Blu-ray仕様:本編142分、2.4:1 
英語:7.1ch DTS-HD Master Audio、日本語:5.1ch DTS
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リリース直後の3D版は何故かAmazonでスチールブック仕様版でしか販売されておらず、特にスチールブック仕様が欲しかったわけでは無かったが他に選択肢が無かったので購入。後に4K UHD版が3Dを同梱している。多くの映画ソフトと同様、いずれにしても3D版のみのリリースはない。3D版Blu-rayがあればプロジェクター側で2Dに切り替えられるのでBlu-ray2D版要らないのだが抱き合わせの様に付いてくる。

「オデッセイ」あらすじ

人類による有人火星探査ミッション<アレス3>が、荒れ狂う嵐によって中止に追い込まれた。ミッションに参加した6人のクルーは撤収を余儀なくされるが、そのひとりであるマーク・ワトニーは暴風に吹き飛ばされ、死亡したと判断される。しかしワトニーは奇跡的に生きていた。独りぼっちで火星に取り残され、地球との交信手段もなく、次にNASAが有人機を送り込んでくるのは4年後。サバイバルに不可欠な食糧も酸素も水も絶対的に足りない。そのあまりにも過酷な現実を直視しながらも、ワトニーは決して生き延びることを諦めなかった。やがてワトニーの生存を知って衝撃を受けたNASAや同僚のクルーは、地球上のすべての人々が固唾をのんで見守るなか、わずかな可能性を信じて前代未聞の救出プランを実行するのだった……。

20世紀FOX「オデッセイ」公式サイトより引用。 © 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

マーク・ワトニーが吹き飛ばされて死亡したと判断され、取り残されてからがメインの話になる。救出まで「火星で如何にして生き延びるか」最大の課題でこの映画の主軸になるのだが、科学的な話はどうしても細かい事が端折られるので、映画で良くある「そういうモン」として受け取って見るしか無い。そういった意味からも、リアルな宇宙科学を描いているので「宇宙好き・惑星好き」は見るであろう映画なのだが、皮肉なことに宇宙科学に詳しくない方が見ていて素直に受け止められ面白いかも知れない。

科学的でリアルな描写だからこそ大いに盛り上がる

宇宙や惑星での映画はリアルにすればするほど、ネットではそれらに詳しい方が矛盾点を指摘して知識の「マウンティング」をしながら盛大に盛り上がり楽しんでいる。読むと大変興味深く「空想科学読本」的で面白い。原作は結構詳しく描かれているので映画上の疑問点や矛盾に見える部分は大体解消できるが、それが映画では僅か142分。やはり無理があるようで随分端折られている。確かに科学的なことをリアルに描写しようとすると数式やら説明やらで、映画と言うより「ナショナル ジオグラフィック」や「ディスカバリー チャンネル」のような番組になってしまい、映画として面白さがなくなる。私は映画に対して「少々細かい描写を端折っても大筋が面白ければ問題無い」と、言いつつ細かい所を ”ツッコミ” ながら楽しんでいる。映画を見終わった後にアレは何故?など疑問が湧けば後でネットででも参考文献ででも調べればいいと思っている。

火星の大気圧での嵐

そんな中、本作は原作時点から最大のミスを犯しているらしい。あらすじにも書いてある通り、本作は有人火星探査ミッション「アレス3」の話。それまでに「アレス1」、「アレス2」が在ったわけで、そのミッションの成功は小説の冒頭にも書かれている。次のNASAの有人機を送り込んでくるのが4年後という事を考えても、それまでは機械設備を吹き飛ばし撤収を余儀なくされる程の砂嵐が無かったのかと言うのは私も思った。しかし問題はここからで、暴風といえど地球の大気圧の約1/100の火星。気圧が地球に比べ極端に低いので、そこまでの暴風が吹くとは考えにくいというもの。では、あのマーク・ワトニーが暴風に吹き飛ばされ、さらに死亡したと判断される程の暴風はなんだったのか。現時点で解明されている火星ではあり得ない暴風が吹いたことになる。NASAのWEBサイトのコンテンツ「Journey to Mars」でも本作の件に触れてこう書かれている。

“Every year there are some moderately big dust storms that pop up on Mars and they cover continent-sized areas and last for weeks at a time,” said Michael Smith, a planetary scientist at NASA’s Goddard Space Flight Center in Greenbelt, Maryland.
Beyond Mars’ large annual storms are massive storms that occur more rarely but are much larger and more intense.
“Once every three Mars years (about 5 ½ Earth years), on average, normal storms grow into planet-encircling dust storms, and we usually call those ‘global dust storms’ to distinguish them,” Smith said.
It is unlikely that even these dust storms could strand an astronaut on Mars, however. Even the wind in the largest dust storms likely could not tip or rip apart major mechanical equipment. The winds in the strongest Martian storms top out at about 60 miles per hour, less than half the speed of some hurricane-force winds on Earth.
Focusing on wind speed may be a little misleading, as well. The atmosphere on Mars is about 1 percent as dense as Earth’s atmosphere. That means to fly a kite on Mars, the wind would need to blow much faster than on Earth to get the kite in the air.

NASA オフィシャルサイトより一部引用

上記を要約すると…、マサチューセッツ州にあるNASAの惑星科学者であるマイケル・スミス氏は、まれにしか発生しないが火星をはるかに超える大規模な嵐が発生していると語っている。「火星が3年に一度(地球で言うと、約5年半)になると、通常の嵐は惑星を覆ってしまう程の塵の嵐に成長する。それを私たちは ”Global dust storms(直訳すると「包括的塵の嵐」)” と呼んでいる」とも。しかし、これらの嵐でさえ恐らく機械設備を吹き飛ばすことはできない。最も強い火星の嵐の風は、時速約60マイルで、地球上のいくつかのハリケーンの半分以下の強風だ。
…という内容が書かれている。時速60マイルはキロで換算すると時速約96キロ程、風速で言えば約26メートル程となり重力1/3の火星では物を吹き飛ばすのには十分強い風と思うが、これを読むと重力が1/3とはいえ機械設備を吹き飛ばすほどの風では無いという事か。リアルな描写だけにこう言われると非常に残念なミスに思うが、これを正すともうこの映画の根底から成り立たなくなる。映画で話をリアルにすればするほど、こう言う事が書かれるようになる。でもこれが映画なのだと思う。そもそも火星への有人飛行すら実現できていないのに、話が「もし火星に降り立つ事ができたら現実にありそう…」なリアルな題材と内容だからこそ、こうした話で盛り上がるのだろう。きっと何らかの原因で火星観測史上最大の暴風が吹いたのだよ。

劇中の音楽で遊んでいる

小説は映像浮かんでも音は無いが映画には映像は勿論のこと、更に音がある。この「オデッセイ」では、音楽でかなり遊んでいる。劇中でマーク・ワトニーがリーダーのメリッサ・ルイス(ジェシカ・チャステイン / Jessica Chastain)が持っていた1970年代のディスコミュージックをかけるのだが、それがそのまま映画のBGMになっていたりもする。その曲のセレクトが劇中の状況とほぼリンクさせているので曲の意味や歌詞を調べると面白い。例を挙げるとまず状況を説明しなければならずネタバレになる可能性があるので避けるが、改めて本作を見る方は是非とも曲を調べて映画を見て欲しい。曲が分からない方はスマホ片手に映画を見ながら無料アプリの「SoundHound midomi」や「Shazam」などを利用すれば判明できるかもしれない。そんなことが出来るのも周りに迷惑を掛けない「家キネマ」ならでは。

Blu-rayスチールブック仕様のオマケ

この3D版Blu-rayのスチールブック仕様にはオマケのポストカードが付いていた。宇宙飛行士を題材とした漫画「宇宙兄弟」の主人公ムッタ(南波 六太)が、本作に合わせてそれっぽく描かれたポストカード。現在も漫画雑誌「モーニング」で続いているこの漫画が好きで、雑誌「モーニング」は読んでいないが、コミックを買い続けているので、「おお!とうとうムッタは火星に行ったのか!」と漫画の進展とは関係なく、勝手に想像して勝手に喜んだ。

 


オデッセイ(字幕版)
Amazonプライムビデオで見られます ▶





宇宙兄弟(31) (モーニング KC)

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