ヘッドマウントディスプレイ,ホームシアター

SONY HMZ-T2ヘッドマウントディスプレイでパーソナルな3D空間

今回は“中途半端に懐かしい”ガジェットのお話。パーソナルな3D空間と言えば今やVRが当たり前のこの時代に5〜6年程前の話になるが当時、我が家にはテレビも3D表示機能がなくプロジェクターもEPSON EMP-TW700で我が家にはひとつも3D表示に対応した機器がない時のこと。AV関連市場では3Dが盛り上がっていたが、3D対応のプロジェクターやテレビに買い替える余裕はなく(余裕に関しては今もそうだが)、ただ家電量販店に行っては展示されている3D対応テレビとスタンドに固定された3Dメガネをのぞき込みデモンストレーション映像を観て面白がっていた。

パーソナルな3D空間を実現したSONY HMZ-Tシリーズ

展示しているデモンストレーションの映像なんて何度か観ると繰り返しで飽きる。当時から3D対応テレビや3D対応プロジェクターで映画を観てみたいと思ったがやはり3D対応テレビとなると当時は付加価値としてかなり高価だった。プロジェクターなんて更に高価な商品なので初めから諦めていたところ、SONYのコーナーにヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1(初代)」がデモ展示してあった。

それから後の「HMZ-T2」が発売されHMZ-T1ではヘッドホンが元から固定式で付いていたものから、HMZ-T2からステレオミニピンジャックに変わり自分で好きなヘッドホンやイヤホンに変更することが可能になったのを期に、発売後すぐではなかったが3D映画を観たくて購入した。当時の販売価格で5万円代だったがテレビやプロジェクターなどに比べれば1/4〜1/5以下の価格。それに貯まっていた家電量販店のポイントを使い4万円を切る価格で購入したと思う。最終HMZ-T3までが発売され同時にHMZ-T3Wというワイヤレスにも対応したモデルも出たが現在は生産を終了している。現在中古市場では3万円代〜で購入することができる。

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クロストークの全く無い3D映像と巨大なスクリーン(ディスプレイ)

映像は0.7型のHD(1280×720)有機ELパネルで映し出される鮮明でキレイな映像と、両目で左右それぞれの映像を同時に見ることでクロストークが全く無く、明るさも犠牲にならない3D映像。のぞき込むことにより他の視界と光が遮られ映画館の中央〜後方付近から巨大スクリーンを観ているような感覚(錯覚)になる。SONY公式では「750型相当」といっているが750型と言われても感覚的に今ひとつピンとこないが、ぼんやりと映画館中心辺りからスクリーン全体を視野に入れて鑑賞しているとイメージすればそれ相当に大きくは感じる。しかし、映像ではなく画像パネルに集中するとやはりドットが見える。ドットが見えると途端に画面が小さく感じる不思議な感覚だ。

同時に3D Blu-ray映画を購入したのが当時発売されたばかりの「アベンジャーズ(3D版)」だったと記憶している。本当は「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」の3D版が観たかったのだが、当時2D版と3D版の発売時期がずれていて早く観たいために2D版を購入してしまった経緯がある。

5.1chバーチャルサラウンドに対応

サウンドに関しては本機にステレオ・ミニピンジャックがついている。附属でイヤホン(SONY MDR-EX300相当。但し、ケーブルは本機用に極端に短くなっている)も付いているが、普段使っているヘッドホンやイヤホンを接続して好みのサウンドで映画を観るのもいい。ステレオ・ミニピンジャックなので当然ステレオ音声なのだが、本機HMZ-T2にはバーチャルサラウンド・システムが組み込まれている。いわゆる“なんちゃって5.1chサラウンド”が楽しめるのだが過度の期待は禁物。私の場合以前に別機器の「JVC SU-DH1」でも試しているので初めから期待していなかったが「やはり」と言った感じ。どうしても音が頭内定位(頭の中で音や声が聞こえる)になる。

普段からテレビ音声や映画音声をヘッドホンなどで聴き慣れている人はとくに違和感はないと思うが、私は頭内定位の違和感が特に映画を観るときは気になる。音楽だけ聴くのはウォークマン時代からなので流石に慣れてはいるが、それでもなるべく頭内定位では聴きたくはない。ましてや、映画やテレビは映像は目の前にあるのに音は頭の中から聞こえるあの違和感は拭えない。

私がHMZ-T2を使用する場合は映像だけ本機を使い、音はAVアンプから直接スピーカーを使ってリアルサラウンドにしていた。だから映画を観ると映像はパーソナルでも音だけパーソナルじゃない状態になる。そんな状態でベッドシーンなんか流れた時には声だけが…。非常に誤解を招く惨事となる。

装着すれば近未来感を醸し出すガジェット

とにかく自宅で3D映画を観ることは叶ったものの、パーソナルで観ることしか出来ない3D映画を文字通り一人でリビングで観ながら「おぉお!」と歓声をあげるのは傍(はた)から見ると異様な光景。しかもヘッドマウントディスプレイを装着するだけで途端にずいぶんと未来的でサイバーな出で立ちになる。電源を入れるとゴーグルの先端がブルーに光るので余計にそう見える。

カタログなどでは綺麗な外国人がモデルになり装着しているのでSF映画の世界のようだが、バリバリに日本人の私が装着するとなんだがアホっぽい。実際に装着している姿を自分で見ることはないが、妻に傍から見た状態の写真を撮られ見せられると思わず苦笑いした。しかも真正面撮り…全く気づかなかった。

SONY HMZ-T2を使わなくなった理由

しばらく3D映像が新鮮なこともあり楽しんで使っていたが、3D対応プロジェクター買い替えた後は全く使わなくなってしまった。プロジェクターで3D映画を鑑賞できるようになったのは大きな理由ではあるが、リビングなので思うときに観られないときもある。そんな時はこのHMZ-T2を使えばいいと思うのだがやはり使うにあたって腰が重く、プロジェクターで観られるようになるまでタイミングを待ってしまう。

今回改めてヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」を使わなくなったその理由を考察してみた。

装着感の悪さ

軽量化を図り軽くなってはいるものの、額(ひたい)に当てるパッドと後頭部の二股に分かれたベルトだけのほぼ3点で支える。これが頭部にジャストフィットするまでなかなか安定しない。しかも、装着感は決まってしまえば初め悪くなくても2時間映画を見終わる頃にはやはり重心が前方にあるので、おでこにクッキリと赤くパッドの跡が残るほど負荷が掛かる。ヘッドマウントディスプレイ自体は330gと片手で持つ分には軽いが長時間装着するとなると帽子などに比べ格段に重いので、それがおでこのパッド跡につながる。

またゴーグルの上下にシリコンゴム製の脱着式遮光シールド(ライト・シールド)を装着するのだが、これが意外とすぐに外れてしまう(特に下側)。装着時も邪魔くさい。しかもシリコンゴム製は時間が経つとホコリなどを吸着してしまい水洗いをしないと取り除けない(だから脱着式なのだろう)。顔に密着するので清潔にしておきたいが、いちいち洗うのも面倒だ。結果使わなくなったが、こんどは目の下から光が差し込み没入感が失われることになった。最終機種であるHMZ-T3では装着感が大幅に改善されているようだった。

装着に関する事でいうと、他にも映画を観ながら飲み物は飲めない。ライト・シールドを着けると視界を完全にゴーグルに奪われてしまうのでテーブルに置いた飲み物は何処にあるのか分からなくなる。手探りで探すと飲み物をひっくり返してしまう。しかも運良く掴めたとしても飲む時にゴーグルに容器が当たって飲めないのでストローが必需品になる。視界が遮断される理由でリモコンも使えない。再生機器が対応していればHDMI制御機能を使い本機のボタンを使って操作もできるようだが私の場合はできなかった。とにかく観ながら何かを取ろうとすると「メガネ…メガネ…」の動きになる。

ピンポイントのレンズ視界と目の疲れ

本機は鼻骨ではなく額で支えるので本体レンズと目が接することはない。そのため眼鏡を掛けたままでも一応装着できる。双眼鏡の様に2つの拡大用光学レンズをのぞき込む形式でその先の0.7型有機ELパネルを見る事になるが、双眼鏡にもあるように2つのレンズを目幅に合わせなければならない。両目それぞれ独立して5段階調整できるようになっているが、これが結構シビア。最終機種であるHMZ-T3は本機との比較ではあるが若干の向上があったようだったが、両目がそれぞれレンズのほぼ中心に位置しなければ拡大された映像の角や端がぼやける。

一度調整してしまえば頻繁に調整することはないが、本体の装着の具合によってはやはりズレはあるので装着の都度、装着ベルトの調整か装着位置の調整、もしくはレンズの調整が必要になる。これがかなりの手間になる。プロジェクターで毎回位置調整とピント合わせをしなければならない状態に等しい。

さらに0.7型という小さな有機ELパネルをレンズ越しに拡大して直接見ることによる目の疲れ。2時間程度の映画を見終わった後は3D映像でなくても意外なほど疲れている。1本見終わると目を休めた方が良いと自分で気づくほどだ。プロジェクターやテレビではそれを全く感じないので、やはり有機ELパネルと目の距離、ゴーグル本体の僅かな熱や乾燥、拡大レンズを通して観ることが目の疲れの原因になっているようにも思う。本機も初期設定では3時間で“視聴時間警告”が表示されるようになっている。これは「風と共に去りぬ(3時間58分)」、「ゴットファーザー2(3時間22分)」や「タイタニック(3時間15分)」を再生すると初期設定のままでは鑑賞中に警告表示が出ることになる。

ディスプレイの違和感

もう一つの不満はディスプレイだがディズプレイ自体の問題ではなく、人の目とディスプレイ(もしくは映画でいうスクリーン)との関係性だ。現在多く出回っているVRの世界は顔を動かせばその向いた方向の映像が流れる。現実の世界でもそれは同じなのでそれほど違和感はない。ヘッドマウントディスプレイなので当然、ゴーグルのように目の位置に装着する。本機「HMZ-T2」もそこまでは同じなのだが顔をどこに向けようとディスプレイに映る映像は顔の(目の)正面にくる。これが思った以上に違和感があり疲れるのだ。

当時はVR技術は普及していなかったのでVRと比較して言っているのでは無い。普段はある位置にディスプレイやスクリーンがあるとその位置を変えることはないので顔を動かせば視界から外れることもあるだろう。しかし、ヘッドマウントディスプレイは装着すれば視界から外れることもズレることもない。VR用のゴーグルも同じなのだが、VRなら映し出される映像は顔を動かせば映像も連動して動く。右を向けば左に動き、上を向けば下にと映像は常に逆方向に動く。現実の世界でもそれは同じだが、HMZ-T2はVRを映す機器ではない。

テレビや映画を観るとき、正面に捉えたディスプレイやスクリーンを見続けるのに人間は静止しているつもりでも長時間同じ体勢ではないことの方が多い。座っていれば足を組み替えたり、お尻の肉が少し痛くなってモゾモゾとお尻の位置を変えることもあるだろう。頭や顔、身体の一部がかゆくなって掻くことだってある。その時に僅かに動く顔(頭部)を自然(反射的)に目が補正し映像を見続けるのに対し、HMZ-T2の映像は頭部と一緒に動いて常に目の正面に位置する。常に目の前の映像はどこを向こうが目の前に固定されている。顔を動かしても視界が動かないことが思った以上に違和感を覚える。私は見ないが恐怖映像は顔を背けるだけでは全く視界から外れないどころか常に正面に追従し恐怖映像が流れることになる。逃れられない恐怖は更に怖さを増すかも知れない。

おもしろい事に映画の中でカメラがパンする(横スクロール)映像では顔を横に同じスピードで逆方向に向けるとその一瞬はVRと同じ原理になるので違和感が無くなる。エンドロールでも同じことができる。

プロジェクターの迫力か、有機ELパネルの映像美か

上記の不満理由はあれど実は見た目にはかなりキレイな映像が映し出される。解像度は残念ながら1280×720ピクセルで地上波テレビの解像度(1440×1080)に満たないが、何と言っても有機ELパネルの鮮明な映像としっかり調整された画質。さすがSONYだけあり、その辺りは妥協がない。解像度に関しても先にも述べたように画像パネルに集中しなければさほどドットは気にならない。むしろ有機ELパネルのクリアな映像とコントラストがそれを忘れさせてくれる。

映画の“味”や映像のサイズ感、迫力は感覚的にも、体感的にもやはりプロジェクターに軍配が上がるが、HMZ-T2はソファに深く腰を掛けてじっと画面に集中すると何となく映画館のスクリーンを見ているような“錯覚”に陥る。美しさだけでいえば、悔しいが現時点で我が家の壁スクリーンの液晶プロジェクター投影より、有機ELパネルを搭載したHMZ-T2の映像の方が多少の解像度の低さも補えるほどシャープでキレイにみえる。

 
プロジェクターの物理的な大画面の迫力と“投影”という映画館と同じ方式による感覚をとるか…、それとも“イメージ的な大画面”だが有機ELパネルの鮮明でクリアな映像美と全くクロストークのない3D映像を優先し、装着後は「メガネ…メガネ…」の動きをするかだ。

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