HDR,プロジェクター,ホームシアター,映画

HDRって何?

オーディオビジュアルを趣味にすると次から次へと新しい規格が登場し、そのつど新しい単語も誕生するので大変だ。もちろんそれに対応するための機器も登場するので金銭面でも辛い。そのひとつである「HDR」という規格。4K UHDは少しずつではあるが世の中に浸透し「今のテレビよりもキレイ」ということは何となくでも目にすれば理解できると思うが、同時に「HDR」というワードも登場し、人によっては混乱しているようだ。4K UHDの「UHD」と「HDR」が似たような字面にみえるのも原因かもしれないが…。

4K UHDの「UHD」について

UHDが本題ではないのでサラッと流すが、4K UHDの「UHD」はUltra High Definition(ウルトラ・ハイ・ディフィニション)の略称で「ユー・エイチ・ディー」と呼んでいる。3840×2160ピクセルの画面解像度を持った主にテレビ放送向けの規格のこと。本来の4Kよりも解像度として少し満たない。本来という言い方が正しいか分からないが、4Kはデジタルシネマの標準化団体DCI(Digital Cinema Initiatives)が定めるデジタルシネマ向けの規格である4096×2160ピクセル(アスペクト比 1.90:1)を指し、少しヨコ方向のピクセルが多い。

時代を遡ってしまうが、まずUHDよりも前に「HD」というものが映像の世界に登場した。Hi-Vision(ハイビジョン)の正式名称であるHigh Definition TeleVision(ハイ・ディフィニション・テレビジョン = HDTV)の略称であり、画面解像度が1280×720ピクセルの映像規格。そして「Full-HD(フル・エイチ・ディー)」と略されるのが1920×1080ピクセルの画面解像度を持った映像規格。これは俗に「テレビ放送向け2K」と呼ばれたりもするのだが、DCIで定められているの2Kは2048×1080ピクセルで、こちらもDCI 4K同様にヨコ方向のピクセル数が多い。下図はピクセル数の違いを比較しやすいよう表してみた。図で見ると画面の大きさを説明しているようにも見えるが、映像の解像度(細かさ)を言っている。縦横軸の数値の単位はピクセル。

このピクセル数の違いを同じスクリーンサイズと仮定して一部を見てみると下図の様に見えることになる。同じ「マル」を図で描いた場合でもなめらかさが変わってくるのは一目瞭然。Full HDから4K UHDは倍の解像度の違いがあるのでサンプル図も同様に倍の数の違いにしている。

解像度が低い場合。

解像度が高い場合。

HDRとは

本題の「HDR」だが、こちらは「輝度」を表現する規格。High Dynamic Range(ハイ・ダイナミック・レンジ)の略称。輝度といってもただ「明るい・暗い」を言っているのではなく、「映像上の光の強さの表現ができる幅(レンジ)」を言っている映像規格。「HDR」ではないものは「SDR = Standard Dynamic Range(スタンダード・ダイナミック・レンジ)」という。

HDRはテレビで登場する前にデジタルカメラのデジタル現像方法でその表現があり、「ハイダイナミックレンジ合成」と言うものが存在する。簡単に言うと明暗差の表現を上手く組み合わせて合成した現像のことなのだが、白の露出に合わせた画像と黒の露出に合わせた画像をモニターが表現できるダイナミックレンジ(およそ1000:1)に合わせて1枚の画像に合成する技法。静止画を撮影するデジタル一眼レフカメラも動画を撮影するデジタルカメラも撮影原理は同じ。カメラが映像(光)を捉えるイメージセンサー(CCDやCMOSセンサー)自体は明暗の捉える階調能力は高いものの、人間の目(約1,000,000,000,000:1)と比較すれば、ダイナミックレンジはせいぜい32000:1程度。そこで明るい場所の階調がでるように露出を合わせた画像と、暗い場所に階調がでるように露出を合わせた画像を合成して、モニターが表現できるダイナミックレンジである1000:1のコントラストに収まるように調整して一枚の画像を作り出す技術を「ハイダイナミックレンジ(HDR)合成」や「HDR 写真」というのだがそれを単に「HDR」と呼んだ。

下の写真は現像ソフトを使ってHDR合成を行った写真。露出違いで3枚撮影しHDR合成してみた。

暗い方に露出を合わせた画像(ハイキー)。暗いトーンは見えるが、卓上カレンダーが白飛びしている。


適正露出で撮影した画像。両方ともそこそこ見えるが、白飛びしている階調と黒潰れしている階調がある。


明るい方に露出を合わせた画像(ローキー)。白飛びはなくなったが、黒の階調が完全に潰れている。


HDR画像。白飛びもせず、黒潰れもない。全ての階調が見えている。

最近はiPhoneなどのスマホカメラにも搭載されているのでカメラ画面で「HDR」というマークを目にした人も多いだろう。HDRはそういった暗い階調から明るい階調までを、レンジの狭いモニターなどの出力機器でも一度に見られるように映像を記録したもの。実際はレンジが狭い機器でも、より見たイメージに近い自然な映像を見ることができる。

4K UHDのHDR

ここ最近のテレビやプロジェクターなどのHDR対応モデルというのはHDRで記録されたメディアの再生に対応したもの。映画などの4K UHDメディアを手にする人は最近の4K UHDのパッケージに「HDR」と記されたものを目にしたことがあるはずだ。

HDRと書かれたパッケージ。外装のシュリンクにシールで貼られているものも多い。

4K UHDやBlu-rayなどに収録されている輝度の強さを表す単位である「nit(ニト)」 。あまり聞きなれない単位だが、1nitは1cd(カンデラ)平方メートルとされ、要するに1平方メートルの面積を1cdで照らすことのできる輝度の強さを表す。1cdはロウソク1本分の明るさ。そのロウソクから1メートル離れた距離の明るさが1ルクス。…アタマが混乱する。

従来のBlu-rayは収録できる輝度のピークが100nitだったのに対し、4K UHDのHDRでは10000nitまで向上している。ただしあくまでも規格上であり、現在4K UHDに収録されいる最大輝度はせいぜい4000nitほど。映画にもよるが実際400nit〜500nitにも満たない映画は沢山ある。たしかに映画はイメージや世界観があるのでムダに輝度を高くする必要もないわけで、その広がったダイナミックレンジでより自然に見せたり、逆に非現実的で幻想的な世界観をより一層引き立てるようにする方が目的だろう。

先のHDR合成画像はカレンダーや背景の壁紙のテクスチャーの白飛びもなくなり、黒いコーヒー缶の暗い部分も黒潰れすることなく階調が出ているのが分かる。HDR写真はHDRとはいうもののあくまでも合成加工なので、先の缶コーヒーの画像は今このブログをご覧頂いているスマホやPCのモニターで確認する事ができたはず。そのモニターがHDR対応モニターでなくてもHDR画像を見られるというのは、画像自体をモニターの最大輝度である300nit、コントラスト1000:1以内に収まるように加工しているからだ。既にお気づきの人もいらっしゃるかもしれないが、このHDR合成に関して言えば“諸刃の剣”でヘタするとただコントラストの低い、のっぺりとした映像にもなってしまう。やはり最大輝度の低い表示機器では限界がある。

HDR合成の概念イメージ図。明暗の階調を出しつつ、これまでの表示機器でも表示が可能だが場合によってはコントラストの低い画像にも見える

HDR対応プロジェクターとは

これまでの300nitから、1000nit以上まで表示可能なダイナミックレンジを広げたプロジェクターやモニターがHDR対応といわれる表示機器。HDRと記されているパッケージはHDRで記録されている映像なのでHDR対応機器なら人間の目ほどではないが、レンジが広がったため暗い階調も黒潰れすることなく、明るい階調も白飛びすることなく見ることができる。また、階調表現に優れているため採用するガンマカーブにもよるがバンディング(トーンジャンプ)も起こりにくい。未対応機器の場合はSDRに変換されて再生される。

HDR対応 プロジェクターと従来のSDR プロジェクターのダイナミックレンジのイメージ。ダイナミックレンジが3倍以上。

実際の映画でのSDRとHDRの違いを下に掲載した。iPhoneで撮影してしまうと勝手に露出を合わせたり見た目の印象と随分と違ってしまうのだが、スパークしている最も明るい部分をタッチして露出を概ね光の強さに合わせて撮影してみた。

SDR表示。ブルース・ウェインのスーツや背景の機器類に黒潰れが発生している。スパークも白飛びしている。


HDR表示。スーツの黒潰れもほぼなくなり、スパークの中心部分は真っ白なのだが線が白く飛んで見えなくなることはない。画面全体が見通しよくなり、色域も広がる。

ちなみ4K UHDなどの映像メディアで単に「HDR」と言っているのはパナソニックとソニーが提案した「HDR10」との認識で差し支えない。HDRにも色々と大人(業界)の事情も絡んで方式や規格そのものが色々あったりもする。NETFLIXでも採用されており、たまに耳にする「Dolby Vision(ドルビービジョン)」もHDR規格の一つ。放送用が「HLG = Hybrid Log-Gamma(ハイブリッド・ログ・ガンマ)」。


© 2018 Warner Bros. Japan LLC All rights reserved. TM & © DC Comics

1000nitの輝度を表現するのに10000ルーメン以上必要?

で…、ここで問題が一つ浮かび上がってくる。HDRで1000nitの輝度があると言われても、それを最大ANSIルーメン値が1800〜2000などのプロジェクターで1000nitは表現できるのか。仮にスクリーンゲインが1の100インチスクリーンに1000nitを表現するとなるとプロジェクターの明るさは投影距離によっては10000ルーメン以上も必要になってくると言われている(どういう計算かは不明だが)。この数値が正しいのなら到底1000nitなんて無理なことになるが、ルーメンの測定で光の照射角を360度とし計算したなら確かに10000ルーメン以上(約12500ルーメン)が必要になるが、プロジェクターの光の照射角は20〜30度でプロジェクターランプ自体もリフレクターなどで集光して照射している。ルーメンもANSIルーメンが基準となるのでこの桁外れな10000以上という数値が正しいのかどうか分からない。

いずれにしても、実際4K UHDに収録されている輝度はせいぜいピーク時で400nit程度に抑えられ、さらに「PQカーブ」と呼ばれるガンマカーブの採用でより自然な階調に見える様に調整されている。PQカーブは最大10000nitを上限として必要に応じて輝度をクリップさせてピーク輝度が抑えられるようになっているので、「我が家のプロジェクターはHDRを存分に発揮できるのだろうか」など心配することもないのだろう。

人間の目のダイナミックレンジは約1,000,000,000,000:1と言われているが…、いつかはこれほどの能力をもつカメラや表示機器が世に出るのだろうか。

 


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