「他人のホームシアターは一体どうなっているのだろうか…」と、ホームシアターを始めた人は誰もが気になることであろうと思う。果たして我が家はどの程度なのか。私はあくまでも、自分が映画を楽しむ目的なのでホームシアター自慢や「セッティングはこうでなければ…。」などと一切思っていない。他人のことも気にならない。…いや、ちょっとは気になる。良い設備で良い環境でホームシアターが楽しめればそれに越した事は無い。しかし、現実的に考えてお財布事情や家庭事情などにより自分の思い通りにはいかないのも事実。
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ホームシアターで映画を楽しむのか、機器を楽しむのか
夢は尽きることが無いが、少しでも理想のホームシアターに近づけたい。何かヒントは無いかと、ホームシアター系の雑誌や日本よりもホームシアターが盛んな海外のサイトで見て、到底マネできないようなレベルのホームシアターを見て諦める日常を繰り返す。我が家を振り返り、あまりにものレベルの差に自分のホームシアターに嫌気がさし、活用しなくなる人も。ホームシアターの目的が“ホームシアター機器の充実”になってしまい。映画を楽しむ目的が二の次になってしまう人も。こだわる人はこだわるのでこの世界もオーディオと同じで上を目指せば切りが無い。もうやりすぎて建物などを除く機器の設備への投資金額が街のミニシアターなど余裕で越えている強者もいる。箱(視聴空間)だけはどうしようも無いので設備で頑張ろうとする。
特に音響に関しては空間が大事なのだ。我が家のように有効面積10帖程度(クローゼット、ダイニング除く)のリビング・シアター空間などではどう逆立ちしても劇場のような音にはならない。映画を映画館の様に近づけて楽しみたいから設備に投資する気持ちが凄くわかる私も、ひとのことを言えた立場では無い。身の丈にあった設備であくまでも楽しむのは映画。でも地道に貯金して設備を充実していくのも楽しいのだ。
「家キネマ。」のホームシアター事情
そんな、設備や機器のスペックばかりを気にしても仕方ない。私程度のプロジェクターを使ったリビング・ホームシアターでも映画は(自分基準だが)凄く楽しめることを紹介するのに自分の環境を晒(さら)さないワケにも行かないので可能な限り晒そうかと。“可能な限り”というのも、引っ越したばかりならまだしも、生活感まる出しのリビングルーム全景をモデルルームのように全て晒すワケにもいかないので、簡単な全体図面と部分的な写真で紹介するのみになることをご容赦願いたい。
我が家はマンションでリフォームをしている。専用シアタールームなどはなく、リビングにホームシアターを構築しているので好きなときに好きなだけ映画をみるとか、設備で思いついたら即実行などとはいかない。また生活のある部屋なので映画ポスターを貼って雰囲気作りをしたり音の反射を考えてモノを好きに動かしたりもなかなか自分の思うとおりにはいかない。それでも妻との交渉で随分とワガママを聞き入れてもらっているほうだ。ありがたい。リビング・ホームシアターは専用シアタールームとは違い、越えなければならないハードルや妥協が幾つもある。
「私のホームシアターなんて…」と思っている人にとって「な〜んだコイツこの程度か」と勇気を与えたり…これからホームシアターを始める人にとって「この程度で楽しめるなら私でも」とさらに勇気を与えたり…その他ホームシアターのヒントになれば幸いだ。
我が家の視聴環境を大ざっぱに言えばAVアンプを使った5.1chサラウンド・システムを組み、アナモフィックレンズを使ったプロジェクターでシネスコサイズ(アスペクト比2.35:1)120インチ程の投影をして映画を楽しんでいる。
スクリーンなんて設置できないから、壁をスクリーン代わりに
常設するカーブドスクリーンが欲しいと思いつつもリビングで常設は無理。しかもスクリーンはインストールがなかなかの大ごとになるのだ。100インチほどのスクリーンをリビングだからと天井に設置するのに一人では到底無理。簡単に考えて電動スクリーンなど導入しようものなら自身で設置すると少しのねじれで、やがてスクリーンが波打つようになる。テキトーでいい加減な人は尚更、歪みなど許さないキッチリとした性格の人でも設置技術は別。
少々のシワや波打ちを気にしない人はいいが、インストールはできるだけプロに頼む方がいい。またしっかりした巻き取りパイプではなかったりするとスクリーン生地の自重で湾曲しV字のシワが発生する。本格的なプロジェクター用のスクリーンはできれば設置費も込みでスクリーン用の予算を組むべき。常設する張り込み型のスクリーンなら友人や家族にちょっと手伝ってもらう位で設置できるし、一人で設置する人もいる。
我が家はスクリーン代わりに白い壁紙。リフォームの際に白く、なるべくエンボス(凸凹)の細かい壁紙を選んだ。スクリーンゲインがいくらとかマット系だのビーズ系だの言ってられない。それでも充分な映りをするから我ながら驚く。「家キネマ。」ブログの紹介画像は当然全て壁スクリーン投影。映像は動くと何に映しているかなんて気にならないものなのだ。プロやマニアが見たら泣くかもしれないレベル。
サラウンド・スピーカーは理想の場所に置くと邪魔
サラウンド・スピーカーには理想のポジションがある。5.1chなら視聴者からスクリーンを見た正面を0°とし、そこから視聴者を中心にそれぞれ左周り+100°〜+120°と右周り-100°〜-120°。スピーカーの高さを耳の高さか、やや上50〜90cm上がったところが理想とされている(諸説あり)。普段ソファに座って鑑賞するのに座ったときの耳の位置から、そんな中途半端な高さの位置に設置なんて正直難しい。スピーカースタンドに置くと耳の高さ程度にくるが、それはそれでリビングに常設するには邪魔だ。スタンド型なら片付けられるが、できれば常設しておきたい。毎回キチンとセッティングするのも面倒だ。いづれ片付けやセッティングが面倒になり映画をサラウンドで観ることからも遠ざかる。
サラウンド・スピーカーとしての理想とはほど遠い場所だが、それでもスピーカーの向きを調整すればちゃんと後方から聞こえる。映画鑑賞には全く問題無いがプロやマニアが聴くとやや耳を疑うレベル。
天井設置の際に私が使ったスピーカーブラケットはONKYOの正規品だが、汎用性のあるスピーカーブラケットもある。
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プレゼンス・スピーカー(フロント・ハイ)は期待以上の効果があった
YAMAHA AVアンプ独自の3次元サラウンドを実現するためのスピーカー。「オーロ3D」用のフロント・ハイにそのまま使えそうな位置に設置する。このスピーカーにより映画のセリフ位置を調整できるようになり、丁度映像が映っているあたりから声が聞こえるようになる。ONKYOの安物スピーカーを使っているので、セリフ位置を上げ過ぎるとプレゼンス・スピーカーの方に音の割り振りが増えて、音の厚みが無くなる。5段階で上げられるが2〜3程度に留めている。
その他、AVアンプのサウンドプログラムにより大きなホールで聴いているような残響音効果もこのプレゼンス・スピーカーが活躍する。ドルビーアトモスや、オーロ3D程ではないがシネマDSPの設定にしているとYAMAHA独自のプログラムにより通常の5.1chサラウンドでも高さを表現したかのような立体音響に聞こえる。実際、本当に聞こえる。これは期待以上の効果があった。ドルビーアトモスに急がないのもこの効果のおかげだが、流石に頭上から降り注ぐ雨や轟音は表現できない。
プレゼンス・スピーカーの配線をした際に、“だら〜ん”とケーブルがだらしなく垂れ下がるので、ケーブルを隠すモールを使っている。細いケーブル1本分なので0号モールを使用。
プロジェクターはクローゼットに設置
スクリーンにする壁の反対側(視聴後方側)が本記事キャッチ画像のミラー付きクローゼットになっているので上部にプロジェクターを押し込んだ。リビングのクローゼットなので普段の服を入れているのではなく半分物置代わりになっている。電源ケーブルやHDMIケーブルの配線の引き回しが大変だったがクローゼットを閉めるだけでプロジェクターを見えなくすることができる。偶然ながらも結果オーライ。
しかし、以前にアナモフィックレンズを装着したので更に奥に押し込むことになり、そのためHDMIケーブルが長さギリギリな状態になっている。これ以上は奥に設置するとコネクタに負荷がかかるので次回に新しいプロジェクターが少しでもEPSON EH-TW6600より全長が長かったらケーブル長が足らなくなる。
「家キネマ。」のリビング・ホームシアター全体図
全体は写真で晒せないので図面を書いてみた。寸法はメジャーによるややテキトーな実測(単位:ミリ)。意外と壁スクリーンからプロジェクターまでが約4.4メートルもあった。どおりでズームレンズ使わずに済むはずだ。アナモフィックレンズの設置の際にさらに後方にさがったので投影の拡大率が上がり、現在のズームレンズによる拡大率はほぼ最小。
図はリビング部分のみだが、ダイニングがつづいている。それを合わせて24帖ほど。パネルドア(アコーディオン状)で間仕切れるようになっているが、普段から開放状態。仕切って大音量にすると空間が狭くなり音が抜けずに返って音質が下がる。
スクリーン代わりの壁は柱形が出ているため、シネスコサイズで約120インチがギリギリ投影できる程度。後々、スクリーンを設置する場合は柱形もろともスピーカー前にスクリーンを降ろすように設置すれば、もう少しサイズアップできるかも知れないが…スクリーンボックスのサイズを考慮に入れて、さらにスクリーン自体にマスク部分(黒い枠)があるので若干サイズダウンする可能性もある。
リフォームで床と天井が二重構造になっている。ついでに壁も。同じマンション内でも我が家は遮音性が高い。天井高が低いのはそのため。空間全体が狭くなり音響的にはマイナスだが、音量のためのトレードオフだ。
ソファに座って頭の位置から壁スクリーンまでの距離は概ね3〜3.2メートル。なので映像を見上げることになるのだが、これも理想的では無い。目線の高さよりも若干下に字幕が表示されるくらいが丁度いいのだが、テレビがあるのでそれは無理。JBL S3100の“おかげで”さらに高い位置での投影になる。しかし、ソファに座り背もたれに“だらしなく”もたれると目線が丁度良くなる。映画内容が面白いからと前のめりな姿勢になると首が痛くなる。
リビングの窓は通常の部屋の窓よりも大きい「掃き出し窓」になっており、リビングを暗室にするのが一番ハードルが高い。我が家では暗幕を自作しなんとかしたが、これをクリアするのが一番の苦労だった。暗室づくりは下記の関連記事からどうぞ。
その他、使用している機器については随分古くて恐縮だが関連記事を参照していただければと。
我が家のリビング・ホームシアターといってもこんな程度のものなのだ。厳密に計算してスピーカーなどは設置していないし、仮に計算しても結局は部屋の形状やモノなどで、その効果を100%発揮するのは難しい。しかし、それなりにちゃんと5.1chサラウンドの効果を発揮し映画を楽しめる。後ろで何やら物音がすると思ったら映画の音だったとか…YAMAHA独自だが、プレゼンス・スピーカーによるシネマDSPの効果でドルビーアトモスを導入していないのに天井付近から音がするなどして驚くこともある。
もちろん、この程度の設備でさえ一度に揃えられるはずも無く、徐々にアップグレードしていったものばかり。焦らずじっくりと映画を楽しみながらホームシアターを少しずつ構築していくのもまた、ホームシアターの楽しみ方の一つだ。
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