ANSIコントラスト,ホームシアター,プロジェクター

プロジェクターのコントラスト比、FOFOとANSIによるの数字トリック

プロジェクターにおいて、カタログスペック上のコントラスト比はよく注目される。「5,000,000:1」とか「10,000,000:1」だとかをプロジェクターを購入する前にカタログを家に持ち帰り、あまりに見過ぎてカタログに穴が開き、コントラスト比の数字のマルが一桁増えるのではないかと思う程注目する。

FOFOでのコントラスト比

プロジェクターのカタログ上のコントラスト比はそのほとんどが「FOFO」と呼ばれる条件でのコントラスト比。中には「※」印で最下段に「FOFOでの数値です」と極小さな文字で注釈を入れている場合もある。FOFOでのコントラストはメーカーによってスペックに掲載する測定方法が異なり、オートアイリス(明るさの絞り機能)を使用する、しないもメーカーによる。FOFO表記は言葉通りにフル・オン、フル・オフ(Full On/Full Off)で測定したコントラスト比だ。

要するにランプの光を100%使うような真っ白の画面をそのまま投影した光の強さの数値とランプ光源を最小限に押さえたような黒(場合によってはアイリス《絞り》を実行)を表示させた時の光の差を比率として測定したもの。その平均数値にスクリーンサイズの面積(平方メートル)で積算するとANSIルーメンとなる。なので普段使うルーメン(lm)とは単位は同じでも意味合いが少し違う。

ANSIルーメン = 平均照度(ルックス)× スクリーン面積(平方メートル)

実際に私がFOFOでのコントラスト比を測定する時の画像を下に掲載。ただ画面を単純に100%真っ黒と、100%真っ白にするだけの画像なのであって表示エラーではない。さらにその下にはANSIコントラスト測定用のチェッカーパターンも掲載しておく。「私もちょっくら試してみようかな」という方のために4K UHD解像度の画像をダウンロードできるようにしておいた。もともとFull HD用に作っていたが、今回4K UHD用(3840×2160ピクセル)に作り直したもの。これに照度計をあてて実際の数値を見てみる。

使い方はUSBに入れて本体やプレーヤー等に読み込み、ピクチャーモードで表示させるだけ。PCにつないで表示させてもどちらでも構わない。

白の画像

黒の画像

実サイズの画像は下のリンクより。
・4K UHD解像度の白画像(→ダウンロード
・4K UHD解像度の黒画像(→ダウンロード

私は測定のプロではないので厳密にはどのように測るかは具体的に知らないが、投影面で1番明るいであろう中心と周辺で光量は変わったりするので四隅周辺、あとそれぞれ四辺の中央付近、合計9点を測定しているので9分割で測定するANSIルーメンの測定方法と概ね近いはずだ。

ANSIでのコントラスト比

FOFOコントラストは全画面100%の白と100%の黒の差をコントラスト値としているので実際の映画等ではほとんど見かけない状態。なので実用的なコントラストを想定して測定したのがANSI規格(American National Standard Institute/米国規格協会)に基づいたコントラスト比。

劇中では同一画面の中で暗部と明部が同時発生するのが当たり前であり暗闇の部屋に光が差し込むなど1画面で極端に暗い(黒い)部分と明るい(白い)部分が存在する。その時どれだけ暗部が黒く沈み、光の白が明るいか。そういった実用に近い状態に則し、3×3や4×4等の白と黒のチェッカーパターンを使って測定したのがANSIコントラスト比。この数値が高いプロジェクターは純粋にコントラストが優れていると判断していいだろう。

ANSI規格のコントラストを測定するときのチェッカーパターン

実サイズの画像は下のリンクより。
・4K UHD解像度のチェッカーパターン画像(→ダウンロード

自分で実際に測定してみる

カタログスペックの数値はメーカーに悪意がない限り正しく測定した数値だろうと信じたい。しかし各メーカー毎の測定方法や条件などはほとんどが公表されていないので「ホントのところはどうなのだろうか」と思ってしまう。しかも自分の視聴環境下ではスペック通りのポテンシャルが出せるとは到底思えない。

スペックでいくら数値が高くても実際に本体を視聴場所に設置してみると、自分の視聴環境ではそうはならない場合の方が多いというか、かけ離れた数値がほとんど。そのため自分なりの方法でやり方だけを統一し、実際に測ってみるのが1番なのだ。ただ、端から見て参考にする人にとっては良いかもしれないが、手に入れた本人はそのプロジェクターの現実を知るだけで知ったからどうなるわけでもないのが少し悲しい。

本来の測定はスクリーンまでの距離やスクリーンサイズが決まっているはずなのだが、あくまでも自分の視聴環境での数値を調べる手段としてやっていることなのでその辺は考慮していない。そもそも私が持ち合わせている照度計(どこの家庭にも普通にあるとは思っていないが)はプロジェクターの測定を想定しておらず、小数点1ケタの時点で正確ではない。最低でも小数点2ケタの分解能がないと特に暗部の数値が正しく測定できない。

持ち合わせの照度計。分解能が小数点1ケタまでなのでプロジェクターの性能を測るには正しく測定できないが自分の環境範囲で測定する分には使える。

照度計を探してみる ▶

ANSI測定はブルーミングによりコントラストが低下する

ANSI規格に基づく測定では白と黒のチェッカーパターンを表示し白の部分と黒の各部分を光量測定するのだが、黒はどうしても白の面の光りが拡散する現象(ブルーミング[Blooming]といったりするが…プロジェクターではあまり聞かないな)がどうしても起こるのでコントラストが必然的に低くなる。だからANSIコントラスト比がFOFOコントラスト比のような「100,000:1」などの大きな数値には絶対にならない。高くてもせいぜい「600:1」程度で全く桁が違ってくる。それでも600:1なんて業務用プロジェクター並だ。映画館では基準プロジェクターが150:1以上、場内環境を含めて100:1以上の規格が定めれている。

私の場合はリビングシアターなので、周りの白い壁紙や天井クロスによってプロジェクターから投影される光が周り、さらにぐんっとコントラストが下がってしまう。多くのリビングシアターの白壁投影では50:1(誤植ではない。[ごじゅう、たい、いち]と書いた)に満たないと思う。だから専用ルームに憧れるのだ。羨ましい!

と、いうわけで同じ「コントラスト比」という言葉でも数字として出てくるものはここまで違う。

この写真の時点で既に天井側の黒が白っぽいのがわかる。コントラストが落ちている証拠。

BenQ HT3550のFOFOおよびANSIのコントラスト比

リビングを暗室にして測定すると照度計は「0.0 lx(単位:ルックス)」と表示されている状態から測定をはじめる。機器的にこれ以上計測する分解能がないだけで本当は「0.08 lx」とか本来の「0.0 lx」ではないと思う。先にも述べた通り、もう少しきちんと測定するには分解能が0.01 lx以上(少数点以下2ケタ以上)で測定できる照度計があればいいのだが私のは以前に購入した簡易の照度計で0.1 lxまでの分解能しかない。

さらにEPSON EH-TW6600に関しては現在ランプ使用時間が930時間となっているため輝度低下によるコントラストの低下は当然起こっている。正しく比較するならランプは新品同士にするべきだろう。現在の状態で比較はできないので、以前に測定した時の数値を掲載しておく。EPSON EH-TW6600は透過型液晶タイプのプロジェクターなのでANSIコントラストの数値は低かった記憶がある。

盛大に天井に光が反射しているのがわかる。まるで間接照明並み。この反射光がさらに投影面に影響を与える。

BenQ HT3550を実際に測定したのが下に表記した数値だ。結果の数値は両機種共にカラー調整後であり、共にアイリスONの状態。投影距離は3.2メートル。起動して光源ランプが安定するまで30分程経ってから測定している。

ここに表すのはあくまでも我が家の視聴環境での数値であることと、照度計が小数点以下1ケタのため数値が丸められていること、そして計測シロウトの私が測定したことを承諾の上で参考にしていただきたい。(※小数点第2位を四捨五入)

BenQ HT3550 コントラスト比 ブライトネス
FOFO(9点計測) 7164.3:1
ANSI(16点計測) 37.0:1 923.5 ルーメン

BenQ HT3550のカタログスペック上はFOFOコントラスト比は30000:1となっているが、「家キネマ。」視聴環境状態において実測すると7164.3:1となり、ANSIコントラスト比は37.0:1となっている。ブライトネス(輝度)はカタログスペック上は2000ANSIルーメンとなっているが、923.5ANSIルーメンとなった。

EPSON EH-TW6600を以前測定した時の数値。

EPSON EH-TW6600 コントラスト比 ブライトネス
FOFO(9点計測) 7787.7:1
ANSI(16点計測) 30.7:1 1229.7 ANSIルーメン

EPSON EH-TW6600のカタログスペック上コントラスト比は70000:1だが、我が家では7787.7:1だった。ANSIコントラスト比は30.7:1。ブライトネスが1229.7:1ANSIルーメン。今現在同様に測定すると光源ランプの劣化が進んでいると思うのでもう少し低い数値になりそうだ。

ブライトネス(輝度)やFOFOコントラストに関しては案の定EPSON EH-TW6600の方が高いが、実用的なANSIコントラストに関しては予想通りBenQ HT3550の方が高いのがわかる。そしてこれも予想通りシロウト測定をもってしても50:1に満たない数値だった。

いずれの機種でも光を反射るす天井面から離すようにもっと投影面を下にできたり、スクリーンを設置できればもっとANSIコントラストは上がるはずだが、それが簡単に出来なのが家族も過ごすリビングシアターの悲しいところ。

メーカー公表のスペックは鵜呑みにしない。あくまでも参考程度に

どちらのコントラスト比にしてもプロジェクターは白い面に投影するのが基本。だから黒い映像といっても投影面の色は白なのだから環境光が明るければどんどん黒は白に近づいていきコントラスト比は低くなるし、視界ゼロの暗室なら高くなる。さらに、周辺の壁や天井も反射を抑えたものならそれだけでもかなりコントラストは高くなる。

家庭用プロジェクターの場合は各メーカーがどのくらいの暗室で、どういった状態で測定しているのか等、その測定方法は公表されていない。だからカタログ上のスペック数値を鵜呑みにしても実際に目的のプロジェクターを入手して自宅で映画等を投影してみたり、こうして自身で実測確認するまでは本来のコントラスト比は分からないのだ。

私が勝手に疑った見方をしているのかもしれないがFOFOのコントラスト比だけを公表するのは、メーカーがまるで「プロジェクターのコントラスト比をユーザーは気にしているから」という理由だけでウソではないが見栄えのする数値を表記しているように感じてしまう。数値のチカラは訴求力が強く、「コントラスト比 = x00,000,000:1」などと数値が高ければユーザーは期待をしてしまうものだ。家庭用プロジェクターにおいてANSIコントラスト比を表記しているメーカーはかなり信頼できるのだが、残念ながらあまり見かけることがない。

 



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