悪夢からの不安要素を取り払うため、A/Vアンプが万一故障した時のバックアップ用パワーアンプを色々と考え始めたということは先週ブログに書いた通り。当然あれからも考えてアンプを選別していた。
事前に映画視聴時の消費電力を改めて調べたら、Apple TV 4KやFire TV Cubeなども接続して動作させた状態でも消費電力120W程度だった。1つのコンセント(2個口合計)で1,500Wまでを限界とし、安全レベルを考慮して1,200Wとしても1/10程度しか使っておらず、まだまだ余裕があるので安心してパワーアンプを追加できる。ちなみにプロジェクターとは別のコンセントになっている。
ステレオパワーアンプなら安いアンプはたくさん出ている。単に音を出すだけを目的とするなら何だっていいのかもしれないが、趣味の世界に「どれでもいい」は考えられない。自分なりに考え、答えを出して実行(半実験的)してみるのも楽しいのだ。それが世の中的には間違っていてもいい。自分が楽しければ趣味の世界に間違いなんてない。そうして決めて(自分に言い聞かせて)注文したパワーアンプがつい先日届いた。
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PA用ステレオパワーアンプCROWN XLS1002
それが、今回入手したCROWN XLS1002というD級ステレオパワーアンプ。市場価格のお値段約3万円ほど。CROWN(クラウン)は1947年に設立されたアンプの老舗メーカー。現在はJBL同様ハーマン・インターナショナルの子会社となっている。2017年頃まで日本国内では商標の関係だろうか、「AMCRON(アムクロン)」というブランド名で流通していた。2017年はハーマン・インターナショナルがサムスン電子の傘下に入った頃なのでその辺の絡みもあるのかも知れない。
本機は主に家庭用ステレオアンプではなくPA(Public Address)用であり、平たく言えば業務用のパワーアンプだ。業務用というだけあって出力パワーが8Ω[オーム]時で最大出力215Wあるので本来は最大許容入力200W(6Ω)のJBL S3100に繋ぐべきではないのは承知の上。最悪の場合はスピーカーが破損する。
業務用をざっくり簡単にいうと、家庭用と違いホールなどの広い空間でも音が届くような出力パワーを持っている。当然、家庭用として使うことを前提としておらず、国内で実際に家庭用として使っている人もあまり見かけないが海外では割と見かける。大音量が出せるように出力ワット数が大きく、スピーカーケーブルを長く引き回せる様にダンピングファクターも高い。スピーカーのパラレル接続も想定しているので、インピーダンスは2Ωまで対応しているものも多い。あと、こういう機材は実際のリスニングポジションから離れていることが多いので本体からのノイズ発生(冷却ファンやトランスの唸り)に対してはあまり対策はとられていない。
普段使っているmarantz SR8012がステレオ最大出力210W(6Ω)なので最大出力パワーとしてはインピーダンスを加味すると更にCROWN XLS1002の方が大きいが「倍ほど違うような出力差はないから、ま、いっか」という理解した上での判断。オーディオマニアの人がみたら「コイツ、何やっとんねん」という選択だろうがそんなことは関係ない。“良い音を目指す”ピュアオーディオではご法度なことも、“自分が楽しむ事を優先する”のが家キネマ。
家庭用パワーアンプの様に優しい設計ではない
常識範囲内で使っていればスピーカーを壊すことはまずないが、電源が入ったアンプをフルボリュームにしたまま機器と接続してポップノイズ(人的要因事故案件)が起こり、瞬間的に出力が200W以上になると最悪の場合スピーカーを一瞬にして破損してしまう可能性もある。同じJBLのスピーカーを使うなら、例えば同じPA用の許容入力が500WあるPRX312MDなどだろう。
オーディオ製品における電源投入時の基本ではあるが、ポップノイズを避けるためにも電源を入れる場合は他の機器から入れ、このアンプは必ず最後に。逆に電源を切る時は、必ず最初に電源を落とす機器として、扱う人は動作癖をつけなければ事故につながる。
最近のA/Vアンプなどはそういった電源投入の順番をあまり気にしなくてもいい様にリレースイッチが入るまでのタイムラグなどを設けポップノイズが起こりにくい仕様になっていたり、仮にショートを起こすようなことがあっても安全装置が働いて、自動で電源が落ちるなど事故は起こりにくくなっている。しかし、全ての事故をカバーできるわけではないので、できるだけ電源投入の順番は守ったほうがより安全。
大は小を兼ねないパワーアンプの世界
高出力のアンプで低出力をするのは音質的に良くないと言われている。現代において全てのアンプがそうではないと思うが、高出力のアンプは低出力を得意としていないのものが多いからだ。また、小音量の場合はプリアンプのボリュームの造りによってはギャングエラーが起こり、左右の音量が違って聞こえボーカルがセンターからズレる場合がある(これって古い考え?)。最大出力ワット数が低めのパワーアンプで能率の高いスピーカーを鳴らした方が小音量でも綺麗に鳴るというのが定石。そういう意味では私が使っているマランツのSR8012も怪しい。
私の場合は通常運行時にスピーカーから1メートル付近でアベレージ65dB〜70dB前後になるレベルで音楽を、映画視聴では出力をさらにアップ(ボリュームを+10dB)して視聴しているのでやはり小音量では聴いていない。一般的なボリュームダイヤルでいえば時計の8時の向きをゼロとして4時の向きがMAXとすると、1時から2時くらいの間にボリューム位置がある感じになるだろうか。もちろん、夜の視聴はマナーとして小音量にするが、その場合は聴くというより流している感じになる。
それよりも「1度、業務用機器で遊んでみたい」という欲求の部分が気持ち的には大きい。PA用のスピーカーも試したいがあんな無骨なスピーカーをリビングに置くわけにも実際に設置する場所もなく実現が難しいので、まずはラックに突っ込むだけで済むアンプからやってみようという思いに至った。
CROWN XLS1002にした理由
まずは先にも書いた通り「業務用機器で遊んでみたい」という理由。そして同じPA用アンプなら出力の小さいアンプもあるが、入出力の端子が業務用なので入力がXLR(ロック機能付き)や標準フォーン端子になっており、家庭用アンプならあるRCA端子が業務用では備わっていないことの方が多い。また、スピーカーへの出力端子についても同じ価格帯の場合はスピコン(一般的には聞き馴染みがないと思う)のみになっているものが多い。
ライブコンサート等において関係者がコードを引っ掛けて端子から抜けてしまう事故など、何かの弾みで抜けてしまい演奏を中断せざるを得ない事故につながりそうなリスクがあるものは極力排除されている。
入手したXLS1002は入力にXLRプラグはもちろん、標準フォーンプラグの他にRCAプラグでの接続が可能で、出力に関してもスピコンの他、一般的によく見るスピーカー端子(バインディングポスト)がありバナナプラグにも対応する。そういった入出力端子の都合でこの機種に決めたのも要素のひとつ。一般的な端子が付いてなくても変換ケーブルがあるので対応は可能だが、持ち合わせがない人にとっては別途用意しなくて済む。
パワーアンプ側にアッテネーター(出力減衰レベル。ボリュームと同意。何故かパワーアンプ側では「アッテネーター」ということが多い)が付いていることも重要。最近はパワーアンプでもアッテネーターが付いておらず出力が固定のものが多い。今回のようなケースでは特にバランスを取るためにも固定出力されては困るのでパワーアンプ側のアッテネーターは必須。
あとは価格面で考えても、故障しにくい事が求められる業務用は頑丈(…のはず)。出力ワット数が高いこと以外、今回購入の意図としては理にかなっていると思うのだ。
CROWN XLS1002の仕様
CROWN XLS1002の仕様は下記の通り。
Power Matrix | |
Channels | 2 |
2Ω Dual | 550W |
4Ω Dual | 350W |
8Ω Dual | 215W |
4Ω Bridged | 1100W |
8Ω Bridged | 700W |
*Maximum average power in watts at 0.5% THD, 1kHz
Performance Specifications | |
Sensitivity | .775Vrms or 1.4Vrms |
Frequency Response(at 1W, 20Hz to 20kHz) | +0dB, -1dB |
Signal to Noise Ratio(rated as dBr to full rated 8Ω power output; A-Weighted) | >97dB* |
Total Harmonic Distortion (THD) | <0.5% |
Intermodulation Distortion (60Hz and 7kHz at 4:1) from full rated output to -30dB | <0.3% |
Damping Factor (8Ω, 10Hz ~ 400Hz) | >200 |
Crosstalk(below rated 8Ω power) | At 1kHz: > 85dB At 20kHz: > 55dB |
Physical Specifications | |
Width x Height x Depth | 19 in. (48.3 cm) x 3.5 in. (8.9 cm) x 7.7 in. (19.6 cm) |
Net Weight | 8.6 lbs (3.9 kg) |
Shipping Weight | 13.6 lbs (6.2 kg) |
*At .775Vrms sensitivity, Signal to Noise is 6dB lower.
出力関連を見るとブリッジモードなんて使ったらJBL S3100なんて1発でフッ飛びそうだ。このモードは絶対使っていはいけないヤツだ。ハイパワー過ぎる。と言いつつも…何だろう…スピーカーには絶対に良くないはずなのにワクワクしてしまうのはなぜだ?
本機のダンピングファクターは200以上とあるが、これはスピーカーケーブルを何十メートルと長く引き回してもスピーカーの制動力が高いことを意味する。一般家庭ではここまで高い数値を必要としないが、そういったところも含めて業務用は凄いな。
「あれ? そういえば、スピーカー出力端子はバナナプラグ対応ではなかったけ? 説明書にもバナナプラグ対応って書いてあったぞ?」 と後で調べたら少し加工が必要だった…どうやら中心の部分が抜き取れるらしい。
パワーアンプは重くてでかいトランスが正義なのか
出力ワット数が大きい部分ではマイナスだが、その他の部分では期待できるアンプだ。電源部分に重量級のトランスを積んでいないのもいい。アンプは全て電源部分のトランスで決まるかの様に、でかくて重いトランスを積んでいることが多いのは何故なのか私は今だにきちんと理解できていない。電源で音が変わるのはその先のコンデンサの問題なのではないかと思うのだ。ダムのように働き電流量をコントロールするコンデンサがデカイ(容量が大きい)というほうがまだ理解できる(詳しくは知らんけど)。
電源トランスは相当な出力をするならともかく実際の出力ワット数で考えると素人目にはデカ過ぎて、逆にそれが高出力時に唸ったり振動する原因にもなっているような気もする。特に剥き出しのトランスなんて積んだアンプをノイズ発生や振動に対してシビアなオーディオマニアが絶賛するのは矛盾してるのではないかと思ってしまう。そういったでかいトランスはせめてシールドされていて欲しい。
振動やノイズよりも発熱の方が心配
そういうわけで、耳で聴いて変化が分かる程の振動やノイズが出ない限りあまり気にとめていない私が選んだCROWN XLS1002だからといって、適当な造りでうるさく振動するアンプというわけではない。確かに高級機と比較するとその辺りの対策をお金を掛けて徹底しているわけではなさそうだが、一般家庭で使うにあたって実用的な部分では問題がないレベル。
業務用ということもありトランスの振動や唸りやノイズよりも発熱の方が心配。XLS1002には冷却ファンが付いている。付いているということは少なくともファンレスでは対策できない程度の熱は発生するということだろう。実際の出力ワット数(アンプの負荷)によっては結構熱くなるということだろうか。この辺りは実際に使用した際に確認していくしかない。ファンの音自体は多少あっても既にプロジェクターのファンが鳴っているので大差ない。プロジェクターのファンでも映画を観る時はそれ以上に映画音の方が大きいので音に関してはよほど豪快に回らない限りほとんど気にならないだろう。
次回は、接続&初音出し。
一応、いつもの流れでAmazonリンクも貼っておくが購入を検討するなら、正直今回はAmazonでの購入はお勧めしない。Amazonに出品している同機はどれも市場標準価格より高く、海外製品だけに保証に関しても不確か。私は今回、業務用音響機器を取り扱っている「サウンドハウス」で購入した(会員登録が必要)。サウンドハウス独自の3年保証も自動的に付くので、同機を購入ならそちらでの購入をお勧めする。リンクも貼っておくのでご興味があればどうぞ。
サウンドハウス/https://www.soundhouse.co.jp/
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