先週、入手したPA用パワーアンプCROWN XLS1002を接続するために、既存のA/Vアンプmarantz SR8012のプリアウト出力端子からXLS1002の入力端子に接続し、さらにA/Vアンプからフロント2ch分のスピーカーケーブルを抜いてXLS1002に接続していく。
と、その前に…。2020年10月に発生した旭化成エレクトロニクス株式会社の半導体製造工場の火災事故により、DENONとmarantzのA/Vアンプなどの機器に搭載されていたDACチップがしばらく供給されなくなっていることに関して、DENONとmarantzは当面の間、半導体に代替品を使用するとしており…
変更に際しましては、代替部品の選定、周辺回路およびソフトウェアの再設計、サウンドマスターによる音質評価とサウンドチューニングを新製品の開発時と同様のプロセスで実施致しました。その結果、D/Aコンバーター変更以前の製品と同等の音質、性能、機能を維持したまま、引き続き従来と変わらぬ品質の製品をお届けすることが可能になりました。
と、「音質は変わらない」とアナウンスしているが、音の心臓部でもあるDACが変わるのは、オーディオマニアやオーディオ機器が好きな人にとっては自身がブラインドテストで聴き分けできないくらい本当に音質が変わらなくても、今までと違うと言うだけでネガティブな反応をしがちだ。そういう意味でこの影響は大きいと個人的にはみているので、製造工場の1日も早い復旧を切に願う。
Contents
CROWN XLS1002のバインディングポストをバナナプラグ対応にする加工
各ケーブルの接続の前にやらなければならないことがある。XLS1002のバインディングポスト(スピーカー出力端子)はそのままではバナナプラグに対応できないため、若干加工が必要になっている。バインディングポストにバナナプラグを挿せるようにするため、端子の中心部分を抜き取らなければならない。
※本機において単に「スピーカー出力端子」と書くとスピコンとバインディングポストの2系統存在するため端子の正式名称で記載。
やり方はYoutubeにアップされていたのだがCROWNオフィシャルではなく個人の方だったので、こちらでは転載を控える。代わりに動画ではないがそれほど難しい加工ではないので「家キネマ。」で改めて紹介しておく。
まず、用意する物が長めの木ネジ(+)とドライバー(+)。多分(ー)でもできるが、(+)の方がやりやすいと思う。
用意した木ネジをバインディングポストの中心に空いている小さな穴に挿し込み少しねじ込む。
力一杯全部ねじ込む必要はなく、先端から数ミリ入れば十分。加減としては木ネジを手で軽くねじ込んでドライバーに切り替え、更に1〜2回転程ねじ込む程度で充分。ドライバーを使わずとも手だけでねじ込み、木ネジだけが簡単に抜けない様ならそれでも構わない。
その後、飛び出している木ネジを持って(指をケガしないように注意)、固めのRCA端子を引き抜く位に多少力を入れて引き抜くとバインディングポストの中心部分にある芯が抜ける。
もしネジだけが抜けるようなら、先ほどよりもう少し木ネジを奥までねじ込もう。これを2ch、合計4つの端子分行う。
audio-technica ソルダーレスバナナプラグ AT6302
CROWN XLS1002で初音出し…のはずが
バナナプラグを挿すことができるようになったXLS1002のバインディングポストにスピーカーケーブルを接続。これで電源プラグをコンセントに挿して準備完了。まずはプレーヤーOPPO UDP-203から電源投入し、プリアンプ代わりになるA/VアンプSR8012の電源投入。SR8012のリレースイッチが「カチッ」となったら、万全を期すために一旦A/Vアンプのボリュームを-80dB(最小)に、CROWN XLS1002のアッテネーターも最小にダイヤルを合わせる。そして、いよいよCROWN XLS1002の電源を投入する…ワクワクと同時に「怖え〜。絶対大丈夫なはずだけど、何らかの原因でJBL S3100がブッ飛んだら泣くなぁ」と不安に。映画「バックトゥー・ザ・フューチャー」オープニングの爆音ギターアンプのシーンが頭をよぎる。
電源ON!・・・・・。よし!無音!ポップノイズも無し! 無音状態のはずなのに「ブ〜〜〜〜〜」とか、「ボ〜〜〜〜」とか、「サーーーーーー」とかがスピーカーから聞こえたら嫌だなと思ったが何も聞こえない。ひとまずは第一関門突破だ! 本体に電源を入れてから本機の直ぐ近くで耳を澄ましてみたが、ファンノイズは聞こえない。本体から唸りのような音もないようなので一安心。
電源ボタンを押すと割と直ぐに通電する。電源ボタンを押してから一定時間を置いてリレースイッチが入るような(オンディレイスイッチというらしい)仕様にはなっていないようなので、ここは気になる点。他のシリーズなら付いているものもある。電源投入の順番さえ守れば必要ないが、ポップノイズなどによるスピーカー破損の事故防止のためにも出来ればあったほうがいい。
SR8012のプリアウト出力端子(RCA)からの信号なのでXLS1002の入力感度を[.775V-HIGH]に設定。フロントスピーカー2ch分のパワーアンプなので、分かり易いように音出しテストはFire TV CubeからAmazonミュージックHD(お試し加入中)のハイレゾ音源を使用。
「初音出しはやはりスター・ウォーズ映画が良かったかなぁ…」と思いながらも、私がビビり過ぎていきなり映画でのテストを避けてしまった。ここは静か目のJAZZ音楽、ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビイ」より「Porgy (I Loves You Porgy) – Outtake (Outtake)」でテストした。
JAZZを聴く人なら説明不要のビル・エヴァンスの超有名アルバム。周りの話声や食器のガチャガチャした音も入っているライブ感満載のアルバム。ビル・エヴァンスの繊細でチカラ強いピアノの旋律に思わず聴き入ってしまう。中でも「Porgy (I Loves You Porgy) – Outtake」は静かな曲なので周辺の音がよく聞こえる。
XLS1002のアッテネーターのダイヤルは最小のまま。A/Vアンプのボリュームを徐々に上げていく…。入力があれば、XLS1002のインジケーターが光るはず。
・・・・・・。
…え!?何故?
もう少し、入力ボリュームが低すぎるのか、もう少しSR8012のボリューム上げてみるか…。
・・・・・・。
…マジか!?XLS1002の入力レベルを示すインジケーターも反応していない…。
どういうこと? あ…。
A/Vアンプのプリアウト出力に挿したつもりが、マルチチャンネルINのRCA端子にプラグを挿していた…。入力と出力の間違いなんて、なんという初歩的なミス。直ぐ隣にあって、A/Vアンプの背面作業時におうちゃくして少し無理な体勢で挿したら、挿すところ間違えた。アッッブネ!一旦全電源OFF。
改めて、CROWN XLS1002で初音出し(音楽)
正しく挿し直し、気を取り直して先ほどと同じ手順でA/Vアンプのボリュームを徐々に上げていく。無事にXLS1002インジケーターが音量とリズムに合わせて点滅し出した。この時点ではまだXLS1002のアッテネーターを最小にしたままの状態なのでスピーカーから音は出ていない。
A/Vアンプのボリュームを普段日中に音楽を聴くボリューム(-30dB)くらいまで上げて、今度はXLS1002のアッテネーターを開放していく。アッテネーターのダイヤルはスルスルと無段階に動くタイプではなくクリック感がある。
無事にフロントスピーカーのJBL S3100から極小さく音が鳴り出した。ひと先ず無事に音が出ただけで、ごく当たり前の結果に、「おぉ!」と少し感動してしまった。大雑把ながら今まで聴いていた音量に近いレベルまで上げていくと…「うぁ、メッチャ気持ちいい音!」。他のスピーカーとのバランスがあるのでその辺りも含めた音量調整は今後やっていくことにするが、とにかく今まで聴いていた音よりもいい音(好みに近い音)で音楽が流れていく。
アンプのダンピングファクターが高いおかげだろうか、JBL S3100の38cmウーファーから出てくる低音が今までより深く随分と締まって聴こえる。非常にチカラ強い低音だが信号通りにピタッと、止まるところは止まる感じで音楽の低域がスッキリとした印象になり、ボリュームをかなり上げても全くうるさく感じないが、ボリュームを上げ過ぎると特定の周波数帯の低音が大きくボワついて聞こえてくるのが気になる。これは多分「定在波」の関係でアンプやスピーカーの問題ではなく、部屋自体のチューニングをしないと解消できないが、ここまで大きくして聴くことはないのでそのまま放置。
ダンピングファクターの高いアンプでJBL S3100本来の音?
XLS1002のダンピングファクターが200以上となっており、使用しているCANAREのスピーカーケーブルが1.3sq(スケア)程で5mだからJBL S3100のインピーダンス6Ωで計算すると実際のダンピングファクター(DF値)は39程になるので十分に低音の制動が効いている(…はず。合ってるのか不安)。今より細いスピーカーケーブルだとダンピングファクターはもっと下がることになる。
JBL S3100のスピーカーユニットの制動が以前より効くようになったことにより、この低音の締まり感は音楽を聴くには非常にいい感じになる。映画視聴がメインのため気になるほどではなかったものの音楽においては若干太めに感じた低域が全帯域を通してフラットになった印象。ロックやポップスなど他の音楽も聴いてみたが、低音の余韻みたいな伸びがあるものは今まで音楽のソース側にあると思っていたが違った…。イメージとしては「ドンッ!」という小さい「ン」が入る感じだったバスドラの音が「ドッ!」という感じで「ン」が消えたイメージ。
750Hz以上のホーンから流れる音に変化があるのかよく分からないが、明らかにウーファーの音の出方は変わっている。これがJBL S3100本来の音に近いのかもしれない。これは「家キネマ。」史上最高音質を更新している。めちゃくちゃ気持ちいい。いや…プラシーボか?プラシーボ効果ではないことを祈りたいが、今は心地いいからプラシーボでもいいや。
低音が深く締まったとても心地の良い音で音楽が聴ける。単純に音声信号を増幅させるだけが本来の目的であると思っていたパワーアンプでこれだけ変化することに少々ビックリした。アンプはチャンネル数はもちろん、高い出力パワーや高級なパーツを使うなどで価格が変わるだけだと思っていたが、その中でもダンピングファクターは明らかに音質(特に低音)に密接に関係するものなのだと痛感した。
これを聴くとSR8012内蔵のパワーアンプを使っていた時のダンピングファクターって一体どれくらいだったのだろう。説明書の仕様に明記されていないので計算できない。特に悪いと思っていなかったが、今これと聴き比べると低音が若干ダブついていたのだと判る。良い言い方をすれば低音に伸びがあり豊かに聴こえていたと言える(正に「物は言いよう」だな)。
しかし、良いのか悪いのか逆にこれまでと比べて低音が若干おとなしく(痩せて)感じるようにもなった。映画視聴ではなんか物足りない感じがしそうだ。映画音響ではサブウーファーとのクロスオーバーを下げつつ低域の周波数特性を少しもち上げるか、何か調整が必要かもしれない。
CROWN XLS1002いいぞ!映画音響が格段にレベルアップ!
自分にとって違和感のない心地よいバランスになるまでは調整に時間が必要だが、ひと先ずそのまま映画をテスト視聴。テストには「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」ドルビーアトモス音声を用いた。決してリファレンス的な映画音響ソフトではないが、新しくしたシステムには必ず最初に「スターウォーズ」シリーズのいずれかを視聴するのが私のこだわり。
オープンングに流れるテーマ曲の音の違いを期待していたら、それ以前にトップメニュー表示の時点で「えっ!?ホンマに?フロントスピーカーが以前に比べて格段に音質アップしている!」と感じた。流石に何度も観て聴いている音なので、違いが直ぐに判る。これまで、良いと思っていたのは何だったのか。私の耳もいい加減なものやなぁと思う。もういっその事センタースピーカー外して10.1chのファントム再生をデフォルトにしようか。
映画本編に入ると一層違いが表れる。フロントから出てくる低音にサブウーファーが加わると深い重低音と締まった低音が瞬間的にも腹にズンと響き、産毛をビリッと振るわせる。低域に余分な付帯音が付かず、これまで以上にクリアに聴こえる。カイロ・レンのライトセーバーの不安定な唸り音がバリバリと響く。「これ!映画館で聴いた音やん!」それくらいに感じる(映画館の音は出るはずもないし、半分以上はプラシーボ効果だと思うぞ)。
ただし、今は単純にパワーアンプを追加して切り替え、音量レベルを耳で適当に合わせただけの状態なのでフロントスピーカーと他のスピーカーの音量バランス(サラウンドの繋がり)が上手くいっていない気がする。改めて、自動音場補正の「Audyssey MultEQ® XT32」を実行しなければならないが、そこから自分で納得がいくまで手動で追い込むので時間が掛かる(ゴールデンウィーク突入までには終わらせたい)。うるさく感じないのでつい今までよりボリュームを上げてしまいがちになるので気をつけなければ。
XLS1002は単独でクロスオーバーの設定もできるのでパッシブ型のサブウーファーも問題無く接続できる。パッシブ型のサブウーファーはアンプが内蔵されていないのでスピーカーユニットのインチ当たりで計算するとアクティブ型より断然安く手に入る(置けないけど)。スピーカーユニットが30センチや40センチほどに大きなパッシブ型サブウーファーを制御するのもXLS1002なら普通に問題無く鳴らせるだろう。
CROWN XLS1002がメインアンプになる
本来の目的はSR8012のバックアップ用で普段でも使えるパワーアンプという位置付けで考えていたが、今後はこれが完全にパワーアンプとしてメインになるな。前面パネルのライトは現場ステージでの完全暗転も考慮しているので全て消灯できるのはホームシアターとしても向いている。価格的にも3万円程でこれはいいと思う。ただこのデザイン…業務用なので個人的には映画館のラックシステムに入っている機材のようも見えてなんとなく気に入っているが、人の好みによるので何とも言えない。少なくとも一般家庭向けに造られたアンプではないので部屋のインテリアを選ぶデザインだと思う。
購入を決めた際は我ながらアホかもと思ったが、逆にこれは予想外に良い選択だった。映画視聴にはサブウーファーがあるので、フロントの低音がダブつくのを懸念してフロントスピーカーのクロスオーバー値を80Hzに設定していたが、これならフロントスピーカーはもっと低く設定できそうだ。JBL S3100は低域30Hzまで出せる仕様にはなっているので60〜40Hzくらいまでは下げられそうな気がする。今後、SR8012に備わっている自動音場補正を行なった後、実際に耳と簡易のRTA測定で確認しながらゴールデンウィークまでに設定を追い込んでみることにする。
自動音場補正の「Audyssey MultEQ® XT32」はとても優秀なのだが、スピーカー1台当たり8箇所地点の測定をするためサブウーファーを含めた全12台のスピーカーを測定するのは時間が掛かるので、つい腰が重くなるのだよな。
1番驚いたのは別の部屋にいた妻が「(前より)音良くなった?」って、訊いてきたことだ。「隣の部屋でも音が前よりハッキリ聞こえる様になった」とも。言わば隣の部屋から僅かに聞こえてくる音が以前よりモコモコした音ではなくなったらしい。どんな耳してんだ。
Amazonリンクも貼っておくが購入を検討するなら、正直今回はAmazonでの購入はお勧めしない。Amazonに出品している同機はどれも市場標準価格より高く、海外製品だけに保証に関しても不確か。私は今回、業務用音響機器を取り扱っている「サウンドハウス」で購入した(会員登録が必要)。サウンドハウス独自の3年保証も自動的に付くので、同機を購入ならそちらでの購入をお勧めする。リンクも貼っておくのでご興味があればどうぞ。
サウンドハウス/https://www.soundhouse.co.jp/
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