先週、自宅のネット環境でIPv6接続できるようにするためにTP-Linkの「Archer AX73」を購入したというところまで紹介した。今回は既存の「BUFFALO WSR-2533DHP」ルーターを交換して接続できなかったIPv6接続を実行してみる。
これまでIPv4でしか接続できなかったネットワーク通信でIPv6接続にしたらどれほど違いが出るのか実測検証。どちらも“ベストエフォート”型だが、同時間帯での実測速度としてどれほど差が出るのか。IPv4接続とIPv6接続の違いや、ベストエフォートに関しては前記事を参照いただきたい。
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TP-Link Archer AX73に変更前(BUFFALO WSR-2533DHP)の実測値
IPv6接続する前の実測値を改めて計測。土曜日の18時30分〜19時頃、比較的インターネットが混む(トラフィックが増える)と言われる時間帯で計測。この時間である程度の通信速度が出ていれば、他の時間帯はよほどのタイミングでない限りそれほど心配する必要はないだろうと判断した。
計測したのはiPad Pro 12.9インチ(2017年頃の第2世代)。現代のものと比べると低スペックだが、我が家では1番処理速度が速く、IPv6接続でインターネットができる機器なのでこれで計測。
まずは、Wi-Fiルーターを交換する直前に既存のBUFFALO WSR-2533DHPで同時刻帯に計測。
5回ほど計測したが、今回は概ね同等の通信速度だった。意外と通信速度が出ていることに、なぜだか少し残念な気持ちに。いっそのこともっと遅くなってくれていた方が、その差がハッキリと分かるのに。普段からこれくらい普通に出ていれば買い替える必要はなかったのだが…。ただ今回たまたまこの速度が出ているが、タイミングによっては急激に速度が落ちることがあるのは今まで体感済み。
では、新たに購入した「TP-Link Archer AX73」に交換して再度計測してみる。
Wi-Fiルーターを「TP-Link Archer AX73」に入れ替え
今回、商品の本体レビューや設定方法についてここでは割愛する。スピーカーや映像再生機器関連のことならまだしも、インターネット関連のこういった機器は専門のサイトやもっと詳しく書かれたブログがあるのでそちらを参照いただいたほうが宜しいかと。
TP-Link Archer AX73の購入にあたり、世の中では新種のウィルスも発見されているコロナ禍で、現在(2021年5月23日)私が住む大阪は今もなお緊急事態宣言中なので仕事以外は外出を自粛している。そのため、家電量販店で現物を見ずにネットで購入したので、到着した時その大きさにちょっと失敗したかと思った。思っていたより本体が大きい。
壁掛けにせず平置きする場合は、配線する事も考えるとスペース的にちょうどA4用紙を置くくらいのスペースがいる。我が家ではたまたま棚が空いていたので置く場所は確保できたが、設置スペースには少し注意が必要だ。
背面にはWANポートのほか、LANポートが4つあるので有線でもPCなど4台までは接続できる。USB3.0コネクタもついているので外付けのHDDを接続すれば簡易のNASとしても使うことができる。別途高額なNASを購入する必要がなく、お家クラウドが簡単に構築できるのは助かる。ただし、あくまでも簡易NASなので、メーカー側も紹介はしているが実際の利用についてはメーカーサポート対象外となっている。
設置、配線を済ませ、設定後にGoogleのIPv6接続テスト(https://ipv6test.google.com/)で、IPv6接続できているか確認する。
無事にIPv6接続できている様子なので早速通信スピード測定を実行した。
ちょ!、ちょ、マジか!……え?…マジか!ぅえ!?マジで!?
はぇえー!なんだこの通信スピード。無敵やん!IPv6接続おそるべしだな。
イカツイのは見た目だけではなくて良かった。見た目通りのイカツイ速度が出た。
それと注目するべきは回線速度だけではない。確かに1秒間に送受信できるデータ量だけに目が行きがちだが、その下に小さく表示されているPING(ピン)値とジッター値にも注意が必要だ。
PING値… サーバーとの送受信の反応速度。小さいほど反応が速い。
動画配信での映像出だしが早いか遅いかはここで決まるようなもの。
ジッター値… PING値の揺らぎ。小さいほど安定して良好。
安定した反応速度でPING値が大きく変動しない。最初の映像出だしが早かったのに、シーク(早送り)したら再生までに時間がかかるなどの原因になる。
パケットロス値… 転送中のデータ損失(%)。
0%が基本だが、当たり判定があるようなネットゲーム等をしない限り、映画視聴においてはほとんど気にする必要はない。映画において多少の損失は補正される。あまりにも数値が大きいと音飛びや映像が乱れる原因になる。
私の回線はフレッツ光回線を利用したドコモ光だが、こう見るとなかなか優秀なことが分かる。NURO光などで有名になったダークファイバーを利用した回線のほうがやはりこの辺りの数値も更に安定して高品質な様だ。ネットゲームメインならダークファイバーを利用した「NURO光」か「auひかり」回線の方が間違いない。
高品質の意味が違うのに、どこかのオーディオ評論家あたりがダークファイバー回線を利用した音楽配信の方がS/N比が高く、音がクリアに聴こえて明瞭度が上がるから良いとか、粒立ちが良いとか、言い出しかねないな。映画評論家にも言ってほしいなぁ。映像がクリアとか解像度が違って見えるとか、色味が全然違うとか…言わないかなぁ…笑うのに。
IPv6接続のメリットはどの時間帯でもそれなりのスピードが出る
最初の速度計測からこれまで概ね、400〜500Mbps程で推移している。この通信スピードは流石に驚きを隠せない。しかも古いiPad Proでだ。通信速度に関しては計測する機器(PCやスマホ)の処理速度にも左右されるので、処理速度の速い機器ならさらに伸びる可能性がある。我が家では1Gbpsの光回線なので環境次第では950Mbps程まで速度が上がる可能性は秘めている。
また、速度測定サイトやアプリで計測した速度がそのまま反映されるわけではない。各閲覧するサイトに人が集中するなどサーバーの負荷にもよって遅く感じることもあるだろう。そこに関してはこれ以上ユーザー側ではどうすることもできない。少なくとも自宅からインターネット網までの通信速度はIPv6接続の場合、段違いでスピードアップしている。しかも時間帯によって大きく変動していないのが凄い。接続するサーバーの負荷だけが低速要因に繋がっている感じだ。
IPv4 over IPv6接続の恩恵も受けられる
IPv6接続に対応したNetflixやGoogleなど巨大サーバーを持つ企業サイトではほぼストレスなく閲覧できるのも嬉しいが、IPv4接続しかできないAmazonでさえも映画を視聴したりするにはほぼストレスがない。これはIPv4接続しか対応していないサイトであってもIPv6接続と同じ接続ルート(IPoE接続)できる「IPv4 over IPv6」によるものなのかもしれない。
これまでのIPv4(PPPoE)接続による網終端装置がいかにボトルネックになっていたかが実感できる。時間によっては40Mbps程まで落ちていたことがあったが、今はどの時間帯でも一定以上の速度が出て、その微塵も感じさせない。何度も言うが、接続先サーバーが混み合っていたら流石に遅く感じることはある。
Fire TVシリーズはWi-Fiに弱いのか、通信速度が上がってもスクロールやシーク(早送り)した時に引っ掛かりを感じるので結局は安定した有線接続がおすすめ。それでもIPv6接続の恩恵は十分に感じる。ホーム画面のサムネイル表示から、とくかくYoutubeでも、U-NEXTでもAmazonミュージック(お試し加入のHD)でも映像、音出しまでのスピードがスムーズ。
Chromecast with Google TVも同様に安定した速度でサクサク動くようになった。 Apple TV 4KはWi-Fiでも有線でも安定して速度が出ているのでポテンシャルを十分に発揮すことができる。このあたりは価格差が現れているのかもしれない。Apple TV 4Kはとにかく速くストレスがない(新しいリモコンも届いたし、こちらは次回レビュー予定)。
家中の全ての機器が速くなるというわけではない
いくら今回導入したWi-Fiルーター「TP-Link Archer AX73」や同等のルーターでIPv6接続により通信速度が速くなったからといってもFire TVではいくら頑張っても500Mbpsは出ない。Wi-Fi接続でも平均は下り150Mbps程だった(5GHz帯)。Apple TV 4Kでは250Mbps程。このように機器の性能でも通信速度は反映される。
今回計測に使ったiPad Proで比較的通信が混雑しないであろう早朝の時間帯(5:00AM台)でも通信速度が600Mbpsに達することはなく、速度はあまり変わらなかった。組み込まれているWi-Fiモジュールの性能ではこの速度が限界なのだろう。
処理能力の高い通信機能を持つ新型のタブレット、スマホやPCを導入したら更に通信速度は上がると思うが今はそれが確認できない。と、いうかもう十分なスピードなのでこれ以上は大きなファイルを一括ダウンロードする以外は手に余る。
今回叩き出した、下り500Mbpsという通信スピードは、1秒間で500メガ・ビットのデータをダウンロードできるということだ。ビットはバイト(Byte)変換すると[1バイト=8ビット]なので、1秒間に62.5メガ・バイトのデータがダウンロードできていることになる。これはCD音源1曲を約50メガ・バイトとすると1秒以内にダウンロードが完了することになるのだ。このスピードが当たり前の時代になったらでいいので、頼む!3D映画配信してくれ!(今でも十分できると思うんだけどなぁ)
あくまでも「通信速度が出せる環境ならでは」を忘れずに
「TP-Link Archer AX73」や同等のルーターを導入すれば誰しもIPv6接続になり、通信スピードが上がるわけではない。前回のブログでも述べているが、まずは現在加入しているプロバイダーがIPv6接続に対応しているかどうか。さらに、利用する通信機器(スマホやPCなど)がIPv6接続できるかどうか。
ちなみに我が家の古いPCは100BASE-TのLANポート(有線コネクタ)なので、いくら光回線(1Gbps)で有線接続しても97Mbps程度が限界となる。Fire TV Cubeも有線では95Mbps程なのでおそらくFire TV用のイーサーネットアダプタも100BASE-Tなのだろう。私は通信速度が常に一定で安定するので敢えて利用している。
最後に有線接続に関して通信速度を上げるための注意事項がある。
まず、LAN用のスイッチング・ハブを利用している場合は必ず、1000BASE-T[1000Mbps]や2.5GBASE-T[2500Mbps]など「ギガビット対応」以上のものを利用すること。ここがボトルネックになり、ハブに接続された機器は全て対応速度以下が限界速度となる。
あと、意外と見落とされがちなのが利用するLANケーブルのカテゴリーに注意が必要だということ。100Mbpsを超える通信速度が有線で必要な場合は、機器に加えてLANケーブルのカテゴリー(簡単にいうと規格)は「5e」以上のケーブルを使用すること。ただのカテゴリー「5」やそれ以下の数字だと100Mbpsが限界となる。カテゴリー「6A」が理想だが価格次第というところ。
また、初めからご自身でネット環境を構築した人にとっては特に難しくないことだが、賃貸マンションなど「光回線あり」と契約時にあっても実はVDSL方式であったり、予めLANでネット回線が部屋まで届いている場合は、分岐させているハブや、部屋に引き込まれているLANケーブルはカテゴリーが何か分からないことが多い。その場合はオーナーに確認する必要があるが、ケーブルのカテゴリーなどオーナーさえ分からない(知識もないので気にすらしていない)場合も多い。
現在利用しているケーブルが目視確認できる場合はケーブルに「CAT.5E」や「CAT.6」などと印字されているか確認しておこう。無印の場合はLANケーブルが8極8芯か否かで判断できるが、分からない場合は使わないほうが無難。これは高級スピーカーケーブルなどとは違い明確に速度(数字)として現れる。「カテゴリーは分からないけど、高級ケーブルに変えたら何か速くなった気がする」とか、そこにプラシーボ効果はないぞ!
こんばんは。じっくり読ませていただきました。お忙しい中ありがとうございます!
ご案内のGoogle IPv6 TESTでは「IPv6のようです」でした。最近はスマホばかりでめっきりPCを開かなくなりましたが以前はBNRスピードテストで良くチェックしていました(笑
でもネットフリックスの接続速度が一番の目安ですかねやっぱり。ここで取れてれば配信動画はスムースに見れますので。最近は何故か混み合う時間帯でも安定して80mbps以上が出ています。もしやCAT7に変えた事が功を奏したのか・・・、なわけないか(笑
いずれにしても家シネマさん宅は爆速が出るようになりルーターを変えた甲斐があって何よりです!!
こんにちは。ルーター変えるだけでその速度はとは驚きですね。我が家はNTTフレッツテレビの光回線ですがIPv6なのかIPv4なのか良くわかりません。どこ見ればいいのやら・・・。レグザのネットワーク環境画面開くとIPv6とか4とか出てた気が・・・、確認してみます。
回線速度が遅い場合のネットワーク環境の確認は骨が折れますよね。私もスマートテレビに変えてから初めて知った回線速度ですが、設置当初に比べルーター、LANハブ、LANケーブル、挙句に格安プロバイダからOCNへ・・・現在は一新しております。以前速度が遅くて困っていた時に、LANハブを1000BASE-Tのものに変えたら、それだけで4倍近い速度が出るようになり驚いた記憶があります。どこかがボトルネックになってると、いくら関連機器を新しくしてもダメですよね。
今はスマホの計測では100Mbps出ないのに、ネトフリの速度計測は常時90~100Mです(笑 ウチは無線が遅いようですが、肝心のネット配信(4kHDR)がスムースに見れてれば良しとします(笑
最近LANケーブルをCAT7のものに変えたのですがどうやら完全な無駄使いでした(笑 ケーブルはCAT6aで十分ですね・・・戻そうかな。
平日ですが、たまたま時間が取れたので返信します(笑)。
IPv6接続でここまで速くなるとは、正直ビックリしました。自宅はWi-Fiを飛ばしているのでスマホやタブレットは接続するサイト(サーバー)にもよりますが、メチャクチャ快適になりました。これ以上はネットゲームや、数百バイトに及ぶような大容量のファイルをダウンロードするでもしない限り、いらねって感じです。
以下、頂いたコメントに対する返信ですがちょっと長くなりそうなので、お時間のあるときにでも…暇つぶしに。
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もみじさんのネット環境がNTTのフレッツ光回線でプロバイダーがOCNなのでしたら、申し込みなしでもIPv6(IPv6 over IPv4対応)接続ができるはずです。
現時点で、自宅のネット環境がIPv6接続しているかどうかを調べるには、上の本記事にも記載した「Google IPv6 TEST」サイトで確認できます。
もし、IPv4でしか対応していなかったら『お使いの接続方法をテストできませんでした。もう一度試すか。』と表示されます。
「〜でした。」の丁寧語の後に、「もう一度ためすか。」と大変フレンドリーな言葉でこちらを動揺させます。
IPv6接続には、光回線の終端装置(ONU)が「ひかり電話」など利用するためのルーターと一体型の場合はそのルーターがIPv6に対応しているかどうか。もし「ひかり電話」等を契約しておらず、ONU単体ならそれに接続しているルーターが対応しているかどうか。あとは各接続機器がIPv6接続が可能かどうかです。
ルーターと一体型のONUは、それの「型番 IPv6対応」とGoogleなどと検索すれば調査できると思います。
ルーターと一体型のONUや、ご自身で購入したルーターでしたら初期設定はIPv4(PPPoE)接続の設定になっているはずなので、ルーターの設定をIPv6(IPoE)接続に再設定する必要はあるかと思います。
配信映画に関しては確かに4K UHDがスムーズに観られればOKですし、今すぐ無理に回線スピードを速くする必要は無いと思います。
ただ、ネットの世界は日進月歩ですから映画配信に限らずデータは大きくなる可能性はあります。今後ネットの回線速度に不満が出たり、映画視聴以外の目的が出てきたときに、こういったことをボンヤリとでも知識として持っておけば、改めて自宅ネット環境の再検討をするときはスムーズにいきます。
私もスマホ(iPhone8でWi-Fi接続)の計測では100Mbps出ないことも多いです。IPv6接続であっても、これがiPhone8のWi-Fi限界速度かもしれませんし、私の場合はセキュリティソフトをスマホに入れているので、そのせいで遅いというのもあります。
あと、ブログ本文には書きませんでしたが、回線スピードを計測するサイト自体もやはりどこかのサーバーにありますので計測する場所からサーバーまでの距離や、トラフィックが増えると遅くなります(意味ねーじゃん)。
なので、本来は目安なだけです。「これが自宅のネット回線速度の全て」だと思い込んで、いろいろなサイトで速度計測するとどれが本当の回線速度かわかりにくいかも知れません。スピードテストで遅いところは、そこのサーバーが混み合っている可能性があります。なので、私は自分のネット環境のスピードとして目安にはしますが、スピードテストはそこのサーバーの回線速度を測っているようなものだと思っています。
混み合うと遅くなるだけですので、時間帯を変えたり、色々なサーバーのスピードテストを試して、本来最速ではどれくらい出るのかだけを目安とすれば、あとは「今見ているサイトのサーバーが混み合っているんだな」とか、IPv4接続なら網終端装置でも遅くなるので「皆が今一斉にネットワークに繋がっているんだな」とかが分かるくらいで、分かったところで、それ以上どうしようも無いというのがオチです(笑)。
IPv6接続の場合は、ほぼ相手先のサーバーの速度と自宅の機器を含めたネット環境だけで速さが決まる感じです。
カテゴリー7のLANケーブルについては、現在問題無く使えているのでしたらそのままご利用になっていても問題無いかと思います。他の下位ケーブルと少し規格が違うようですので、新設するときに「カテゴリー7だから速いだろう」というだけで購入すると使えない場合もあり得るといったところです。確かに回線速度を考えると無駄かもしれませんが、使えているのならわざわざカテゴリー6Aに戻す必要はないかと。