ここ最近の激務の中、合間を見てEPSON EH-TW6600からBenQ HT3550にアナモフィックレンズを付け替えてみた。機種が変わっても、簡単に付け替えられるよう、こういうときのために柔軟性の高いアーム型のレンズ固定器具にしておいたのだ。まさかこんなに早く付け替えることになるとは想像していなかったが…。さて、BenQ HT3550によるDMD(DLP)チップを使った4K UHDシネスコ上映はいかに。
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HT3550では映像が思った以上にケラられ、おもわぬ苦戦を強いられる
アナモフィックレンズを使うとピントがシビアになるのでピント調整は時間がかかることを予測していたが、まさかの映像がケラれる(全ての映像がキチンと表示されずにレンズ自体によって映像に影ができてしまう)事態が起こるとは予想していなかった。HT3550のレンズは決して大きなモノ…むしろ小さいくらいなので、全然問題無くアナモフィックレンズを通して投影できると思っていたのだが、投影距離2.5mで100インチを実現する短焦点の部類の機種なので思っていた以上にプロジェクターのレンズ面から光が広角に広がっているらしく、レンズをほぼ本体にくっつける状態でも僅かなズレで映像がケラれてしまう。しかも、HT3550はレンズ面が本体前面パネルより内側に後退していることががさらに装着を難しくしている。
HT3550には打ち込み角があるので、ただレンズに合わせて真正面にアナモフィックレンズを装着しても結果的に正しく表示されず、これまた映像上部がケラれて影がでてしまう。ピントよりもこれほど位置合わせに苦戦するとは思わなかったが、若干だけレンズを打ち込み角に合わせるように、上方にアナモフィックレンズを傾けるのだが、その際にレンズを傾け過ぎるとピンクッションの歪みが大きくなるので傾けるのはほんのごく僅かに留めることに注意しつつ、上部のケラレを解消した。我ながら何という柔軟性のあるアーム型の固定器具を作ったのだろう、と、こんなモノには誰も褒めてくれないので自画自賛。
HT3550の短焦点が仇となり、我が家においての有効投影面積をオーバー
これが1番惜しいところ。約2.5メートルで100インチを実現することをウリにしているHT3550は、逆に言えばそのまま本体を2.5メートル以上後方に持って行けばいくほど画面サイズが100インチ以上にどんどん大きくなってしまう。結果的に我が家の視聴環境においては反って投影可能な壁の有効面積(シネスコサイズで約120インチ)をオーバーしてしまい、本体をもっと投影面に近づけなければ画面が収まらず、実現しようとすると現在私が視聴している位置ほどになる。これは厳しい。
現在、以前のYAMAHAのA/Vアンプで活躍していた、プレゼンススピーカーがフロント・ハイの位置に今も残っており、トップスピーカーの位置ではないにしろ、ドルビー・アトモス再生でも一応機能している。今回のアナモフィックレンズの設置により若干拡大率が上がり、シネスコサイズ投影では、そのスピーカーに完全に映像が被ってしまった。
以前のEPSON EH-TW6600の時は拡大率を落として画角を狭くし、このスピーカーを避けるように投影できていたのだが、HT3550ではズーム率が1.3倍と範囲が狭く、今以上画面が小さく出来ない。ドルビー・アトモス環境を実現すればこのスピーカは必要無くなるが、それまでは映像が被ったままの状態。気にはなるが、画面の両角だけなので中央辺りを観ている映画では意外とそれほど気にならない。しかし、1枚の画としてやはりスッキリしない。う〜む…。ドルビー・アトモス実現が急務になってきたな。
アナモフィックレンズを加えることで色収差が顕著に
テストパターンを表示し、歪みをチェックすると元々僅かに色収差が発生していたHT3550のレンズに、さらにアナモフィックレンズ自体の色収差が加わり、投影面両端の収差がさらに顕著になった。もちろん映像を流せばそれらの収差は気にならないが、こういうテストパターンなどの静止画では若干気になるくらいまで発生する。
色収差は気になるが、どうしようも無い。HT3550のさらに上位機種であるHT5550なら収差がもう少しマシなのかもしれないが、同等のレンズ性能と構成なら恐らく結果は同じだろう。ドット・バイ・ドットで表示すれば気になるが、普段映画を見てる時は気にならない程度なのでOKとしておこう。
アナモフィックレンズで4K UHDによるシネスコ投影
色々と気になる点が発生しているが見て見ぬフリをして…と、ここで改めて、アナモフィックレンズという特殊なレンズを使ったシネスコ投影の魅力をまた語ってしまうのだが…、通常はプロジェクターにFull HDや4K UHDの表示性能があっても、シネスコ(シネマスコープサイズ=映像ソフトではレターボックス表示になる)の映画では結局の所、上下の黒帯によってFull HDや4K UHDのフルピクセルを使っていないということは、このブログでこれまでも何度か言ってきた通り。それをプロジェクターのLCDやLCOS、またはDMDなどの映像チップ100%使用したフルピクセルを使って4K UHDを実現するのが、Vストレッチ機能を使いアナモフィックレンズを通した映像。その映像密度は想像以上に高い…と、言ってもそれが分かるのは私の様に普段から時間さえあれば自宅のプロジェクターで映画を観ている人に限られるかもしれない。「オレの目は違いが分かる」と決して自慢をしている意味では無く、普段あまりプロジェクターの映像を目にしていない人にとっては「何が違うのか分からない」と言われることは間違いなく、それくらいイメージ的には変わらないのかもしれない。しかし、実際に近くでドットピッチを見れば違いがあるのは明らかで、仮にノーマル状態と横並びで比較できれば誰でも分かる程違いはハッキリする。詳しくは下の関連記事で。
HT3550にアナモフィックレンズを装着してテスト上映
そしていよいよ、アナモフィックレンズを通した4K UHDのシネスコ映画のテスト上映。今回は…いや、今回も「スターウォーズ/最後のジェダイ」(4K UHD版)で。テスト投影で同じシーンを見れば自分でも比較がしやすいという理由もある。
おぉ〜、さすが、4K UHDでフルピクセル表示されたシネスコ映像は濃厚、濃密だ。今まで4K UHDのノーマルレンズ状態のシネスコ映像(有効画素数:6,220,800画素)でもFull HDと比較すればフルサイズ(2,073,600画素)でもピクセル密度が3倍ほど違うので圧倒的にきれいだったが、4K UHDにアナモフィックレンズを使ったシネスコ投影はFull HDのノーマル状態のシネスコ映像とは、その差5倍以上の映像密度の差を生み出す。そりゃ全然違って見えるはずだ。
しかも、シネスコでもプロジェクターの映像チップを100%使用するので、単純に拡大したノーマルのシネスコ投影時と比較すれば、上下の黒帯で取られていた25%分の明るさが増すというオマケ付き。正に良いことづくしなのだ。
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HT3550にアナモフィックレンズを使用することは無理ではないが位置合わせに苦労する
気になる点もあり、欲を言えばまだまだ至らない所はあるが、映像としては一先ずは満足できるものが得られたことに一安心。正直、最初は「ひょっとしたら、HT3550ではアナモフィックレンズを使えないかも…」と、使用することを断念しようかと思ったほど正しく表示させるのに苦労を強いられた。そもそもBenQ HT3550が専門性の高いプロジェクターではなく、どちらかというとリビングにポン置きして手軽に映画を大画面で観るなどカジュアルな部類のプロジェクターなので、アナモフィックレンズを使用するなど、拡張性を想定した造りになっていない。そういったニーズに応えさせるには本来、同じBenQ社製ならHT8060やHT9050など最初からアナモフィックレンズの装着を想定した(私が使っているSLR Magic Anamorphotは本来プロジェクター用ではないので想定されていない)造りになっている上位機種を導入するべきなのだ。
目指すは日本未発売のBenQ KL990のさらに後継機。KL990がRec.709に対するカバー率が92%なのでハイエンドの後継機がこのままのはずはなく、必ずRec.709カバー率は100%にもってくるはず。さらにはDCI-P3でも95%以上を期待したい。やはりDLPプロジェクターとしての映像と併せてHT3550の色再現性(DCI-P3カバー率95%、Rec.709カバー率100%)で映画を観ると今更後退はできない。BenQさん、KL990の後継機を是非日本で販売してください!自ら進んで地獄(ローン)に落ちます。
〈BenQホームページ(日本サイト)〉 http://www.benq.co.jp/
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