「電源を変えたら音質が劇的に向上した!」という話しをよく聞く。WEB上でもオーディオ系ではよく目にする。アナログ時代ならまだしも、今時のデジタル時代には、にわかに信じ難いのだが本当だろうか。うーむ、なかなかの眉唾モノだ。
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パワーアンプの電源をまとめて管理したい
話は少し遡るが、先月に我が家の音響設備でメインになっているA/Vアンプ、マランツSR8012のプリ出力を使い実際にスピーカーを駆動させるパワーアンプ部を外部アンプ(CROWN XLS1002)へ送るようセパレートにした。
最終的に外部パワーアンプにしたのはフロントスピーカーとサラウンドスピーカーを2台の外部パワーアンプで駆動するようにセッティング。その効果はてきめんに音質に表れ、低音の締まりと音の明瞭度が上がり、それこそ“激変”したので我が家の映画の音響は明らかに良くなった。もちろん、映画だけではなく音楽のリスニングにおいても同様に音質向上している。メッチャ気持ちいい。
しかし、パワーアンプCROWN XLS1002はPA用(平たく言えば業務用)ということもあり、一般家庭用では当たり前に備わっているリモコンはなく、起動には本体の電源ボタンを押し込まなければならない。マランツSR8012やプレーヤーとなっているOPPO UDP-203には当然のごとくリモコンがついている。いつもの視聴位置となっているソファに腰掛け、リモコンをもってプレーヤーとA/Vアンプはそれぞれのリモコンで電源が入るが、パワーアンプだけは腕を伸ばして本体の電源ボタンを2台分押さなければならない。
視聴位置からアンプまでの距離は遠くないのでそれほど面倒でもないのだが、せめて電源をまとめて1つの電源ボタンで2台分を立ち上げたいし、かっこよくまとめたい。そもそも今の電源タップも特に雷サージの付いた電源タップでもない上、かなりのタコ足配線になっているのも気になっていた。
クリーン電源を供給するTASCAM AV-P250
そこで今回、音が劇的に向上すると言われている電源周りのアップグレード。コンセントからのノイズを排除し、クリーンな電源を接続機器に送ることができるパワーディストリビューターTASCAMのAV-P250を導入してみた。私はクリーン電源で音質向上を主な目的としての導入ではなく、一般的なOAタップでタコ足配線だった電源周りをかっこよくまとめたいだけなのだが、もしもこれでさらに音質改善になるなら尚嬉しい。
本体は前面に3口の非連動電源と、背面に10口の連動電源が備わっている。全口3ピン仕様。
TASCAM AV-P250には15Aのサーキットブレーカーが備わっているので、一度に1500W以上使用するとブレーカーが落ちて電源が自動で切れるようになっているのは安心。ボタンひとつで簡単に復旧もできる。
極性チェッカーが付いており、2口コンセントのアース側(コールド)とホット側が判断できるようになっているので、簡単に正しい極性でコンセントを使うことができる。
どっちに極性を合わせても光る場合は、チェッカーに触れた指以外に本体に触れていないか確認しよう。初め、親指で触れた際に中指や人差し指が本体を掴むように触れていたのでどちらの極性でも光り、初期不良かと思ったら原因は私自身だった。この機能は本体の電源コンセントのみ対応するので、それぞれの機器から本機にコンセントを挿す場合は機能しないが、3ピンの場合はおのずと向きは決まるので必要ない。コンセントプラグが2ピンの場合は本機の[N]マークのある方にアース側を合わせて差し込むと極性が合うようになっている。
本体から直出しの電源ケーブル(3メートル)でプラグは3ピンだが、2ピン変換コネクターが付属する。正しい極性、ノイズ除去、さらに電源タップなのに3.5Kgと非常に重いこのパワーディストリビューター。音質向上になかなか期待ができるではないか。
どれが何の電源か見失う。まずは電源の整理から
アンプを設置しているラックにセットし、音質に影響しそうな主要電源は必要に応じて全てこのAV-P250に集約した。結構電源周りの配線の方がややこしいことになっていることに今更気づいた。特に何も考えずにコンセントから電源を取り、OAタップにタコ足配線をしていたので、どの機器がどの電源タップへ繋がっていて、どの電源プラグか分からなくなっていた。
アナログレコードや、Apple TV 4K、Fire TV cube、スプリッターなど、中にはACアダプターが付いたものまで存在する。「これは〜どの機器の電源だ」と辿りに辿って、全ての機器のコンセントを辿るだけで思わぬ時間が掛かった。
ただ待機電力を使っているだけの機器は連動コンセントでいいが、Fire TV cubeなどは常に電源が入った状態で待機しなければ、声掛けで反応しなくなるので、連動、非連動の仕分け作業から。プレーヤーのOPPO UDP-203もいきなり電源を落とせない。リモコンや本体の電源ボタンでオフにすると、内部で終了処理を行って数秒後に本体電源が落とされるようになっている。いきなりコンセントから電源ケーブルを引っこ抜くような電源の切り方ができない。そういった機器も非連動コンセント側だ。んー…こう考えると最近の機器はいきなり電源を落とせる機器は意外と少ない。
仕分け&電源ケーブルの配線を終わらせて、当初の目的であるパワーアンプCROWN XLS1002の電源を1つにまとめることができた。さて音質はどうだろう。何か変化はあるだろうか。
TASCAM AV-P250からのクリーン電源で音質向上?
うーん、分からん。良くなったのかこれ?なったような気もするし、変わらないような気もする…。デジタル音源で一部アナログ変換があるくらいで、ましてやD級アンプではほとんど音質への効果はない気がする。D級に関して補足するとデジタルの“D”という意味ではなく、アンプ回路のバイアス方法の違いを順番にA,B,C,Dと付けたのでDなだけ。
話を戻すと、多分このTASCAM AV-P250などのパワーディストリビューターはギターアンプなどに使うと顕著に違いが現れるだろう。高校時代にクラブ活動でバンド(ベース担当)をやっていた頃(その後、帰宅部)にアンプを通して聴く音が電源で変化するのは身をもって知っている。遊びでやっていたのでシビアには追及していないが、良くも悪くも電源で音が激変することは事実なのだ。だから今回、本来の目的では無いものの、やはり少しは期待していたのだが…残念。
ギターアンプなどは電源によって確かに音が変化することは知っている
アンプ(オーディオのアンプではなく、スピーカーと一体になったギターアンプやベースアンプ)は同じでも差し込むコンセントによってエフェクターほどではないが音が変わることを面白がっていた覚えがある。演奏場所は同じでも部活用のプレハブ校舎から取った電源と隣の体育館から取った電源で音が違った。どちらが良かったというと、仮設の電柱から電線を引っ張ってくるプレハブ側の方が音がデカくて良かった印象がある。当時は考えていなかったが、今思えば体育館の水銀ランプが点いていたのが影響していたのかもしれない。
その時はコンセントの極性なんて考えてなかったから適当だったはずなのに、電源を取る場所で音が違うことだけは皆が共通認識していた。
アナログ機器なら音質向上するかもしれないが現代のデジタル機器では不明
今のアンプの細かいことは分からないが、ノイズに対して様々な対策がとられて優秀なのだろう。真空管アンプを趣味としている人は電源で音が変わることを知っているはず。しかし、今時のデジタル機器(A/Vアンプなど)を使用したもので音が変わることはあったとしても、電子レンジなど極端にノイズを発生しそうな機器と同じタップでなければ耳で聴いたくらいでは分からないほど極微々たるものだと思う。今回に関してはあまり変化を感じられなかったので我が家のシステムの場合、コンセントからのノイズは元々それほど音に影響していなかったと判断するべきだろうか。
なので、現代のA/VアンプなどD級パワーアンプ類にノイズ対策としてパワーディストリビューターを使うのは全くの無駄とは言わないが費用対効果としてはかなり低い。ただ電源を1つに集約して管理できるくらいで、後はクリーン電源を使っているという精神衛生上的なことくらいだろう。逆に真空管アンプや、(エレキ)ギターの趣味などアナログ要素の強いものに使うと抜群に効果を発揮する…かもしれない。
パワーアンプCROWN XLS1002の時と同様、Amazonリンクも貼っておくが購入を検討するなら、「サウンドハウス」での購入をお勧めする。Amazonに出品している同機はどれも市場標準価格より高い。私は前回同様、業務用音響機器を取り扱っている「サウンドハウス」で購入した(会員登録が必要)。もちろん本機にもサウンドハウス独自の3年保証が付く。リンクも貼っておくのでご興味があればどうぞ。
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